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3 接触
ゼロディヴィジョンの捜査室。
神城 蓮は、机の上に広げられた事件資料の束を指でなぞりながら、何度も確認を繰り返していた。
「奴が動いた……」
低い声で呟く。机の上には、昨夜の潜入調査で黒瀬が拾った、不自然に置かれたメモの切れ端があった。文字は極めて普通だが、内容は誰もが予期しない情報――まるでチームの次の行動を試すかのようだった。
「……確実に、俺たちの行動を読まれている」
氷室 悠真が冷静に分析する。画面には、監視カメラ映像と通信ログの再検証結果が映し出され、内通者の痕跡を示唆する小さな異常が浮かび上がっていた。
黒瀬 鷹真は黙って拳を握り、深く息をつく。
「……向こうからの挑発だ。無視できない」
その沈黙の力に、二人は自然と頷く。言葉よりも行動で示す黒瀬の感覚は、チームに冷静さを与える。
神城は立ち上がり、決意を固める。
「ここで反応すれば、奴の正体を炙り出せる。だが、慎重に……一歩でも間違えば、全員が標的になる」
その時、暗号化された通信が一通届く。送信者は不明、内容は短く、こう書かれていた:
「準備は整った。次の一手を見せよ」
三人の間に緊張が走る。
「……直接的な接触だ。奴は俺たちに手を出す前に、心理戦を仕掛けてきた」
氷室が眉間に皺を寄せ、神城の目を見る。
「誰か信用できるか? それを見極めなければならない」
黒瀬は静かに頷く。
「……俺たち三人で突破するしかない」
チームは互いの視線で意思を確認した。
内通者はすぐそばにいる――だが、ゼロディヴィジョンもまた、冷静に、その動きを見極める準備を整えていた。
東京の夜は依然として静かだ。しかし、その沈黙の裏で、密かに張り巡らされた罠と心理戦が、チームを試そうとしていた。