テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
1件
二重人格か…すまない先生大変そうだなぁ… 「僕の魔導書」にはすまないスクールでのかけがえのない日常が書かれてたんだね!すまない先生の記憶には無いかもしれないけど、きっと心の中ではその日常があるはず!
「みんな?どうしたの?」
キョトンとするすまない先生に
「……さっきまでのは……」
とブラックが呟く。
「……これは……」
風夜が少し考え込み
「“二重人格”かもね」
と言った。
『二重人格?』
「うん。多分だけど、みんなの知るすまない君が表人格、記憶を破り捨てる前のすまない君が裏人格として今は二人でこの体を共有してるね。まあ、どっちからしてもこのすまない君の体は帰るべき依代だから仕方ないけどさ」
そう言って風夜は微かに笑った。
「……そっか、やっぱり僕の記憶は戻らないんだね……」
「うん……でも、今なら君にあの日々を教える事はできる」
そう言って風夜は一冊の本を渡す。
「これは……?」
「僕の魔導書さ」
「えっ……?」
風夜は笑って答える。
「僕は本来自分の魔導書を持たないけど“風夜”として過ごした記憶まで魔導書として記憶するわけにはいかないんだ。だから僕は擬似的な僕の魔導書を作ったんだ。それには僕が思い出せない何十回も繰り返したすまないスクールの日々が全て記されている」
「すまないスクールの……日々……」
すまない先生は開こうとしてピタリと手を止める。
「どうしたの?」
「そんな希少なもの、僕が見ていいの?」
「もちろん。今回はすまない君に見せるために持って来たしね」
「そっか……ありがと」
すまない先生はそっと開く。そこには一回目から何百回と繰り返した生徒達との出会い、共に過ごした日々が描かれていた。
ぽろっ……
「……僕は……今まで、何回も何回もこの“幸せな日々”を過ごして来たんだね……」
「……すまない君は……自分の知らない日々を見て……辛くない?」
「うん……むしろ僕の知らないすまないスクールの日々を知れて、嬉しいよ!」
その無邪気な笑顔に風夜は僅かに驚いたような顔をしてそしてふわりと微笑むと
「……すまない君は……強いね……良かった」
と呟いた。
数日後。
「風夜君はこれからどうするの?」
「うーん折角地上に出て来たし、ぶらっと世界中旅でもするかなぁ……だいぶ様変わりしてるし、なんか面白そうだから」
「そっか……」
少し悲しそうな顔をしたすまない先生を見て
「そんな悲しそうな顔しないでよ。またこの子達が生きてるうちに、ここにも遊びに来るからさ。ちょっとだけ長めの旅行だと思ってくれれば良い。“ちゃんと戻って来るから”」
と宣言した。
「そうだね……ずっと待ってるから、旅先で見た面白い話とか、ぜひ聞かせてよ」
「うん、もちろんだよ」
風夜はそう微笑んだ。