この世界で 100% 正しいものは定義や定理以外には存在しない。
━━━━何故か?
誰かにとっての「正義」は誰かにとっての「悪」だからだ。犯罪者だって、何かを正義として戦い、世間の正義から悪だと見なされて捕まっているだけだ。実に狂っている。私はいつも考えるのだ。
「目撃情報によれば、犯人はここにいる」
「ついに突き止めたぞ、Kokabiel」
「大人しく警察に捕まれ」
絶体絶命である。どう足掻いても世間の正義に負ける状況だ。私は、ただ正しいことをしているだけなのに。
世の中には、国民が選んだ人達で構成される国会議員が存在する。政治の知識があり、世論を伝えていく必要がある人達だ。我々は託すために人を信頼し、投票をする。
しかし、現在は議会で居眠りする議員、口だけで行動しない議員など、信頼に値しない行動をとる議員が少なくないのだ。そのような人達は、生きる価値は無い。大勢の人を裏切り、堂々と生きているのはおかしい。そう思わないか?
私はKokabielと名乗り、そうした政治家達に制裁を与えているだけである。勿論、犯罪だとは分かっているが、何もおかしなことはしていないのだ。当然のことを疑念を抱く人達に変わり、行動に移しているだけである。
最近は元首相が銃撃されただのという事件が起き、世間がずいぶんと騒がしい。私はもっと制裁すべき人は他にいたのにもったいないと考えた。悪魔には悪魔なりの考え方があるのだ。
「観念しろ、お前は既に包囲されている」
随分と偉そうな人達だ。確かにこの家の周りは既にタクシーに包囲されている。しかし、私はまだ諦めない。確かに仲間は奴等に捕まっていた。しかし、奴等はまだ知らない。
奴等が包囲しているはずのものに、私は居ないことを。裏切り者はどこにでも存在し、油断ならない存在であることを。
無論、犯罪組織に加わりながらもスパイとして働くにはリスクがある。そのリスクを認めた上で参加してくれたのだ。私は今偽のタクシーに捕まえられた振りをしている。さて、そろそろ時間である。私は奥歯に仕込んだカプセルを潰し、心の中で呟いた。
「着きましたよ、Kokabielさん」
「最後まで気付きませんでしたね、裏切られていたのは、Kokabielさん、あなたの方ですよ」
目の前には警察署という文字が見えた。そんなことは既に分かっていたのだ。私は、絶望に目を閉じて、毒を噛み締めた。
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