テラーノベル
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セミの声が絶え間なく響くようになり、夏の匂いが町に満ちていた。
気づけば、学校も夏休みに入っている。
リビングのテーブルには、町内の掲示板から持ち帰った夏祭りのチラシが置かれていた。
「……もうすぐだ」
咲は思わず声に出して、その紙を見つめる。
浴衣を着た人々、夜空を彩る花火――。
小さい頃から毎年のように行っていた祭りだけど、今年は胸がざわついて仕方がなかった。
(悠真さんも……来たりするのかな)
期待と不安が入り混じる中で、咲はそっと自分のタンスを開き、去年袖を通した浴衣を手に取った。
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