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この子を買うと決めたのはいいものの、まだ僕のことが怖いのか少し警戒してるように檻の隅の方から動かない。
なんとか心を開いてもらわないと…
友達の話をしている時は少し警戒が解けていたが時折ハッと何かを思い出したように固まり、震え出す。その仕草に少し違和感を感じその子をよく観察してみる。
入口に並んでいた子達が来ていたきれいな衣服とは程遠いボロボロでところどころ破けていてとても生地の薄い服を着ている。薄暗い檻の中を目を凝らしてその子をちゃんと見てみると、腕や足、体の至る所にキズがあることに気付いた。切り傷、痣、火傷跡、擦り傷…小さな体を覆い尽くす無数の怪我。
「(こんな檻の中に入れられているところからあまり良い扱いはされていないのだろうと思ってはいたが、ここまでとは…)」
怒りと悲しみ少しの悔しさ、この子は必ず僕が守るという正義感から自身の手を強く握る。
心を開いてもらえるかなんか今ここで考えてたってしょうがない。まっすぐ思っていることを伝えよう、そう思い優しく息を吸い、なるべく静かな声を心がけて話しかける。
「僕ね、今一人暮らしでさ凄く寂しいんだ」
「(?)」
「君のさっきの笑顔に惹かれちゃったみたいなんだ。だからさ、君が良かったら僕と一緒に暮らさない?」
「(!!)」
「大丈夫だよ、安心して。僕は絶対君が嫌がることはしないし、君のことを必ず僕が守るから。」
ね?と少し微笑んで檻の間から少し手を差し伸べる。
「(…)」
その子はいきなりのことで戸惑っているようだった。
少し考えてから恐る恐る檻の隅の方からゆっくりとハイハイの形でこちらへと近づいてきてくれた。
「(そっか、歩行も✕となっていたな。歩けないのか、または歩き方を知らないのか…。)」
僕の前まできて止まった。少し怯えているようにも見える。
「ここで何をされていたのかは無理には聞かないよ。きっとずっと苦しかったんだよね、お友達と一緒にずっと我慢してたんだよね。偉いよ、いい子だね。君はとても優しい子だ」
と手を差し伸べたまま優しく安心させるように言葉を並べる。
すると震えて光のなかった瞳に光が入り、静かに涙を流した。
「(ッ〜〜泣)」
「僕と一緒に来てくれる?」
そう訪ねるとその子は勢いよく頷き、差し伸べていた手に恐る恐るではあったが擦り寄って来てくれた。
「(…スリッ)」
可愛いなぁと思いながら頬を撫でる。
「さて、」
「(…?)」
「ん?一緒にいるためにはここの店員さんに言って君を買わなきゃ行けないんだよね〜。
色々手続きとかもあるらしいし、とりあえず店員さん呼んでこなきゃ」
「(…!? ガタガタ)」
「ど、どうしたの!?」
店員さんを呼んでこなければと口にしたとたん、目を見開きガタガタと震え始めた。
「もしかして、怖い?」
「(!コクコクッ)」
「そっかぁ、嫌なことされてたんだね、ここの店員さんに」
どうしようかと考えていると、入口の方から
『おぉ!大森!!こんなとこにいたのか!』
「先輩…」
「(ビクッ)」
先輩の大きな声にビクッと震える。
「大丈夫だよ〜怖い人じゃないからね」
『おいっ誰が怖い人だ!俺は怖くないだろ!』
「はいはい、なんでもいいんで先輩静かにしてください。てか先輩、気に入る子は居たんですか?」
『おう!大森は?』
「へ?」
『気に入ったヤツいたか?』
「まぁ、はい。」
『おぉ!もしかしてお前の目の前にいる子か?』
「そうですよ」
『でもこの子、売り物じゃないんじゃないのか?リストにも載ってねーし…』
「多分、この子、ここで暴力を受けていると思うんです。」
『は?』
「身体中にキズがありますし、服もボロボロで髪はボサボサ。」
『まじかよ』
「僕はこの子を助けたいんです。それに笑うと凄く可愛い」
『ほぉん?だいぶ気に入ったんだな、よし!じゃあさっさと手続き完了させなきゃだな』
「そうですね」
僕はずっと震えているこの子に少し待っててね、すぐ戻ってくるからと声を掛けて店員のいる受付へ向かった。