会議が終わる。もう聞き飽きた。疲れた。
そんな単調な言葉が脳を満たす。時間が満ちるまで自室で最後のイメージトレーニングを行う。最後まで完璧に。そう何回も、何回も自身に言い聞かせる。
「すぅーっはぁー…」
深呼吸をして、自身の息を整える。そして、頬を軽く叩き、気合を入れる。
「Sレイマリ!行きます!!」
そう鏡の前で言って自室の部屋を飛び出る。
私は自身の足を急かしながらガンマスさんの部屋へと向かう。歩く度に、鼓動が早くなるのを感じる。
「──────きま」
そんな声が扉越しに聞こえ焦ってしまい、思いっきり扉を開け、声を荒らげる。
「待ってくださいッッ!!!」
思わず大声が出てしまう。さっき、あれほど整えた呼吸はこの緊張に酔い、乱れる。それを見たガンマスさんは心配そうに
「どうしたんですか?」
と、尋ねてくる。心配の元凶が、と言いたいのをぐっと我慢して役になりきる。そう、これを見ているメテヲを騙すために。
「行きます!!私もついて行きます!!」
そういえばガンマスさんは困った表情を浮かべる。ここでもう一押しするために私はさらに思ってもいない言葉を切羽詰まったように並べる。
「お願いです!!行かせてください!!」
段々と、声を小さくしてそれっぽくみせる。伊達に、長年生きていないし、何回もやってきているからだ。こんなこと、慣れてしまえば騙す、という行動にたいし、なんの罪悪感もうまれなくなってしまう。
「無理です。これは、私の問題なので。」
このセリフも何回も聞いた。それでも、私は、最後まで連呼する。
「それが本当だったとしても最後はガンマスさんといたいんです!!」
嘘にまみれたこの情報の中に本心も入り交じった言葉が私の喉を通る。しかし、ガンマスさんはこの言葉でも決して揺らがないだろう。
「…無理です。れいまりさんを守りながら戦うことは不可能ですから。」
ガンマスさんは困惑した表情に入り交じり、少しばかりの怒りを覚えているようだ。そんな些細な変化にも気づけるようになってしまったのはガンマスさんを見過ぎたせいなのかもしれない。ここで、私は、暴論に走る。
「なら、私を殺してください。今すぐに。」
そう、私は言いきってガンマスさんに短刀を渡してくる。ガンマスさんは言葉が出ない様子だった。しかし、この反応すら私にとってはつまらない、と感じてしまう。
「…は?え?何を言ってるんですか?」
ガンマスさんがここまで私のために感情が揺らいでいる。そう感じ取れる。つまらない、なんて思いがすぐに私の心から剥ぎ取られる。私の心情がオセロで逆転したかのように色が変わる。私は追撃を行う。
「だから、私を殺してください。この場で。」
ここは何回やっても緊張する。練習通りに行くのか不安でしたかなかった。しかし、考え込んでいるガンマスさんに脳を錯乱するための一撃を行う。
「ほら、殺してくださいよ。その手で。出来ないんですか?」
私は、1、2歩さらに詰寄る。相手の冷静さを欠かなければ勝算はない。少しでも、心を揺るがさなければならない。平常心を保たせるのを防がなければならない。
「なんでできないんでしょうね?自分は死んでもいいけど、あなたは死んで欲しくない、なんて綺麗事はやめてくださいよ?それは綺麗事では無いですし。」
そう言い切ってあげればガンマスさんは冷や汗をかく。ガンマスさんは私に視線を合わせてくる。その目が問う。それではなんだ、と。私はそれに丁寧に返してあげなければならなかった。
「それはですね、自分が死ぬっていう救済でしかないんです。周りに不幸を撒き散らし、自分だけ楽になる。逃げることしか出来ない卑怯者でしかないんですよ。」
それは、私にも反射して言えることだった。私だって、死を試みずやっているのだ。しょうがないといえばしょうがないのだが。しかし、ガンマスさんは冷静を装って返してくる。
「…私は卑怯者ではありません。それと、れいまりさんを殺すつもりはありません。私は、単独で行かないといけないんですから。」
なぜ、そうなるの?私はそう問いたのをぐっとこらえ、感情を押し殺す。そして、私はガンマスさんの心境を揺らす言葉で揺さぶりをかける。
「単刀直入に言います。ガンマスさん。このまま行けばあなたは間違いなく死にます。これは、定められた運命なので変えることは出来ません。」
ガンマスさんが死ぬ。その言葉はなかなか衝撃的な言葉だったはずなのに、ガンマスさんの表情にゆらぎはない。──────信じていないのだろう。
「恐らく嘘でしょうが、そうだったとしましょう。それとこれ、何か関係ありますか?」
想定内の疑問に、想定された答えを言い切る。
「運命を変えるには何か、その未来と決定的な違いが必要なんです。だから、私の死を利用するんです。」
しかし、この言葉にすぐさま反論を返される。
「私があなたの死を許しはしませんよ?」
そう言われて、素早く私も判断する。自嘲気味に笑い、ガンマスさんの気をひく。
「どうせ会えますから大丈夫です。それに、私の事なんて忘れますから。」
そして、私の目標を達成するためにさらに詰め寄る。
「ほら、どんなに怒っても、私の要望である殺しはしない。何故ですか?時に、それは人の心を殺すんですよ…!!」
段々と語気を強める。そして、ガンマスさんが持っている短刀を私に向ける。
「ほら首を斬るだけです。ガンマスさんにとっては簡単なことでしょ?」
「…。」
これだけ言っても行動に移そうとしないとは、なかなかに頑固なものである。私は、次の行動をしなくてはならないことになった。意味深につぶやく。
「…ガンマスさんには分からないでしょうね。」
そう呟いた後、あたかも私の感情のようにぶちまける。
「尊敬している人が…!!大切な人が!命よりも大事な人が!私の知らないところで、死んで、弔うことも出来ず、感情の整理もできない。そんな状況を作り出そうとしてるのはガンマスさんですよ!?」
そう言って、目に涙をうかべる。このセリフを言うといつも同情して涙してしまう。
ガンマスさんはずっと考える仕草をした後、悩みに悩み、そしてあと一歩の所までつく。あとは、軽く押してあげるだけでよかった。
「私を…救済してくださいよ……。」
その一言でガンマスさんは私の首を斬る。当然、首が斬られて死ぬことはない。でも、十分なのだ。ガンマスさんが私を殺した、と思い込むだけで。そうして私は自決する。
──────ご主人様のために♡
ここで切ります!!時間も時間なのでさっさと終わらせちゃいましょ!おつはる!!
コメント
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嘘はホントと混ぜることで信用を得る…れいまりさん流石ね