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ただの酔っ払いだな。そうでなきゃこんなとこで寝ないだろう。

ホームレスだってもっとマシな場所を選んで夜を明かすのに、自分と同じサラリーマンがくたびれてるのを見ると何とも虚しくなる。

ひとり納得してると青年は完全に目を覚まし、准を見て驚いた。

「もしかして、木間塚准さんですか?」

「え。そーだけど……俺のこと知ってんの?」

彼は一度だけ頷いて凝視してきた。対する准は名前を呼ばれて驚いていた。

こんな青年は、頑張って捜しても自分の記憶に存在しない。


「あ……俺、貴方に会いに来たんです」


彼は見てて危なっかしいほどフラフラしながら立ち上がった。

「俺に? な、何で」

「えっと……あれ、何でだっけ。ええと……」

青年は頭が痛そうに、ブツブツと呟く。准はこの状況を理解しようと、頭の中で色々整理していた。しかし集中力は持続しない。素直な感想として真っ先に思ったのは、早く帰って寝たいというものだった。

しかし今は彼の方が、放っておいたら眠りそうだ。困った……。

悩みに悩んだ末、彼を自分の家の中に招き入れていた。


「ちょっと水飲みな。何で俺に会いに来たのか、ゆっくり思い出して」


彼は、見た目だけならまだ十代でも通りそうな顔立ちだ。自分の名前を知ってる人間を無下に扱うのも気が引けて、話だけは聴くことにした。

ほんと、どちら様だろう。

もしかして、ウチの系列会社の社員だろうか。でも住所を知ってる者は限られる。とりあえずちょっとでも変なことを言い出したら警察に迎えに来てもらおう。

准がペットボトルの水を手渡すと、青年はまた俯いた。


「ありがとうございます。見ず知らずの人間にこんな優しくしてくれるなんて……オエ、感動して気持ち悪くなってきました」


やっぱり吐かれる前に追い出した方がいいだろうか……。

いやいや、せめて話を聴いてからにしよう。


実はこのとき、悪い下心があった。恐らく今までの人生で最もタイプの顔立ち……だから、もう少しだけ眺めていたい。彼が酔ってるのをいいことに、目の前の席で堂々と観察した。


「なぁ、何で俺の名前と家を知ってたの?」

「あっ! 突然お邪魔してすいません。驚かないで聞いてほしいんですけど、実は……貴方に会いに来たんです」

「それはもう聞いたよ! 理由を訊いてんの!」


冷水でもぶっかけて酔いを醒ましてやろうかと思ったが、慌てて首を横に振った。自分も相当酔ってるみたいだ。もっと平和にいかねば。





ファナティック・フレンド

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