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匿名T
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今回の長編もありがとうございます! ぼんさん、、、お願いだから目を覚まして?、ドズルさんの言葉と共に胸が締め付けられました。 続きがきになってたまりません。 続き、とても楽しみです。 p.s.amnesia(アムネジア)は、英語で「記憶喪失」や「健忘(症)」を意味する名詞だと調べて出てきました。ぼんさんとドズさんの今回の話の続きが見えてきて、あわあわしてます 長文失礼しました。
🦍(独身)↔🍆
御本人様とは関係しません。
あくまでもフィクションです。
ご了承下さい。
今回は🦍🍆さんのダブル視点となります。
(🍆さん視点)
ここは…昔の実家だ…。
何故か…幼い俺が涙を流している…。
そして、真っ暗な記憶の底から、いつも同じ声が響いてくる…。
「いい?〇〇。大切な人を、しっかり守ってあげなさい…ね」
頬に触れる手の平は、驚くほど熱くて…少しだけ震えていた。
視界は涙でぐしゃぐしゃに歪んでて、母親の顔はよく見えない…。
ただ、母親の大きな瞳から、大粒の涙がぼろぼろと溢れ落ちて、俺の頬を濡らす感覚だけが酷くリアルだった。
「う、うあぁん……っ!」
幼い俺は、理由も分からずに声を上げて泣いていた。
何が怖いのか、どうして母親が泣いているのか、幼い頭では何も理解できなかった。
ただ、胸が引き裂かれそうなほどの喪失感と、目の前の大切な人がどこかへ消えてしまいそうな恐怖だけが、小さな身体を支配していた。
母親は、泣きじゃくる俺の肩を強く抱きしめる。
その力が痛いくらいで、彼女の必死さが痛烈に伝わってきた。
「泣かないで。あなたならできるわ。どんなに辛くても……その手で、守り抜くのよ」
耳元で囁かれるその言葉は、呪文のようでもあり、祈りのようでもあった。
母親の髪から漂う、どこか懐かしい甘い香りが鼻腔をくすぐる。
激しい耳鳴りがして、母親の身体が、周囲の景色ごと白い光の中に溶けていく。
「待って、お母さん!行かないで!」
伸ばした小さな手は、虚しく空をきった…。
質感の残る涙の温もりと、激しい心臓の鼓動…。
俺は、自分の荒い呼吸の音で目を覚ました。
カーテンの隙間から差し込む陽の光が、見慣れた天井を照らしている。
額に張り付いた汗を拭いながら、ゆっくりと身体を起こした。
……また…あの夢だ。
……幼い頃の、あの記憶。
「……大切な人、か…」
ぽつりと呟いた声は、静かな部屋に寂しく響いた。
夢の中で繰り返す、守るべき「大切な人」…
今の俺で大切な人はメンバーやスタッフ、そして仲間だが…その中でも特に大切な人は1人しかいない…。
掌に残るあの熱さだけは、今も俺の胸の奥で、消えない火種のように燻り続けている。
その日は、ドズルさんと俺でイベントの下見で外に出ていた。
夕方まで下見とイベントスタッフと話をしており、 終わった頃には雨がひどく強く降っていた。
駅は帰宅ラッシュという事もあって、人でごった返している。
傘を片手に持つ人…
濡れた靴を気にしながら歩く人…
傘が無いので諦めて濡れている人…
いろんな人々が駅に集う。
階段の足元には、雨水が薄く広がっていた。
「ぼんさん、足元気をつけて下さい。滑りやすいから…」
隣を歩くドズルさんが、いつもの優しい声でそう言った。
「分かってますよ。ドズさんこそ、スマホばっか見てたら危ないですよ」
「そんなに見てませんよ。営業部からの報告を確認してただけですから」
「はいはいw」
俺は笑いながら、彼の肩を軽く小突いた。
いつもと変わらない、何気ない会話。
この時間が、この先もずっと続いていくものだと疑いもしなかった。
そんな時……
「……あっ!」
前を歩いていた人がいきなり立ち止まった。
それを避けようとしたドズルさんの足が、濡れた階段の端を踏み外す…。
「うわっ……!」
ドズルさんの身体が大きく傾いた。
手すりを掴もうと伸ばした手は、大きく空を切る。
その瞬間、俺の頭から何もかもが消えた。
……危ない! ドズルさんが落ちる!!
「ドズさんっ!!」
俺は咄嗟に彼の腕を掴み、自分の身体をドズルさんの前へ滑り込ませた。
「えっ!?」
驚愕に見開かれた貴方の瞳が、目の前にあった。
次の瞬間、俺達の身体は階段を転がり落ちた。
『ドンッーー!』
鈍い衝撃…。
肩が打ちつけられ、背中に激痛が走る…。
それでも俺は、彼を抱きしめる腕を緩めなかった。
……どうか、ドズルさんだけは…。
……どうか、無事でいて…。
そして……
『ゴッ』と後頭部に、硬いものがぶつかる感覚があった。
……あれ?視界が激しく揺れるな…。
……なんか耳鳴りもする…。
周囲の悲鳴も、誰かが駆け寄ってくる足音も、まるで水の底から聞こえてくるようだった。
「……ぼん……さん…?」
腕の中から、震える声が聞こえた。
……ああ、よかった。
……ドズさんが無事で…。
そう思った途端、身体から力が抜けた。
「……よかっ……た……」
伝えたかった言葉は、それだけだった。
「ぼんさん?!ねぇ、ぼんさん!返事をしてくれ!」
ドズルさんの声が、遠ざかっていく…。
貴方の暖かい手が、俺の頬に触れる…。
「お願いだ…、ぼんさん!目を開けて!」
何かを必死に叫んでいるようだった。
けれど、もう声が聞こえない…。
目の前が、ゆっくりと暗くなっていく…。
最後に見えたのは、泣きそうな顔で俺を見つめる、大切な人の姿だった。
(🦍さん視点)
「ぼんさんっ!!」
叫んだ声は、雨音と周囲の悲鳴にかき消された。
目の前で、ぼんさんの身体が大きく傾いた。
俺が足を滑らせたその瞬間、 ぼんさんは迷うことなく俺の腕を掴み、自分の身体を盾にするように覆いかぶさってきた。
「……っ、ぼんさん!?」
何が起きたのか、理解する暇もなかった。
身体が宙に浮くような感覚…
階段を転がり落ちる衝撃…
そして、俺を抱きしめる腕の力…
ぼんさんは、最後まで俺を離さなかった。
まるで、絶対に守り抜くと決めていたかのように。
『ドンッ――! 』
鈍い音が響いた。
その直後、ぼんさんの身体から、ふっと力が抜けた。
「……え?」
一瞬、時間が止まった気がした。
目の前にいるのは、いつもと変わらないぼんさんのはずだった。
……ねぇ、ぼんさん!いつもみたいに笑って!
……ほら…、いつもみたいに「ドズさん、大丈夫か?」って俺を気遣って下さいよ!
「……ぼん……さん…?」
呼びかけても、返事がない。
雨に濡れた髪が額に張りついている。
頬に触れると、ひどく冷たかった。
「……ぼんさん、ねぇ…」
肩を揺すりかけて、慌てて手を止めた。
……頭を打っている。
そう気づいた瞬間、全身から血の気が引いた。
「お願いだ、ぼんさん!目を…目を開けて!」
声が震えた…
俺は何度も何度も名前を呼んでみたが、ぼんさんの目は開かなかった…。
さっきまで、確かにそこにあった温もりが…今は何故か感じられない…。
俺の隣で、くだらない話をして笑っていた人が…俺の腕の中で、ぴくりとも動かない…。
「ねぇ……嘘、でしょ…?」
喉の奥が引き攣った。
……嫌だ! そんなの、嫌だ!
頭の中で、同じ言葉ばかりが繰り返される。
……俺のせいだ。
俺が足を滑らせたから…
俺が、ちゃんと周りを見ていなかったから…
俺が、ぼんさんを巻き込んだ…
ぼんさんは、そんな俺を助けようとしてくれたんだ。
自分の事など考えずに…、俺を守る為だけに、身体を投げ出した。
その結果が、これなのか…。
「……っ、なんで……」
声にならない声が漏れた。
「なんで…、なんで僕なんかを庇ったんですか!」
ぼんさんを責めたい訳じゃない…。
ただ…、 どうして自分の身体を犠牲にしてまで、俺を守ろうとしたのか。
……もし、このまま目を覚まさなかったら?
最悪な考えが頭をよぎった瞬間、息ができなく位胸が痛くなった。
「……嫌だ…」
俺はぼんさんの手を握った。
何度も、何度も握り直した。
お願いだから、握り返してほしい。
いつもみたいに「ドズさん、手ぇ冷たっ!」って笑ってほしい…。
それだけでいい…。
いつもみたいに、俺の名前を呼んでほしい…。
「……ぼんさん……お願いだから……」
雨のせいなのか…涙のせいなのか…分からない位、視界が滲んだ。
周囲の人が救急車を呼んでくれている。
誰かが「動かさないで!」と叫んでいた。
医療知識はあるのに…何故かぼんさんの事になると…行動に起こせずにいた…。
今は…ぼんさんの手を離せなかった。
いや、離したくなかった。
手を離したら、本当にどこか遠くへ行ってしまうような気がしたから…。
「……ぼんさん、聞こえてますか……?」
返事は…ない。
「僕、ここにいますから…。ずっと、貴方の側にいますから…ね。ぼんさん…」
何故か言葉を止めてしまうと、ぼんさんが遠くへ行ってしまいそうで…恐怖でしかなかった。
……声をかけ続けていれば…
……名前を呼び続けていれば…
……もしかしたら、ぼんさんが戻ってきてくれるんじゃないか…
そんな、根拠のない願いに縋るしかなかった。
やがて、遠くから救急車のサイレンが聞こえてきた。
そこで、ようやく少しだけ息を吸うことができたと思う…。
……助かるかもしれない
……まだ、間に合うかもしれない
そう思ったのに…、 救急隊員がぼんさんの状態を確認し、慎重に処置を始めたとき、俺の手はひどく震えていた。
「ご家族かお知り合いの方ですか?」
と救急隊に尋ねられて、
「……同じ会社の者です…」
とそれだけ答えるのが精いっぱいで、言葉に詰まった。
救急隊員の指示に従い、ぼんさんから少し離れる。
処置が済み、担架に乗せられたぼんさんの顔は、驚くほど静かだった。
いつもなら、俺が心配しすぎると呆れた顔で笑うのに…。
今は、その表情さえ見せてくれない。
「……ぼんさん」
救急車に乗せられる直前、俺はもう一度名前を呼んだ。
「……お願いですから、戻ってきてください」
しかし……返事はなかった。
救急隊の方が「一緒に来ていただけますか?」と尋ねられ、頷き、一緒に救急車へ乗った。
そして、救急車の扉が閉まる。
その音が、やけに大きく響いた…。
俺は救急車の中で、ぼんさんの手を握り続けた。
何もできない自分が…情けなかった…。
俺を守るために傷ついた人を、俺はただ見ている事しかできなくて…、それが余計に苦しくて…悔しくて…どうしようもなかった。