テラーノベル
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「君と生きた証」
ー
この話はフィクションです。
俺の妄想、聞いてくれますか。
「ねぇ、亮平はさ、将来の夢とかあんの?」
放課後の屋上。
西日がグラウンドをオレンジに染めて、
そよ風が俺たちの間をすり抜けていった。
「あるけど、秘密。」
「何それ、ずる 笑」
「辰哉こそ、あるの?将来の夢。」
「俺はねー、うーん… 」
「亮平の隣に居られる人生、かな 笑」
「もー何それ 笑」
冗談混じりに笑ったのに、亮平の目が一瞬だけ泳いだ。
俺のこの言葉が冗談じゃないこと、あいつにはバレてる。
_幼馴染ってのは、便利だけど、不便なもんだな。
亮平とは、物心ついた時から一緒にいた。
家が隣で、学校も同じで、塾も同じで、なにより、俺はずっと、亮平が好きだった。
でも、それを言葉にしてしまったら、この関係が壊れてしまう気がして、言えなかった。
臆病だった。
だから俺は、ずっと「友達」のフリをしてきた。
だけど、高校2年の秋_
俺は亮平の秘密を知った。
彼女がいる、とか、
そういう類のことじゃなかった。
亮平は_
病気だった。
心臓の難病で、長くは生きられないって。
「……俺、」
「あと2年も持つか分かんないってさ。」
亮平がそれを話してくれた日、俺は何も言えなかった。
頭が真っ白になって、涙が止まらなかった。
「泣かないでよ、辰哉 笑」
「泣かれると、俺まで弱くなっちゃう。」
そう言って、亮平が俺の頭を撫でてくれた。
お前が、一番泣きたいはずなのに。
ー
それからの毎日は、
カウントダウンみたいだった。
何気ない会話も、笑顔も、全部が
『最後かもしれない』
と思ってしまい、息が詰まりそうだった。
でも亮平は、そんな俺を見透かしたように、いつもと同じように接してくれた。
「俺、東京の方の大学受けようと思う。」
「え?まじで?」
「一緒に住む!?ルームシェアとかさ!」
「ふふっ笑」
「辰哉の料理レベルによるかな 笑」
「うっ、それは……」
_そんな会話も、もしかしたら、
全部“叶わない未来”かもしれないのに。
ー
12月のある夜
初雪が降った日、思い切って亮平に言った。
「俺、亮平の事好き。」
一瞬、亮平の目が揺れた。
けど、すぐに優しく笑った。
「うん、知ってた。」
「え、」
「ずっと、気付いてたよ。辰哉の気持ち。」
「俺も、辰哉の事が好き”だった”。」
「だった…って、何…」
「俺、来月、手術受ける。」
「成功率は半分以下。」
「でも、奇跡を信じてみたくなった。辰哉が傍に居てくれるなら。」
ー
手術当日。
俺は病院の待合室で、ずっと祈ってた。
でも
奇跡は、
起きなかった。
手術は失敗した。
亮平は
帰ってこなかった。
ー
それからの日々は、空っぽだった。
歩くたびに胸が痛くて、息を吸うのも辛くて、涙はもう枯れ果てていた。
でもある日、亮平の部屋を整理していた時、引き出しの中から1通の手紙を見つけた。
辰哉へ
これを読んでるって事は、俺はもういない。
ごめんね、こんな別れ方して。
本当はずっと言いたかった。
俺も、辰哉が好きだった。
でもね、俺は自分の命が長くないって知ってから、誰かを好きになるのが怖くなった。
好きになればなるほど、残される人が可哀想だって思った。
だから、好きにならないようにしてた。
でも辰哉、君はずるいくらい優しくて、まっすぐで、俺はいつの間にか、どんどん辰哉に惹かれてた。
初詣、映画、些細なこと全部が宝物だった。
俺は、辰哉と生きたかった。
だから、もし生まれ変わったら、次こそはちゃんと隣にいたい。
その時は、嘘じゃなく
「今、好きだ」って言わせて。
亮平より
涙が止まらなかった。
でも、ありがとう。最後に本当をくれて。
ー
俺は最初に一つ、嘘を言いました。
この話は
フィクションなんかじゃありません。
亮平と過ごした季節は、
俺の中にちゃんと残ってる。
桜の匂いも、夏の陽射しも、秋の風も、雪の静けさも、全部に亮平がいた。
笑い声も、指先の温度も、交わした言葉も、
ぜんぶ、現実だった。
誰も知らないかもしれない。
でも俺の世界には、たしかに亮平が生きてた。
だからこれは、
夢でも、作り話でもない。
これは、俺が確かに愛した人の、物語。
ー
コメント
4件
う、ウッ……泣
同期、尊い(◜¬◝ )でも、せつなぁい、
なんて素敵な…😭😭