テラーノベル
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言葉は僕にとって波のようだ。天気や気温、風向きによって波は穏やかに時には激しく変化する。
そして、波が人にもたらす力もその日で変化してしまう。
見ているだけで慰められる日もあれば、恐怖を感じる日もある。
そんな風に、言葉も人も日によって姿を変える。
「東くん」
今日もまた、名を呼ばれる。
今日の彼の顔はぼやけて見えないが、笑っているようには見えない。陰湿なオーラを感じる。
…曇りと言ったところ。
「…おはよう」
「今日も、俺のそばにいてくれるでしょ?」
…おはようの後に言うことがそれか?
目の前に立つこいつは家族でもなんでもない、ただのクラスメイトで友達の一人だと認識していた。が、意識していないうちにいつのまにか目の前の人は僕に依存してしまったそうだ。奴はルーティンの握手だと言って、僕の手首を震えるほど力一杯握った。冷たい。なのに力は妙に強くて腹立たしい。
「何それ笑」
刺激しない程度に、でも僕がしたいようにできるよう含みを持って発言をし、ギャグへ昇華させる。
「俺は冗談抜きで言ってるから。」
「まあまあ、落ち着いて。」
まだ僕は君の名前もわからないのに。
「今日の移動教室一緒に行こう。着替えも二人で更衣室の隅でしよう。」
飲み込むわけにはいかない言葉を息を吐くように、無数に浴びせられる。
「君とは勿論仲良くなりたいんだけど、他の人とも話したいことがあるんだよね。それはできない」
どうにかしろ、とでも言いたげに周りの人はただ気まずそうに僕を見つめるだけ。
僕にとっては波のように思える言葉は、きっと目の前のこいつにとっては考えなければ考えなくてもいい空気のような存在なのだろう。
「…なんで」
「理由を説明したところで、僕が思うことと君が思うことは違うから、君が納得し切れるわけがない。わかったら離れてほしい。」
面倒くさくなって頭に浮かんだそれっぽいことを言った。
「…っ、は、ははは…」
非力とまではいかないが僕はあまり力が強い方じゃない。変な汗が彼の手から伝ってくる。その感触にも耐えられない。
「やっぱり君は語彙が豊かだ。惚れ惚れする。もっと君を知りたいんだ。お願いだよ、そばにいさせて。君の仕草の一つ一つに興奮するようになった。俺は…俺は、!君に、壊されたんだよ」
口を開く音がくちゃっと鳴って、鼻息の荒い音が耳に近づく。獣のように大きい手が、僕の腕に伸びてくる。覆い隠すようにつかまれて、堪能するように握られた。気持ち悪さから嫌にぴくりと心臓が跳ねる。振り解こうとしても巨漢な奴の手は振り解けず、息が苦しくなって視界が歪んだ。
ガララララ…
突如、場違いに扉が開けられる。
「おはようござ……って、なにこれ…?」
他校の制服で堂々とにこやかな表情をした男が教室に入ってきた。
「ちょ…!その子の腕、赤くなってるじゃん!?一旦離してやって…?うーん、何があったのかはよくわかんないけどさ。」
手を繋ぎにくいからと捲られて露わになっていた自分の肌は、気がつけば鞭で撃たれたかのように赤くなっていた。
「い、っ、、いや、お前に関係ないし。てか、今まで誰も止めなかったんだから良いじゃん。」
…………は?何言ってんだ。
「え?…ああ、周りの反応気にしてたんだ?笑わかってんじゃん。自分で離せるよねぇ。僕が離してあげればいいの?」
接着剤でもついちゃった?なんてさらに煽りながらその男は近づいてくる。
その声だけ、やけに楽しそうだった。
「っ、…こ、このッッ、!!」
殴り掛かろうと厄介な男は近づいてくる。太い腕をブンブンと振るった。
「…無茶はやめなって。」
さっと避け、他校の人は僕の方へ軽やかな足取りで近づいてきた。
その拍子に厄介な奴は自分の奮った腕に引っ張られて派手に転んだ。
「っは、ちょ…?、ん!?」
ぎゅっ
肩に手を置かれたかと思ったら、今度は腰に手を回して引き寄せられた。
「怖かったでしょ。」
恋愛の物語があるなら確実にこいつは主人公だろう、なんて野郎の僕が思ってしまったくらい、爽やかに彼は言った。
抱き寄せられたことに困惑しているのかなんなのか、僕の心臓はバクバクと音を立てている。
「え……?、あ、うん…ありがとう…?」
申し訳なさと緊張で声が震え、うまく言葉が出なかった。
「いーよいーよ!あ、ねぇ!君の名前は?」
「…僕は、東言」
「ええっ、待って…僕東問って名前なんだけど…!?」
「え、苗字同じ…?」
「下の名前もなんか似てない!?」
「…ほぼ双子みたいだね」
自分でも驚くほど、しっくりきた。
ー
双子みたい、なんて話をしたけれど、問は僕とはだいぶ真逆の性格をしている。
「えー!それ本当?いやいや、僕はさ…」
問はあっという間に人気者になって、今日も自分の机に人を招いては楽しそうに話をしていて…少し鼻にかかった穏やかな声の後には必ず多くの笑い声が聞こえてくる。
僕はといえば特に話したいこともないし…立って話をするのはどうにも気が削れるから10分休みは大体単語帳か小説を読んで静かに過ごしているのだ。
…10分休み、は。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴った瞬間、皆が脱力し、ペンを置く音が聞こえ…挨拶をすれば、真っ先に僕の方へと向かう足音が聞こえてくる。
「ごーんちゃんっ!お昼だよ!屋上行こうよ!」
ー
屋上に出ると、風が強く吹き付けていた。昼間なのに、どこか冷たい。
「ほら、ここ座って!」
そう言って、当然かの如く自分のすぐ横のレンガを叩く。
「……うん、」
腰を下ろすと、やけに近い。
護らなければいけないものを見守っている、とでも言いたいかのように顔をのぞいて目を合わせようとしてくる。
昼食を一緒に食べるのは、苗字が似ているし、運命かもしれないから!とい うのが理由だと昨日言っていた。
だとしたら突拍子がなさすぎる気がしなくもない。グイグイ問はきてくれて、ありがたいと思うところもあるが距離感の近さに驚かされる日々だ。
「あ、言ちゃん口の端に海苔ついてる!」
「え?ま____」
自分で取ろうと手を伸ばしたが、その前に問の手が顎に添えられた。
「とってあげるね」
そう言って親指の腹で僕の唇の端を優しくなぞった。
「…ありがと、」
まあ、友達なら誰にもする…くらいか。って、何考えてんだ…!?
「て言うかさ、ずっと気になってたんだけど…いつも10分休みに話してる人たちとは昼ごはん食べないの?僕は問と話すこの時間はもちろん楽しいと思ってる。けど…10分休み、問もみんなもすごい楽しそうじゃん。」
かた、と箸を置く音が響いた。
「…それは、僕といるのが嫌なんじゃなくって心配してくれてるって、こと?」
目を合わせ向き合って発した言葉、と言うわけではない。きっと問にとってはなんとなく言った一言のつもりだった。が、僕にはなんだか熱をもたない冷たい一言に聞こえた。
「あ、うん…そう。僕なんかといるのはつまんな__」
「つまんなく…ないから。つまんなくない。」
「みんなより、言ちゃんがいいの。」
その一言が僕の脳に甘く響く。
風の音も今の僕には聞こえない。
「………そっ、か…」
うまく返事をしたつもりなのに、声が少し掠れる。
「うん、それにね」
問は当たり前みたいに続けて、
「自然体で、無理してない言ちゃんをみれるのがなんか…幸せでさ」
「…………え、」
ー
初めまして、テラーは初心者、pixivはまあまあ続けている者です。誤字脱字は温かい目で見ていただきたいです🙃💦
飽きたらすぐやめちゃうかもですがよろしくお願いします😞‼️
感想待ってます‼️
コメント
1件
本当に初心者ですいません😞