テラーノベル
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その日の夜。
リビングでは珍しく静かな時間が流れていた。
こさめは自室。
みことは課題。
すちは洗い物。
らんはソファに座って考え事をしていた。
🍵「らん兄?」
すちが声を掛ける。
🌸「んー」
🍵「何考えてるの?」
らんは少し黙った。
そして。
🌸「なつくん」
と呟いた。
すちは手を止める。
🍵「なつくん?」
🌸「うん」
らんは天井を見上げた。
🌸「そろそろ話した方がいいのかなって」
すちの表情が少しだけ変わった。
何の話か分かったからだ。
🍵「……昔のこと?」
🌸「うん」
静かな返事だった。
🍵「まだ早くない?」
すちが聞く。
🌸「かもしれない」
らんも否定しない。
でも。
🌸「もしあいつが本当にこさめのこと大事に思うなら」
そこで言葉を切る。
🌸「知っといてほしい気もする」
すちは何も言わなかった。
その気持ちは分かる。
とても。
🌸「でも」
らんは少し笑った。
🌸「正直、話したくない」
🍵「らん兄」
🌸「だって思い出したくないし」
珍しく弱音だった。
🌸「こさめだって忘れようとしてるのに」
リビングが静かになる。
すちはゆっくり頷いた。
🍵「うん」
#いるなつ
3e1
718
# 梅雨の妖精
209
それは全員同じだった。
忘れられない。
でも思い出したくもない。
そんな過去。
翌日。
放課後。
なつが帰ろうとするとスマホが震えた。
送信者はらん。
🌸『少し時間ある?』
短い文章。
いつもなら警戒する。
でも。
今回は少し違った。
なぜだろう。
メッセージの雰囲気がいつもと違う気がした。
🍍『あります』
返信する。
すぐに返ってきた。
🌸『駅前の公園で』
なんだろう。
なつは少し首を傾げながら向かった。
公園に着くと。
らんはベンチに座っていた。
珍しくスマホを見ていない。
🍍「こんにちは」
🌸「やあ」
らんが笑う。
でも。
どこか疲れて見えた。
🍍「話って?」
なつが聞く。
すると。
らんはしばらく黙った。
なかなか話し出さない。
いつものらんなら考えられない。
🌸「……なつくん」
🍍「はい」
🌸「こさめのこと好き?」
🍍「またそれ?」
思わずツッコむ。
らんは少し笑った。
🌸「ごめん」
本当に少しだけ。
🌸「でも今回はそれが大事だから」
なつは眉をひそめる。
なんだか嫌な予感がした。
🍍「別に付き合ってるわけじゃないし」
🌸「うん」
🍍「でも大事な友達だよ」
その答えを聞いて。
らんは静かに頷いた。
🌸「そっか」
そして。
しばらく黙った後。
ぽつりと言った。
🌸「じゃあ聞いてほしい話がある」
風が吹く。
公園の木々が揺れる。
🌸「こさめが小さい頃ね」
らんの声は静かだった。
🌸「よく泣いてたんだ」
なつは何も言わず聞く。
🌸「でも絶対に隠してた」
昨日すちが話していたことと同じだ。
🌸「兄ちゃんたちに心配かけたくないって」
らんは苦笑した。
🌸「小さいくせに」
少しだけ笑う。
でも。
その笑顔はすぐ消えた。
🌸「昔のお父さんがいた頃の話なんだけど」
なつの背筋が伸びる。
初めて。
誰かがその話題を口にした。
🌸「正直、最低な人だった」
らんは真っ直ぐ前を見たまま言う。
🌸「母さんも殴られた」
なつは息を呑む。
🌸「俺たちも殴られた」
静かな声だった。
怒りも。
悲しみも。
全部飲み込んだみたいな声。
🌸「特に俺は」
らんが少し笑う。
優しい笑みだった。
🌸「いつも前に立ってた」
なつは思い出す。
アルバムの写真。
🌸「弟達を庇ってたんだよ」
🌸「弟達が傷つけられるのが嫌だったから」
らんの声が少し震えた。
🌸「俺だって子どもだったのに」
しばらく沈黙が続く。
公園には子どもたちの遊ぶ声が遠くから聞こえていた。
🌸「だからかな」
らんが言う。
🌸「今でも弟たちに何かあるとつい過敏になる」
なつはゆっくり頷いた。
全部ではない。
でも。
少し分かった気がした。
なぜ兄たちがあそこまで過保護なのか。
なぜすちがあんな顔をしていたのか。
🍍「……こさめは知ってるの?」
らんは苦笑する。
🌸「忘れてないよ」
小さく答えた。
🍍「そっか‥」
そして。
二人とも気付いていない。
その頃。
偶然通りかかったみことが。
遠くから二人を見つけていたことに。
👑「……またらん兄だ」
みことはため息を吐いた。
👑「今度は何話してるんだろ」
そして少し考えた後。
👑「まぁいっか」
と笑った。
そして家に帰った。
♡希望1125
なんの数字かわかるかなぁ〜
あ、全然達成しなくても書くよ
コメント
4件
黄彡🎂??
読み終わりました……この話、すごく重いけど、だからこそ胸に来るものがありました。らんが初めて「昔のお父さん」の話をなつに打ち明けたシーン、その静かで震えるような声が目に浮かんで、思わず息を止めてしまいました。みことが遠くから見つけて「まぁいっか」と流したのも、あの家庭ならではの距離感というか、それぞれの立ち位置が感じられて好きです。らんが「話したくない」と言いながらも踏み出した勇気、ちゃんとなつに届いた気がしますね。