かじりたいと言う願望を遂に叶えた冴子と 。
「(サメって言うより犬みたい…。)」
無邪気に甘噛みする冴子が愛らしいと思い始めた切島。最終日目前の送別会後、2人は抜け駆けして今に至る。
「歯、だいぶ生え揃ってきたな。」
「うん。あ、痛かった??」
「痛くないぜ。感触で分かるんだ。」
「そっか。」
腕から口を離した冴子は切島の腕を拭く。
「明日帰っちゃうんだね。」
「うん。」
「どうだった??」
「めっちゃ勉強になった!!海上で訓練とか設備も雄英には無いものがあって、とにかく新鮮だった!!」
「よかった。皆もきっと、鋭児郎君のこと最高の仲間だと思ってるよ。帰っちゃったら鋭児郎君ロスになるよ絶対。」
「嬉しい反面複雑な気持ちになるな、それ。実は俺も、もう少し皆と居たいって思っちゃってる。」
「1週間あっという間だったもんね。最初はこうなるとは思ってもみなかったよ。 」
「だな。クールに見えた鮫島が今や俺の腕かじってることだし。」
「かじりたいって思ってたのは初日からです…!!」
「たしかうわごとで言ってたよな。」
「やっぱ聞こえてたんだ!!」
恥ずかしい余り、冴子は顔を覆う。
「鋭児郎君こそ、何でかじらせてくれたの??」
「それは…。」
冴子は悪戯っぽい目をしてこちらを見ているが、それが色っぽさを醸し出してるように見えてしまい、意識しないよう目を伏せる。やがて冴子は笑って。
「常に全力投球の熱血漢は、こういうのは奥手か??」
「すぐに答えなんか出せねぇよ。」
「なるほど…。奥手ではなさそうね。」
「最後なんて言った??」
「何も??」
冴子はぐっと切島に顔を近付ける。
「次はどこかじってやろうかなぁ。」
「望む場所ならどこでも良いぞ。」
負けじと切島は冴子の唇を指でなぞる。冴子はニカッと歯を見せて。
「その楽しみは取っとく。そろそろ戻ろっか。」
「だな。」
顔を見合ってあどけなく笑った。
最終日は皆でお見送り。切島を乗せた電車を見えなくなるまで見送った。
しばらくして。
「ウチも交換留学生を受け入れることにした。」
朝のHRの開口一番、相澤先生はそういって外で待っている人に声をかけた。入ってくるその人に、切島は息を飲む。
「鮫島冴子、個性サメ。サメっぽいことはほぼできます!!」
早速、峰田や上鳴が反応する声が。冴子は辺りを見回して。
「鋭児郎君!!かじりたいから、来ちゃった!!」
と言う表情が恍惚としていたので、ほぼ全員の視線が切島に集まる。
「は!?ちょっ、見るなー!!」
「ちなみに彼女は学年首席だ。」
その場を鎮めるため、先生は話を逸らす。
「そうなのか!?」
落ち着きを取り戻した切島は反応する。
「うん。」
「じゃあ席はあいにく、切島とは離れるが…。」
「お構い無くです、相澤先生。」
「座ったところで、HR続けるぞ。午後はUSJで水難救助メインの訓練をする。鮫島の実力が見たいからな。」
その言葉に闘争心を燃やす爆豪と気を引き締める緑谷。そのまま授業に入り、休み時間は冴子と切島の話で持ちきりになった。
いざ午後の訓練にて。
「コスチュームえっろ…!!」
「あんま見るなバカ!!」
峰田の視界をここぞと切島は遮る。
訓練開始早々、冴子の潜水力の高さ泳力の高さに度肝を抜かれることとなった。
放課後。サプライズの準備の間、冴子のお守りを任された切島。
「また会うとは、思ってもみなかったぜ。」
「はっはー、とんだサプライズでしょ。直談判したんだ、うちの先生に。どうしても行きたいって。」
「俺をかじりにか??攻めてくるなー。」
「どうしても忘れられなくて。匂いも声も、肌の感触も…。」
切島の胸が高鳴る。だって自分もあの感触が忘れられなかったから…。
「っと!?」
スマホが振動し、慌てて取り出す切島。
「そろそろ戻ろう、皆待ってる。」
「はーい。」
冴子は切島の腕に抱きつく。
「1週間よろしくね!!」
「おう!!」
かくして2人の願いは成就することになる。
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