約束の日の朝になった。
今日も学校に行ってみると
案の定、部室前の広告の場所には
沢山の人が集まっている。
それを遠くから眺めてると
「雨宮さん!」
と後ろから言われ、驚いて振り返ると
そこには海橋くんが居た。
「今日の約束忘れないでね?」
「あと、傘持ってきた方がいいよ」
「分かった」
返事をしたもののやはり海橋くんは
天気を操れるのかもしれない。
そう思った。
というか今日の夜何があるのだろう。
少し気になる。
そして夜になった。
私は海橋くんに言われた通りに傘を持って
あの公園に向かった。
やはり海橋くんは私が来る前に
公園に着いていた。
「雨宮さんここ来て」
いつもと違う海橋くんは
私を自身が座っているベンチに呼んだ。
「海雨、今日は特別な日だよ」
突然苗字ではなく名前で呼ばれて驚いた。
特別な日?私はハテナだらけで
海橋くんの方を見ると海橋くんの首には
いつものカメラではなく違うカメラが
ぶら下がっていた。
「傘、さした方がいいよ」
そう言われ私は傘をさした。
途端、雨が降ってきたのだ。
それと同時に海橋くんは
首からぶら下げていたカメラを首から下ろし、
ベンチに置いた。
「夜の演奏会みたいだね」
と海橋くんが言う。
確かにその通りだと思う。
だって雨は水溜まりを作ることによって
様々な音色を奏で、
草木は揺れ星々はキラキラ輝いているように
聞こえる。
「海雨は僕の夢知ってるでしょ?」
「うん。写真家でしょ?」
「それのことなんだけどね、」
「海雨さ、僕のモデルにならない?」
「え…」
「僕は死ぬまで写真家として、海雨は出来るだけ長く僕のモデルになってみない?」
モデル…。
なんかプロポーズのようにも聞こえる発言だ。
「プロポーズみたいだね…」
私がそう呟くと海橋くんは笑いながら
「そのつもりだけど?」
と言った。しかも少し意地悪げに。
「生涯僕と共に生きることを誓いますか?」
その言葉を聞いて驚きながら
海橋くんの方を見ると海橋くんは笑っていた。
多分冗談のつもりで言ったのだろう。
だから私も仕返しすることにした。
「誓います」
そう言うと
「本当に?僕ちゃんと海雨のこと好きだよ?」
「私も楓のこと好きだし」
「…案外意地悪だね」
そう言いながら海橋くんは
照れくさそうにしていた。
「そういえば僕が雨を降らせれる理由気になったよね?」
「教えてあげる」
「僕はね感情とともに雨が降るんだ」
「感情とともに..?」
「うん。感情が動けば雨が降る。」
「だからいっつも苦労してた。」
「そんな時に海雨に出会ったんだよ」
「..でも私といる時でも晴れてる時あったよね?」
「それは晴れの時の海雨がカメラにどう映るのか気になったからだと思う」
「そうなんだ。なんかいいね。そういうの」
「え、怖いとか思わないの?」
「別に?だって雨好きだし」
「ありがとう海雨」
「どういたしまして」
「じゃ帰ろっか!」
「いつも急だね」
「あと、夜の演奏会の動画広告のところに貼っておくから!!」
「え、私達の声とかは….」
「もちろん入ってるよ!!」
そう言いながら海橋くんは帰って行った。
海橋くんの方がよっぽど意地悪な気がする。
しかもあのカメラ、ビデオカメラだったのか..。
まぁ、そんなことよりも海橋くんが
私の世界に色んな音を授けてくれたことを
心から感謝しないといけないのかもしれない。
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