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施設内に鳴り響く朝5時を示す鐘の音で今日も目を覚ます
職員全員はまだ寝ている頃だろう
この施設は僕らに家事を全部させる。鬼職員しかいない地獄の施設
朝廊下の掲示板に貼られている【家事担当割り振り表】を確認する。僕は今日洗濯物を洗って干す担当だ
『やだなぁ』
といいながら外履きを履いて外へ出た
冬の朝は寒い。そのうえ洗い物をしたせいで手が凍りそうだった
全部洗って干し終わり部屋に早く戻ろうとしていると朝霧の中に人影が見えた
誰だろうと目を凝らすがぼんやりしか分からない
『んん”〜?』
やっぱり見えない
ヒュウと冬の乾いた風が僕の背中を通り抜けていった。
『うひゃあ』
人影なんかもうどうでもいいくらい寒い
『あ〜さみさみ』
と駆け足で部屋に戻った
寝室に戻りベットに腰を下ろすとまだ寝ている奴がいることに気づいた。僕の隣は確か桐谷だ。こいつは朝にまっぽし弱い。
何度起こしても寝るばかりだ。家事をしていないことが施設員にバレたらきっと消えない痣ができるだろう
桐谷のこと苦手だし怒られろと内心思っていた自分が憎らしかった…。だけど僕は何も見なかった事にして部屋を出た
朝食後。食器洗いをしていると施設員に桐谷が呼び出された。ざわつく施設内。戸惑い汗をかいている桐谷。
涙目で施設員のところへ向かう桐谷を見て僕はなにかの罪人になった気分になり、思わず目を逸らした
昔漫画で見たことがある。
主人公が深い傷を負い、トドメをさされそうになった時に主人公のライバルが主人公を庇い死んだ話。
その話を見て僕はこのライバルのようになると誓った。
誓ったのに…
「桐谷が嫌いだから」と言う自己中心的な考えのせいできっと桐谷は一生この出来事がトラウマになるんだろう。
今僕があの話のライバルのように、主人公(桐谷)を庇ったらきっと僕に痣ができる。消えない消えない深い痣が。
そう思うとゾッとして背筋が凍った。
でも助けたい。助けたい…けど
体が動かなかった。心と体が真逆になったようだった。手が震え、心臓がバクンバクンと激しく音をたてた。
『ねえ』
びっくりし、反射的にばっと後ろを振り向いたら、施設最年長のロドくんが微笑みながら立っていた。
『ぁ…ロド…くん』
震える声で名前を呼んだら、急に
『桐谷』
と僕の目をはっきり見て言った。バレた…!バレた…!と戸惑っているとロドくんが口を開き
『桐谷んとこ行くから教えて』
と周りに聞こえない小さい声で聞いてきた
『しっ…施設員に…連れてかれました…救護室に』
と答えた瞬間。ロドくんの顔色が変わり『早く言え…!馬鹿ッ』と言いながら救護室へ向かっていった。
数分後、救護室のドアがギィと開いた。
ドアから出てきたのは泣きじゃくっている桐谷だった。そんな桐谷を見て僕はほっとした。桐谷には傷一つ無かったのだ。『よかった…』と思いながら桐谷を見つめていると目が合ってしまった。
こっちに近づいてくる。
きっと『なんで起こさなかったんだ!!』と怒鳴られるに違いない。咄嗟に言い訳を考えていたら桐谷がいつの間にか僕の目の前に立っていた。
『君…』
『な…なんだよ』
『ありがとう!!!!』
『は?』
ありがとう…?思っていた言葉と違い混乱していると。桐谷が僕に顔をグイっと近づけてきた。
『助けてくれてありがとう』
『ロドくんがね、勝手に僕の当番と交代したらしくてさ。』
『ほら今日ロドくん家事休憩の日だったでしょ?それしらずに交代したらしくてさ〜笑本当馬鹿だよね』
『それを施設員に報告してくれたんでしょ?君が』
戸惑いながらも僕は「嗚呼…まあな」と桐谷から顔を晒して返事をした
それから数十分後
みんなが勉強室で勉強をしている頃だった
俺は少しでも罪滅ぼしがしたくて、居残りで掃除をしていたら ロド君が救護したから出てきた。顔を痛そうに押さえてる…。
きっと俺のせいだ。いやきっとじゃなくて絶対。
ジッとロド君を見ていたら目が合った
『居残り掃除か?偉いな!』
さっきまで痛かったのが嘘みたいに笑顔で駆け寄ってきた。そんなロド君を見てまた胸が痛む
『いや〜…家事の当番をさぁ勝手に桐谷のと変えちゃって』
もしも僕があの時桐谷を起こしていたら…。僕の勝手な思いでロドくんは傷つかなかったのかもしれない。すぎた事だと分かっていても、これほど過去に戻りたいと思ったことはなかった。
『先に戻ってるね』
といい僕の目の前を通り過ぎていった。
その後僕も 遠く遠く離れたロド君の背中を追って戻った。
その日は、眠れなかった。
翌朝…目を覚ましたら赤く光るものがついてる車や、大勢の人が僕の目の前にいた。
『大丈夫かい?』
と手を差し伸べてくる男性。詳しく聞いてみれば、夜に施設内で推測らしいが殺人があったらしい。その後放火され、死体も見つかっていない。ただ、施設にいた子供は全員無事だったらしい。一安心し、男性の手を取り赤く光る車に入る。今から「けいさつしょ」というところに行くらしい。
同じ車に桐谷も乗ってきた。
『よっ!』
と満面の笑みだ。「やっと解放されるんだな…」と涙ぐむ桐谷に「だな〜」と軽く返事をしながら窓の外を見た。すると遠く離れたところにロド君とアイニーだったかな。無口で話したことがないからうる覚えだがその2人がひっそりと身を潜め森の中へ入っていった。
森の中に入っていった2人を心配しておりようとするが、車が走り出していた。
『ロド君が放火してたりして〜笑』
は?何言ってんだ。と言おうとしたが何か引っかかる。
もしかすると…もし…もしだけど
本当にあの2人が殺し、放火をしたのかも。
「…なわけ」
と1人で呟いて目を瞑った。