すれ違いまくりの2人、、、
ちょっと長いです。
〜riho side〜
「彼氏オーディション!?」
あまりにも急な提案に驚く私を、社長は面白がって脇をつついてくる。
「いいじゃん、やってみなよ。もしいい人いなかったら辞めるでもいいし。」
じゃあ決定とでも言いたそうに、社長は忙しそうにパソコンを抱え出ていってしまった。
“彼氏オーディション”
動画内でなんとなぁく始まった話で、西も私も、まさか本当に企画にするなんて思いもしなかった。
「無理だよぉー、!」
半分独り言として発した言葉は、真剣な顔で動画投稿の最終チェックをする西には届かない。
もう、人がこんなに焦ってんだから慰めてよ!
心の中で理不尽に八つ当たりして西の隣の椅子に腰を下ろした。
「ねぇ、西」
「んー、ちょっと待って」
冷たい言葉に少し傷つく。ただの友達なのに。
カタカタっと何回か音が響いて、西はこちらに向き直った。
「動画上げたよ、それでなに?」
「彼氏オーディションの話聞いた?」
「聞いたよ、やってみれば?」
「でもさあ、」
その後に続く言い訳は見当たらないけど、西なら自分でも分からないこの気持ちを察してくれるような気がした。
「りほさ、好きな人いるの?」
「え?」
唐突にそう言われて驚きは顔に出てしまっただろう。
好きな人、?頭の中に1番に出てきたのは西、でもそんな訳ない。絶対。
だって私たちは1番の親友なんだから。
思考を切り替えて質問に答える。
「いないよ」
「そっか、面白い企画だし、やっても損はないと思うけどな。まぁ、私は別にやらなくてもいいと思うけど、」
なんだそれ、なんであんたが不満そうなのさ。
そう思ったら、それは顔に出ていたようで、西が続ける。
「いい人が見つかんなかったら動画的に面白くないじゃん?」
最もな理由を述べられて、たしかに、と返せば西は携帯を見始める。
あれ、?
なんだろう、この違和感。
さっきの言葉が何故か引っかかる。
もう一度西の言葉を頭の中で反芻する。
動画的に面白くないじゃん、と言いながら耳に髪をかける。
一見ごく自然な情景を何度も思い返す。
数秒考え込んで、気づいた。
確かめるために、私は口を開く。
「西さ、なんか隠してる?」
「ん?急に何、特になにも隠してないけど。」
言葉と共に西の手が髪に触れる。
こいつ、、なんか隠してる。そう確信した。
だって、
彼女は嘘をつく時、いつも髪を触るから。
その夜、怖い夢を見て目を覚ました。
西がいなくなってしまう夢。
あまりの不安に、本気で西が好きなんだと気づいた。叶うはずもない恋を目の前に、泣きそうになる。
思わず西に電話すると、西も起きていたようで会うことになった。
家に着くと、カーテンを開いて星を見ながら、色んな話をした。
「こんな夜中に何してんだよ」
「電話かけてきたのあんたじゃん」
夜空に視線を向けたまま笑いあった。
その時、淡い光が夜空を横切った気がした。
会話が止まる。沈黙の空気を震わせたのはりほだった。
「西、見た?」
「え、だよね?」
「あの日と同じだね。一生一緒にいろって神様が言ってんだよ。」
奇跡みたいな出来事に盛り上がって、話題は彼氏オーディションの話になった。
「結局、やるの?」
西の問いかけに、数秒考える。
きっと私の西への気持ちは実らない。彼氏オーディションで本当にいい人が見つかれば、この恋心にも区切りがつくかもしれない。
切なさを無視して、意を決し口を開く。
「うん、やるよ」
楽しみだね、と答える西の笑顔は、月明かりのせいか、いつもよりぎこちなく見えた。
「じゃーりほちゃん」
「ん?」
「一生一緒に居てね」
当たり前でしょと笑うけど、その言葉は一生親友でいることを意味する。嬉しいんだけど、悲しくて。
目に涙が溜まったけど、きっと西にはばれていないだろう。
明日も撮影があることに気づき、西の家で一緒に寝ることになった。布団を出すのは面倒だからと同じベットに横になる。
数分話した後、目を閉じる。
微睡む意識の中で、西が小さな声で何かを言った気がした。
聞き返さないまま眠気に負けて、眠りに落ちた。
コメント
2件
うわぁぁぁ!!最高ですぅ!次が楽しみです!!😭