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ちょっとどころじゃなく、かなりやさぐれている私には
こういう運命がお似合いなのだと勝手に自虐する日々。
私は神様に嫌われているのだ。
それはきっとこれからもそうなのだろうと半ば諦めていた。
「 煙草、学校に忘れた … 」
ちっ、と舌鼓を打つ。
失敗した。
ばれると色々とまずいことになる。
時計の針は4を指していた。
窓の外はぼんやりと暗い。
顔をしかめて玄関に向かった。
生温い風が頬をさらりと撫でていった。
少し俯きながら遊歩道を歩いて行く。
犬を連れた女性や自転車に乗った野球部員等とすれ違う。
みんな顔が明るくてきらきらしていた。
はは、と小さく乾いた声を漏らす。
世界が、自分だけを置いていく様な感覚。
それに似ている、と思った。
もう学校はほぼ目の前同然なのに、いつまで経っても着かない様な錯覚を覚えた。
ポケットサイズのケースを片手に家へ戻った時、玄関に大きな革靴が揃えてあった。
変なところで几帳面な性格の父のものだ。
まだ、6時。
父の従来の帰宅時間とは大幅に早い。
珍しい、と少し目を大きくする。
明かりがついている奥の方に向かって声をかけた。
「 ただいま 」
「 お、紬、ご飯出来てるぞ。一緒に食べよう 」
朗らかに笑う父を見て再度目を丸くした。
何か裏があるのか、と勘繰ってしまった。
ほらほら、と急かす父を横目に靴を脱ぐ。
これが、一般家庭の温かさなのだろうか。
父は心を入れ替えてくれたのだろうか。
お粗末な誕生日プレゼントなんかよりも嬉しい。
久しぶりに、心から笑って返事ができた。
「 はぁい、ちょっと待ってね 」
「 紬、お父さん再婚しようと思うんだ 」
「 うん 」
「 … え? 」
「 今日は雪乃さんって人と晩飯作ったんだよ 」
「 雪乃さんがな、紬に会ってみたいって。会ってくれるな? 」
思考停止、とはまさにこのことだと思った。
お父さんが、再婚?
雪乃さんって、誰?
どういうこと。
意味わかんない。
頭では多分理解していた。
父は、雪乃さんと再婚する。
そんな簡単な事実を、私の心が受け取ろうとしなかった。
だって、私にはお母さんがいるじゃない。
年に2回だけ、お母さんと会える日。
お母さんは浮気気質のお父さんに愛想を尽かして出ていった。
まだお母さんはお父さんを心配してくれていた。
お父さんは、それを知らない。
知らないから再婚、なんて真似をできるんだ。
酷い。
一方的にそう思った。
さっきまで舞い上がっていたくせに、こういうことがあるとすぐにネガティブ思考になる。
涙が出そうだった。
「 紬? 」
どうした、ご飯が冷めるだろ、雪乃が待ってる_____。
おろおろとする父を睨みつけて靴も履かず靴下のまま飛び出した。
振り向かなかった。
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