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「朝谷さん、昨日は本当にごめん」
次の日、朝一番で朝谷さんに謝罪をした。
「うん、大丈夫。私の方こそごめん」
「朝谷さんは何も悪くないよ。図星を突かれて、何も言えなくて当たっちゃったんだ。昨日のお詫びに今度お昼でも食べに行こう。」
「ほんとに!?お金は出してくれるんでしょうね!」
「もちろんだよ」
許してくれた事に安堵しながらも、少しチョロいと思ってしまった自分がいた。これを口に出しても反省してない奴に思われるだけで、心から申し訳ないと思っているため、それは心の中に留めておいた。
「時間とかは、おいおい連絡するよ」
「あれ?私たちって連絡交換してたっけ?」
「確かに」
彼女はいらない紙をちぎっては、何か書き始めた。
「はい、これ私のID」
「あ、ありがとう」
「うん?どうしたの?」
「いや、君がIDを覚えていることにびっくりしてね」
僕は、自分のIDを覚えていない。人にIDを教えることがないから必要ないと割り切っていたから。
……自分で言っていてすこし悲しくなった。
「え?」
「佐野くんは覚えてないの?」
「うん…」
「えぇ……」
そんな目で見ないでほしい。こんな視線を向けられると、本当に自分が人間であるのかを疑ってしまうから。
「じゃ、じゃあ家に帰ったら連絡するよ」
「えぇ……」
「もう授業始まるから…!」
「えぇ……」
悲しくなる。そんなおかしい事だろうか。僕という人間はもしかしたら、とんでもないくらい一般の常識からズレているのかも知れない……。