注意事項
・knkz
kn→「」kz→『』
配信が終わったあと、部屋に静寂が戻る。
コメントのざわめきも、画面越しの熱気も、もうない。
叶は椅子に身を沈めながら、隣の葛葉をちらりと見た。
「……お疲れさま。葛葉、めっちゃ頑張ってたじゃん」
『……うっせ。あんなの、俺のキャラじゃねーし』
「……でも、ちゃんと“俺から先に好きになった”って言ったの、嬉しかったよ」
叶がそう言って微笑むと、葛葉は思わず目を逸らす。
でも、頬がほんのり赤くなってるのは隠しきれない。
『……お前さ、ずるいよ。ああやって、どこででもそうやって、俺の心臓撃ち抜いてくんだもん……』
叶はその反応に嬉しそうに目を細める。
「葛葉。バレた今だからこそ、ちゃんと“僕たち”でいようよ。配信外でも、ちゃんとさ」
『……え、なに急に』
「……“僕の彼氏”、ちゃんと自覚して?」
『っ……はぁ!? う、うるせぇ!俺だって……ちゃんと、そういうつもりだし……!』
叶がくすっと笑って、そっと葛葉の手を取る。
すこし震えている指先を、あたたかく包みこむように。
「なら、今夜は……僕のとこ、来る?」
『……うん。行く。ちゃんと、“お前の彼氏”としてな』
葛葉が叶の家に行くのは――思ったより、緊張した。
ゲームなら何百回も“泊まり”なんてしてるのに。
今回は全然違う。
『……なあ、ほんとに俺でいいの?』
「……なにそれ。もう付き合ってるんだよ、くーちゃん」
『や、やめろその呼び方!マジで、配信中のノリで言ってんのかと思ったのに、続けんのかよ……!』
叶は笑って、玄関の鍵を閉めると、すっと近づいた。
「……ねぇ、葛葉。“一緒に寝る”って、初めてなんだよね。僕も、ちょっと緊張してる」
『……叶が?』
「うん。だって、くーちゃんってさ。こう見えて、寝相とか良さそうだし、無意識に甘えてきたりしそうだし……想像しちゃってるんだよね」
『は!?お、お前の妄想じゃんそれ!』
「じゃあ、ほんとかどうか確かめてみよ?」
叶の部屋のベッドは、ひとり用には広いが、ふたりで寝るには狭い。
だけど、ぴったりとくっついていられるにはちょうどいい距離感だった。
『……なんか、どっち向いて寝たらいいか分かんねぇな……』
「じゃあ、僕のほう向いて。……顔、見せて」
『や、やだ、恥ずい。無理』
「……くーちゃん」
『うっ……!わ、分かった、向くよ……!』
ベッドの中、至近距離で見つめ合う。
息がかかる距離。視線をそらせば頬が触れそうで。
『……なんでこんなドキドキしてんだ、俺……』
「僕は、ずっと前からこんな気持ちだったよ。葛葉のこと、好きで、触れたくて、抱きしめたくて」
叶の手が、そっと葛葉の頬に触れた。
ゆっくり撫でるように――まるで、大切な宝物に触れるみたいに。
『……俺のほうが、好きなんじゃねーかな……』
「じゃあ、ちゃんと僕のほう、見て」
葛葉がぎこちなく視線を戻すと、叶がそっと口づけた。
やわらかくて、あたたかくて、すこし震えてて。
でも、確かにふたりは、今ここで“恋人”だった。
『……なあ、叶。今日だけ、ぎゅー、して寝ていい?』
「今日“だけ”なんだ?」
『う……ずっと、してもいいけど……!』
「ふふ、じゃあ甘えてよ。僕のこと、独り占めしていいから」
初めて一緒に眠る夜は、
思ったよりもあたたかくて、恥ずかしくて、でも――幸せだった。
コメント
2件
まーーじで更新される度叫んでます主さんの作品めちゃくちゃもうまじで好きです(語彙力)
てぇてぇだぁ~ ⇐(語彙力吹っ飛んだ人)