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警視庁ゼロディヴィジョンの分析室。
氷室 悠真は複数のモニターを並べ、過去数週間の通信ログを再解析していた。
「……このパターン、普通の外部犯ではありえない」
冷静な声の奥に、わずかな苛立ちが混じる。ログには、捜査の進行状況を逐一知っているかのようなアクセス痕跡が残されていた。
「誰だ……内部に潜むのは」
氷室は唇を噛む。論理の目で見ても、推測は一つしかない――内通者。しかも巧妙に痕跡を隠しながら、チームの行動を監視している。
一方、黒瀬 鷹真は夜の東京を潜入調査中だった。
人通りの少ない裏路地、倉庫街、廃ビル。あらゆる場所で不審者を探すが、目に見える痕跡はほとんどない。しかし、黒瀬の勘は正確だ。
「……微妙な違和感。誰かがここを通った」
わずかに乱れた窓枠、足跡に残る泥の濃淡。普通の犯行では残さない微細な痕跡に、黒瀬は気づく。
夜明け前、三人は部屋で合流した。神城 蓮が口を開く。
「氷室、何か手掛かりは?」
氷室は画面を指さしながら説明する。
「アクセス履歴と現場情報を突き合わせると、動きが完全に一致している箇所がある。内部者しか知り得ない情報だ」
黒瀬が低く唸る。
「奴は俺たちの次の動きを知っている。潜入も監視も、全て読まれている」
神城は資料を握りしめ、深く息をつく。
「ならば、こちらから罠を仕掛ける。小さな動きで反応を見極めるんだ」
三人の目に、冷たい決意が宿る。
内部の敵に対する警戒と、仲間を守る責任。街の静けさに潜む“影”を追うため、ゼロディヴィジョンは再び夜の闇に立ち向かう。
雨は上がったが、東京の街には不穏な空気が漂っていた。
誰が味方で、誰が裏切り者なのか――疑惑の網は、着実に神城たちを包み込もうとしていた。