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#すのあべ
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「ん……っ、あ……」
ひやりとした無機質な質感に身震いしながら、熱を持った内側へとゆっくり沈めていく。 先端が入ってしまえば後は容易く、最大サイズだというのに、作り替えられた身体は難なくそれを飲み込んでしまった。
「あ……っ、あ……っ、ふ……っ」
ゆっくりと抜き差しを繰り返す。 粘膜を容赦なく擦り、最奥を叩くたびにビクビクと腰が跳ねた。機械の不規則な振動に翻弄され、口の端からは抑えきれない喘ぎが零れ落ちる。
「あっ、あ……っ、やべ……これ、クる……っ」
蓮の指や剛直とはまた違う、神経を逆撫でするような未知の感覚に理人は戸惑った。 恐ろしいのに止められず、気づけば両手でバイブを掴み、無我夢中で自身を突き上げていた。
「あ……っ、あぁ……っ、なんだ……これ……っ、すご、あぁ……っ!」
気持ちいい。脳を直接揺さぶられるような快感に、意識が白く弾けそうになる。 ガクガクと腰が震え、ペニスの先端からはだらしなく先走りが溢れ出した。
「んんっ、く……っ、あぁ……っ、はぁっ……!」
絶頂の兆しを感じ取り、ラストスパートをかけるようにバイブを激しくピストンさせる。
「はぁ……っ、ぁあっ、出る……っ、イくっ!」
身体の底からせり上がってくる射精感に、奥歯を食いしばり、瞳を固く閉じた。
「っ! やべ、イク……っ、んんーーっ!!」
びくん、と大きく身体を仰け反らせ、勢いよく手の中に白濁を吐き出した。 何度かに分けて放たれた熱い精液が、どろりと掌を汚していく。
「はぁ……っ、はぁ……っ」
静寂が戻った部屋で、荒くなった呼吸を整えるべく深々と空気を吸い込んだ。
「――はぁ。……馬鹿だ、俺は……」
盛大な溜息と共に呟き、体内を苛んでいた異物を引き抜く。汚れた手をタオルで無機質に拭き取ると、後には激しい後悔と、底知れない虚しさだけが残った。
結局、蓮からの連絡は途絶えたままで、気がつけば二学期が目前に迫り、テスト期間を迎えようとしていた。
時々部活で山田と顔を合わせることはあるものの、元々親しい間柄でもないため、まともな会話は交わしていない。
(アイツは今、どこで何をしていて、何を考えてるんだ……?)
気にかけてやる義理などどこにもない。そう自分に言い聞かせても、ふとした瞬間に蓮の貌が脳裏をかすめる。
「……くだらねぇ」
吐き捨てるように呟いてペンを置くと、椅子に深く座り直し、再び大きな溜息を吐いた。 あの日以降、玩具を使用した自慰の頻度は格段に増えていた。だが、所詮は道具だ。身体を一時的に宥めることはできても、欠け落ちた心までは満たされない。
強烈な絶頂のあとには、必ずといっていいほど酷い自己嫌悪が襲ってきた。 それでも、やめられそうになかった。蓮によって暴かれたこの身体は、もう以前のようには戻れないのだ。
「はぁ……」
また一つ、溜息を重ねたその時。不意に机の上の携帯電話が震えた。 期待と不安が混ざり合うまま画面を開くと、そこには「ケンジ」の文字が浮かんでいる。
(一体、こんな時間に何の用だ……?)
疑問を抱きつつ通話ボタンを押すと、いつも通りの、春の陽だまりのような明るい声が響いた。
『あ、もしもし。理人くん? ごめんね、今何してた?』
相変わらずふわふわとした空気を纏う男だ。その毒のなさは、今の理人には少しだけ救いだった。
「いや、勉強してただけだ。……別に構わない。それより、どうした?」
『うん、ちょっと相談があってさ。理人くんの都合がいい時でいいんだけど、会えないかな?』
「……電話じゃ駄目なのか?」
『なんて言うか、直接会って話したいなぁって』
電話では話せない、重要なこと――。 まさか、あの日のラブホテルでの一件がバレたのではないか。 そんな不安が黒い霧のように胸を過る。少しの沈黙の後、理人は「わかった」とだけ短く返し、電話を切った。
待ち合わせは午前十時。学校近くにあるファストフード店だった。 夏休みも終盤に差し掛かっているせいか客足はまばらで、店内のあちこちではテーブルにプリントを広げ、宿題に追われている学生の姿が見受けられる。
(宿題なんて、もっと早くに終わらせておけばいいものを……)
そんなことを考えながら店内をぐるりと見渡すと、視線に気づいたケンジが小さく片手を上げた。
「悪いな、待たせて」
「ううん。僕も今来たところだから」
そう言ってはにかむケンジを見て、理人はおや、と思った。先週会った時よりも、心なしか肩周りが逞しくなったような気がする。
出会った頃はもう少し華奢な印象だったが、いつの間にか身長も自分を追い越し、体つきもしっかりしてきたようだ。 ノースリーブから覗く腕の筋肉の付き具合を目の当たりにすると、理人は妙に落ち着かない気分になる。ユニセックスな服を好み、中性的な顔立ちをしているせいで失念しがちだが、やはり目の前の少年も紛れもない「男」なのだと思い知らされる。
「なに? 僕の顔に何かついてる?」
「いや……別に」
抱いた違和感をうまく言葉にできず、理人は口籠った。ケンジは不思議そうな顔で理人をじっと見ていたが、やがて小さく微笑むと「まあいいや」と呟いた。
「それで? 俺に相談って何だよ」
「え? ああ、それなんだけど……」
そこで言葉を区切り、ケンジは何故か言い出しにくそうに視線を泳がせた。
「……なんだよ。勿体ぶりやがって」
「蓮くんから、何か連絡……きた?」
「あ? いや……」
「そっか……」
理人の答えに、ケンジの表情が一層曇る。
「何かあったのか?」
「実は……昨日、蓮くんが家に来て。『今までのこと、ごめん』って、頭を下げられたんだ」
「……は?」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
「なんで……あいつが、頭なんか……」
「それが、僕にも分からなくて。だから、もしかしたら理人くんのところにも行ったんじゃないかって思ったんだけど……」
「家には来てねぇよ」
蓮とは、あの動物園での出来事以来、一度も会っていない。
「つか、なんで俺のところに来ると思うんだよ。そもそも、あいつに家なんて教えてねぇし」
「えっ? だって、理人くんって蓮くんと、そういう関係……でしょう?」
「っ、ゲホッ、ゴホッ!!」
予想外の直球に、飲みかけのコーラを噴き出しそうになって激しく咳き込む。なぜ、露見した。完璧に隠し通せていると思っていたのに。 動揺を悟られまいと必死に取り繕いながら、理人は何とか平静を装って口を開いた。
「な……っ、何をバカなこと……っ」
「誤魔化さなくていいよ。二人を見てたら、わかるから」
「見てたらわかるって……」
それはそれで、死ぬほど恥ずかしい。頬が急速に熱くなるのを感じ、理人は何も言えずに俯いた。
「蓮くん、本当に反省してるみたいだった。何がきっかけで謝ろうと思ったのかは分からないけど、そこに嘘や偽りはなかったって信じたい。……まあ、謝られたからって、彼から受けた心の傷が癒えるわけじゃないし、過去は変わらないんだけどね」
自嘲気味に笑い、ケンジが寂しげな瞳で窓の外へと目を向ける。 その横顔からは、いつものふわふわとした、掴みどころのない雰囲気は消え失せていた。
(いつもヘラヘラ笑ってる奴が、こんな顔をするなんて……)
得体の知れない胸のざわつきに、理人は居心地の悪さを感じる。
「理人くんも、早く解放されるといいね」
「――えっ?」
突然の言葉に驚いて聞き返すと、ケンジもまた不思議そうに目を丸くした。
「てっきり僕は……理人くんも、蓮くんの呪縛から解放されたがってるんだと思ったんだけど。違った?」
「……」
即答できなかった。 確かに、蓮のことは憎んでいる。……いや、憎んでいたはずだ。けれど、今は?
「俺は……」
自分の気持ちが、自分でも分からない。ただ、困惑の渦に飲み込まれていく。 蓮に対する憎悪は、確かにそこにある。だが、それと同じくらい強固に、身体が蓮を求めていることも否定できない事実なのだ。このドロドロとした感情の正体が何なのか、今の理人には、まだ名前を付けることができなかった。