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車のドアを開けた加藤が、重い顔で言った。
「鍵は……開いてる。でも、誰か中に――」
次の瞬間、井坂浩志が中を覗き込んだ。
暗い車内の後部座席――
腐敗した手が、がばっと飛び出し、
「うわっ!」という浩志の叫び声。
ゾンビが一気に浩志の腕に食らいついた。
「やめろ!浩志!」
あわてて大人たちが引き離す間にも、シートは血で赤く染まる。
村田が素早く金属棒でゾンビの頭を打ち砕き、車内が静寂に包まれる。
浩志は腕を押さえて、青ざめた顔でしゃがみ込む。
「……やべぇ、俺、噛まれた……」
全員が言葉を失う。
「どうする、置いていくのか?」
「でも、浩志はまだ……」
議論が交錯する中、珠莉は璃都の肩をそっと抱き寄せた。
村田が短く言う。
「浩志、今は連れていく。おまえも覚悟しておけ。もし息の根が止まったら……その時は、俺が頭を刺す」
浩志はがくりとうなだれた。
沈黙の中、みんなで浩志を支え、また歩き出すことになった。