テラーノベル
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主が寝間着のまま2階の執事の部屋のドアを叩くと、すでに戦闘態勢に入っているハウレスがドアを開けた。
「主様、これから包囲されていることを皆に伝えて戦闘に入ります。この数だと主様をお守りするのも厳しいかもしれません。ですが主様のことは絶対に守ります」
ハウレスが剣を腰に下げた剣を握りながらそう言う。
「別邸の執事達が別邸から本邸まで来られるといいんですけど…主様の力の及ぶ範囲ではありますから一応合流して戦うプランも考えておきましょう」
フェネスはこれからの戦略を考えている。
「主様は力の開放をしたらとにかく身の安全を最優先にしてくれ。怪我の手当てより主様の無事のほうが大切だからな」
ボスキは不愛想ながらも主のことを守りたいと視線で伝えてくれる。
「絶対に誰かが怪我したからって突撃してきちゃダメっすよ?」
アモンが冗談めかして緊張をほぐそうとしてくれているのが伝わってきた。
4人は主にそう言って各階の執事達に緊急事態を伝えるために走っていった。
主は恐らく今までの天使狩りよりも熾烈な戦いになるだろうと肌で感じて高鳴る鼓動を抑えながら、とりあえず靴を履いて執事達が集合し始めたエントランスに向かった。
「これから戦いが始まりますね。知能天使も居ますし、普通の天使達も今まで以上に強いと思われます。主様は力の開放の後はできるだけ少ない魔力で最低限の治療をするだけに留めてください。多少傷が痛むくらいで戦えなくなることはありませんから」
ベリアンが不安げに眉を寄せて主の手を握る。その手が震えていることを感じて主は集まってくる執事達の中に別邸の執事達が居ないことに気づく。きっと兄のように慕っているベレンが無事か分からなくて不安が強いのだろう。しかし、別邸には混血のユーハンが居る。万が一主の力の開放ができなかったとしてもユーハンの力で身体強化は可能なはずだ。主はベリアンの手を握り返して安心させるように微笑んだ。
『大丈夫。別邸にはユーハンも居るし、力の開放を広範囲でやるのは初めてだけど、理論上は可能だってルカスも言ってたから。だから勝てるって信じて戦おう?私もできることなら何でもやるよ。絶対に全員無事にこの戦いを終わらせよう!』
「ありがとうございます、主様…そうですね、きっと別邸の皆さんも必死で戦ってくれることでしょう。きっと勝てます。皆さんの力を信じて戦いましょう。誰一人欠けることなく勝利を勝ち取るのです…!」
13人がそれに頷いて、己の武器を握りしめて外に繋がるドアを開けた。
『来たれ。闇の盟友よ。我は汝を召喚する。ここに悪魔との契約により、執事達の力を解放せよ』
別邸の執事達の力の開放するために主はユーハンに教わった通りに味方の位置と人数を意識して、ひとりひとりに魔力を渡していくようなイメージで呪文を唱える。
別邸の執事達にも届くように魔力を広げると、ユーハンの気配を強く感じた。きっと別邸の執事達の為に魔力を分け与えているのだろう。ユーハンの悪魔の力は「天使を倒した分だけ能力が上がる」というものである。身体能力も魔力も天使を相手にしていればずっと上がり続けるため、別邸の執事達が負けるだなんて考えられないと思えるほど頼もしい存在が居てくれる。それだけで主は少しだけ安心した。
「くふふ…主様の魔力のおかげで体が軽いですね。これならいくらでも天使を壊せる気がします」
ラトはそう言うと屋敷の壁と窓を伝って屋根の上に登って攻撃を始めた。
「俺は遠距離から上空の天使を落とします。だから主様は俺の後ろに居てくださいね!」
フルーレは弓を構えて主を狙って下りてくる天使達を打ち落としつつ、ラトが対応できない位置に居る天使達に矢をどんどん当てていく。
「主様、応急処置はルカスと私でするから流血が止まらないとか骨が折れたとかでない限り魔力は温存してほしい。これは長丁場になるだろうからね。主様が魔力切れになってしまうと勝率はゼロに近くなる。だから自分の身を守ることと魔力を温存することだけに集中していてね」
ミヤジは主の近くに屋敷中からかき集めたであろう包帯とガーゼ、最悪の場合その代わりにできる綿の生地と鋏を用意してルカスに目配せする。
「はい、ミヤジの言う通り私達は救護班ということで怪我をした執事達の手当てを行いましょう。主様は特に酷い怪我や体力切れになった執事にだけ魔力を渡してあげてください。主様が魔力切れになったら最悪全滅してしまいますから、魔力はできる限り温存してくださいね」
『分かった。でも私だって訓練したから魔力は強くなってるし、加減も覚えてきたよ。絶対に役に立つから!守られてるだけじゃ嫌だよ!』
主がそう言うとルカスとミヤジはにっこりと微笑んだ。
「それは心強いよ」
「私たちの怪我を手当てできる人が1人増えるということなので救護と主様の安全確保に全振りできますからね」
2人は武器を構えて主を標的にして群がる天使達をばっさばっさと切っていく。
フルーレだけでは捌ききれない天使への最後の砦として2人は体力を出来るだけ温存しながら天使を消し去った。
「ふぅん…あの主は救護に回っているんだね。直接的な攻撃手段もないみたいだし、さっさと消してしまおうよ」
「だが守っている3人が厄介だし、屋根の上から高所の天使達を相手にしている執事のせいで上から狙うこともできないぞ?」
「それなら私達が直々に行くしかないかな?3対3で最初に勝った奴が主を消す。それでいいんじゃない?」
「そうするか。1人は弓、あとの2人は刀と大鎌…面倒そうだな」
「でも主さえ消してしまえばこちらの勝利は揺るがないものになる。弓使いを最初に消せば遠距離の天使も消されることもない。行くぞ」
知能天使3人がフルーレの放つ矢を避けつつ高速で主のほうに飛んでくる。フルーレはもう弓で狙える距離でないと判断してレイピアを抜いて構える。
がきん!と硬いもの同士がぶつかり合う音が響いてフルーレは力で押し返せないと受け流し、ミヤジとルカスは主を守らんと攻撃を受け止めていた。
「主様!別邸に立て籠もるんだ!」
「ユーハン君と主様が生きていれば犠牲が出ようと全滅することはありません!」
『で、でも…』
攻撃を受け流しつつ隙を窺うフルーレがじりじりと押し込まれて主と会話できる距離まで後退してきていた。
「今だけしかチャンスはないですよ!俺が持ち堪えられているうちに早く逃げてください!」
フルーレにまでそう言われてしまうと逃げなくてはいけない気がする。でもここで主が逃げたら知能天使は主を追ってくるだろうか?いや、きっとそんなことは3人がさせないだろう。ならばできることをやってから逃げよう。主は近くにある3人の気配だけに集中して深呼吸をする。そして出せる限りの魔力を出して3人に分け与えた。
「!攻撃が軽くなった…いや、俺の力が強くなった?」
「これは…ユーハン君と訓練していたのは…これを出来るようになるためだったのかい?」
「主様にここまでしていただいて負けるだなんて間抜けなことは出来ませんね。さぁ主様、ユーハン君と合流して別邸の執事達の加勢をして本邸の執事達と合流できるようにしてください。ユーハン君の魔力も合わさればきっと勝てますから」
『うん!皆死なないでね!絶対勝って生き残って!』
主はそう言ってうじゃうじゃと庭を埋める天使の隙間を縫って別邸を目指す。全速力で駆け抜ければ攻撃するのに溜めが必要な通常の天使の攻撃はほぼ躱すことができる。それでも攻撃が自分の身体すれすれを通っていく恐怖は何度体験しても慣れることは出来ない。主は嫌な汗が頬や背中を伝っていくのを感じて自嘲的に笑った。元の世界に居た時は早く死んで両親に会いたいと思っていたのに、今では死ぬのが怖い。皆を残して死ねない。その思いだけで必死で駆け抜けた。
「ハナマルさん!止血はできますか!?」
「ユーハンさんはハナマルさんを連れて別邸に立て籠もってください!貴方が居なかったら既に全滅しています!魔力の譲渡は離れていてもできるでしょう!?」
「ですがテディさんだけで前線を守り切るのは無茶です!」
「そんなことくらい分ってます!でも他にどうしろって言うんですか!?」
別邸1階の執事達の叫び声が聞こえて主は嫌な予感がした。ハナマルが怪我をした?
『テディ!ユーハン!ハナマルは!?』
天使を押し退けて3人に駆け寄った主は刀を地面に突き刺して支えにしながら胸を押さえているハナマルを見て息を吞む。指の間からぼたぼたと血が落ちて血溜まりを作っている。
『すぐ止血して回復させるから!ハナマル、もうちょっとだけ我慢してね』
主はハナマルの背中に手を当てて胸の傷が内臓まで達しているのを感じ取り、自分が来るまで持ちこたえてくれた幸運に感謝したいほど嬉しかった。ユーハンは身体能力を強化することは出来たがどんなに訓練しようともそれ以外の魔力の使い方はできなかった。つまり主がここに来なかったらハナマルは死んでいた。ハナマルの傷を癒しながら主は本当にぎりぎりの戦いを強いられていることを感じ取る。
「…あー…痛みが引いてきた…ありがとうな、主様。まさかハナマル様がこんな怪我して戦力外になるだなんて思わなかったわ。でもこれからは戦力になれるな」
『ハナマルが怪我するなんて…何があったの?』
「とても申し上げにくいのですが…私の死角から攻撃されているのに気づかず、ハナマルさんが庇ってくださって…」
ユーハンが近寄ってくる天使を切り捨てながらそう言った。それにテディも剣を振るいながら続ける。
「でも主様がこっちに来てくれるだなんてラッキーでしたね!これで本邸の執事達と合流して主様を守ることに全力を尽くせます!」
ハナマルは破れて血濡れの魔道服のまま地面に突き刺していた刀を抜いて構える。
「主様…こんなこと頼むのは良くないんだろうが、ベレンとシロに合流して本邸に向かうと伝えてくれるか?別邸の縁側から入って勝手口のほうに抜けたら2人が居るはずだから、な!」
ハナマルは突撃してくる天使を切り裂き、主に早く行けと促す。さっきまで大量出血して死にかけていたとは思えない頼もしさを見せるハナマルに元気づけられて主は別邸に上がり込んだ。
和室は四つん這いで移動し、小上がりから降りてからはダッシュでベレンとシロが戦っているという裏口を開けた。
『ベレン!!シロ!!』
天使で埋め尽くされて2人の姿が見えないことで不安になって2人の叫ぶ。
「…主、様…?」
「もう少し耐えろ。すぐに回復させる」
その瞬間2人の声がしてシロが主と自分の間に居る天使達を切り伏せて道を作る。天使の隙間から見えたベレンは足を怪我したらしく、座ったまま動けないでいるようだ。
「来い!早く手当てをしろ。手遅れになるぞ」
シロに腕を掴まれてベレンのところまで進む。ベレンは力なく微笑んで主に声をかけた。
「いやぁ…油断しちゃったみたい。こんなところベリアンに見せられないね」
『ベレン…足が、無いの…?』
右足の膝下辺りから血塗れのズボンがぺったんこになっている。
「あはは、本当に情けないなぁ…吹き飛ばされちゃったんだ。ボスキ君みたいだね」
ベレンは主を安心させようと無理矢理笑みを作るが、激痛には耐えられなかったようで引き攣った顔になっていた。こんなに余裕のないベレンは見たことがない。
身体の一部を回復させるにはかなりの時間と魔力が必要になる。でもここで出し惜しみしてベレンとシロのペアを見殺しにすることは出来ないし、本邸の執事達と合流して天使を殲滅することも難しいだろう。
シロがベレンと主を守ってくれている間に、主はまず止血をしてから足の組織をゆっくりと修復していく。ベレンは痛そうに呻いて脂汗を流す。膝下の組織を無理矢理回復させているのだから痛いだろう。怪我をした時からずっと痛いだろうに回復の時にも痛みを与えられるなんて残酷だと思ったが、他に方法もない。
『ベレン頑張って!もう少しで回復終わるからね!』
「ゔ…うん、はぁ…まさか俺がこんなことになるだなんて思ってなかったよ。主様、助けに来てくれてありがとう」
『気にしないで!…そうだ、別邸1階と合流して本邸の執事達の加勢をしてほしいって。知能天使の狙いが私みたいだし、早く倒さないともっと天使も召喚されちゃうから…行けそう?』
怪我の手当てを終えて裸足の足に痛みや違和感がないことを確認するとベレンは立ち上がり、困ったように笑った。
「もちろん行けるよ。でも靴は履き替えないと…。ねぇシロ、別邸までの道を作ってくれるかな?」
「全く、世話が焼ける奴だな。いいだろう。我の後ろから動くなよ?」
シロが別邸に向かって邪魔をする天使達をばっさばっさと切り捨てていく。主はシロの頼もしい背中にぴったりとくっついて歩いていく。ベレンも武器を取って左右と後ろから襲ってくる天使達を斬っていく。
何とか別邸に到着すると3人はできる限り畳を汚さないように膝で歩き、縁側のある窓を開けて別邸1階の執事達が天使を倒しているのを見た。
「やっぱり数が多いね」
「だが天使は機械的な動きをする。読み切って戦えばいいだけだ」
その言葉にベレンはクスリと笑って靴を履き替えて武器を持つ。
「行くぞ。ユーハンが居るから戦いやすいだろう」
シロとベレンは縁側から外に出て天使達に押されかけている3人に加勢した。
「お、来た来た。やっぱこの人数じゃ突破するのは無理だと思ってたから助かるわ~」
「加勢が来てくれるなんてラッキー!このまま本邸に行けるかもしれませんね」
「すぐに身体強化をさせてください。少しは戦いも楽になるでしょう」
ユーハンはベレンとシロの背中に手を当てて魔力を直接送り込む。
「すごいね、こんなに槍が軽いって思ったことないよ」
「最初からこれを出来なかったのか?」
ユーハンは2人の正反対な態度に困ったように笑った。
「私の悪魔の力は「天使を狩るたびに強くなる」という能力ですから、天使を倒して魔力も増幅されているのです。戦い前に一応身体強化はしましたが、もう数百体は倒しましたから魔力の量が尋常でないくらい増えているのです」
「ありがとう、ユーハン君。これから本邸の加勢に行くんだよね?」
「知能天使相手にどこまでやれるか分からんが、挟み撃ちすれば勝てるやもしれん」
シロの言葉に全員が頷く。主は特に身体強化したとはいえ元々の近距離の戦闘能力が低いフルーレが心配だった。
「さぁ、本邸まで天使を蹴散らして行って、知能天使を倒しちゃいましょう!」
テディがそう言いながら本邸に最低距離で行けるように剣を振り回し天使に隙間を作っていく。それでも邪魔してくる天使達はシロとユーハンとベレンが倒して、主の身の安全を守りつつ本邸の知能天使のところまでどうにか辿り着いた。
「あれ?帰ってきたの?」
「探しに行く手間が省けたな。さっき3人とも戦闘不能にしたからちょうどいい。悪魔執事の主…消してやる」
「ほら、どうしたの悪魔執事の主様?人間だから連れて帰って天使になってもらえばきっと最強の天使になれるよ?嬉しくない?」
知能天使の言葉にハナマルが普段のへらへら笑っているのが嘘のように険しくて怖い顔で刀を構える。テディとシロがそれに加わって知能天使達に斬りかかる。
ユーハンとベレンは近づいてくる天使を処理し、ユーハンはそれでどんどん魔力と身体能力が上がっていく。その魔力を別邸の執事達に分け与えながらひたすらに戦った。
『フルーレ!ミヤジ!ルカス!』
主は知能天使の興味が薄れたタイミングを見計らって地面に座り込んでいる執事達に駆け寄る。
フルーレは体中に痣と切り傷だらけで魔道服もボロボロだった。ミヤジは片腕を切り落とされていてルカスが包帯を巻いて止血していた。そのルカスは脚が千切れて止血帯を巻いていても大量に出血している。
『すぐに直すからね!痛かったよね、ごめんね私のせいでこんなに痛い思いさせて…』
主は悔しさと情けなさで涙が滲む。もっと自分が強ければこんな怪我をさせることもなかったし、逃がしてくれた時にもっと魔力を分け与えていれば、きっともっと軽傷で済んだんだ、と思われて主はぽろぽろと涙を流しながら千切れて転がっていたミヤジの手とルカスの脚を拾ってきて魔力で修復していく。
腕と脚がくっついたらついでに体力回復のために魔力を多めに渡していく。
「ありがとう、主様。これでまた戦えるね。あとはフルーレ君に魔力をあげてほしい」
「大量出血していたので貧血でどうにかなりそうだったのですが、主様のお力のおかげでまだまだ頑張れそうです」
2人は知能天使が戦っている背後から刀と鎌で攻撃して別邸の執事達と挟み撃ちに持っていく。それを見ながら主はボロボロになったフルーレの怪我を癒し、戦えるだけの魔力を分け与える。もうそろそろ主の魔力も尽きてきた。これ以上大きな怪我の手当てはできないだろう。ふらつきながら立ち上がる主をフルーレが支える。
「主様、無理に動こうとしなくて大丈夫です。ここの救護スペースで横になっていてください。俺が絶対に守って差し上げますから」
フルーレは主をシートの上に寝かせて、弓で援護射撃を始める。
本気になったハナマル、テディ、シロの強さは尋常ではないのに後ろから斬りつけられる危険も増えたことで知能天使達の余裕が消えていく。しかも羽を狙って背後から矢が飛んでくるので軽率に上空に逃げることもできない。
知能天使達は消されるのならば邪魔者を排除してから消えたいと思ったらしく、防御を捨てて執事達に猛攻撃を始めた。流石のハナマル達でも全力で向かってくる知能天使の攻撃を受け流すか避けるので精一杯になってしまいなかなか倒せない。
刀や剣で知能天使が放つ光や攻撃を何とか受け止めて、テディの剣にヒビが入る。
シロの剣も防御に特化しているわけではないために攻撃を避けながら攻撃できるタイミングを窺っていた。
一進一退の攻防戦が続いていたが、そこにユーハンが一気に後退してハナマルに叫ぶ。
「ハナマルさん!今から知能天使と戦っている執事達の身体能力の強化をします!」
本邸に移動してからもずっと天使を消し続けていたユーハンの魔力は体が光るほど増幅されていた。それを利用して執事達に魔力を分け与えていく。
「これは…凄いな。今までの身体強化より一段強いっていうか…」
「これなら知能天使も倒せそうですね!ユーハンさんの能力には頭が上がりませんよ!」
「天使を倒した分だけ魔力も身体能力も上がる…代償がすぐに表れないと良いが…」
更に強化された執事達に追い詰められて知能天使達はどんどん羽や体に傷をつけられて、移動すらままならくなる。
「これでトドメかな?」
「大鎌らしく首を刎ねちゃおう」
ミヤジとルカスが背後から知能天使を襲い、ルカスは首を刎ねてミヤジは袈裟懸けに斬る。
知能天使の2体が砂が崩れるかのように消えて、最後に残った知能天使はハナマルが中段に構えた刀で上半身と下半身を切り離した。
知能天使が居なくなると、庭を埋めていた天使達が一斉に光って消えた。
『…か、勝ったの…?』
主が身を起してフルーレに確認する。
「はい!俺達の勝ちです!でも主様が居てくれなかったらきっと全滅していました。本当にありがとうございました!」
『そう、なんだ…あれ、目が見えない…』
主はそう呟いてシートの上に崩れ落ちる。
慌ててルカスとミヤジに診てもらうと、極度の魔力切れだろうと診断された。
「しばらく寝かせて点滴もしておこうか。それで主様の魔力が回復するまで待つしかないね」
ルカスが主を抱き上げた時、ハナマルが急に気絶したユーハンを背負ってルカスとミヤジのところに駆けてきた。
「主様優先でいいんだけど、ユーハンの状態も確認してほしい。ただの魔力切れなのか悪魔の力の代償なのか分からないからな」
ミヤジが負ぶわれているユーハンの背中に手を当てて魔力量を確認する。
「ふむ…まぁ予想通り魔力切れだね。でも獣人ならこのくらいの魔力量でも動けるはずなんだが…もしかしたら代償が睡眠になってしまっているのかもしれないね。主様と一緒に治療室で点滴をしよう。悪魔の力の代償だというのなら何ヶ月眠り続けてしまうかもしれないからね」
怪我をした執事達の手当てはミヤジが行い、ルカスは主とユーハンをベッドに寝かせて点滴を打った。静かな治療室の中には点滴が落ちる音と2人の寝息だけが聞こえる。
ここまで人間や半人間の魔力を利用して消耗させ、こうして目覚めなくなってしまったことに胸が締め付けられる。やっていることはサルディス家と変わらないではないか。
せめて何事もなく眠って、起きてくれますように。
ルカスは柄にもなく天に祈るのだった。
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コメント
1件
読み終えました…!決戦回、すごく熱かったです🔥 主様が執事たちを1人残らず守ろうと必死に駆け回る姿に胸が熱くなりました。フルーレたちが「逃げろ」と言いながらも、主様の魔力で力が漲るシーン、本当にカッコよかった…! 最後、魔力切れで倒れる主様とユーハンの代償の眠り。ルカスが祈る場面でじんときました。全員無事で終わってほしい…続きが気になります!