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「レナード様」


ヴィオラは、差し出されたテオドールの手を取る事なく、立ち上がると横を擦り抜けて行った。流石のテオドールも、驚いた顔をする。


ヴィオラは、レナードの前まで歩いて行くと、口を開いた。


「レナード様、私、貴方が大嫌いです」


「……」



「でも、大好きです」


矛盾していると、分かっている。


「レナード様。私なら、大丈夫です。私……一生歩けないって、思っていました。でも、歩けるようになりました。ダンスも、マナーも、出来る様になりました。どれも1人で、出来た訳ではないですけど…………それでも、私には、貴方は必要ありません」


「ヴィオ、ラ……」


レナードは、ただ呆然としてヴィオラを見上げていた。

そしてヴィオラは、レナードに背を向けると、そのまま歩き出し、テオドールの横に並ぶと、振り返った。


「私、レナード様が思ってるより、強いんですよ?」


ヴィオラは、瞳に溜めた涙が溢れないように耐えながら、笑った。


「私、本当は凄いんです」











馬車に揺られて、どれくらい経っただろうか。ヴィオラは、ゆっくりと目を開けた。


どうやら、寝ていたようだ。隣を見ると、テオドールが座っている。彼もまた、寝ているようで、寝息が聞こえてきた。


『君が、望んでくれるなら……僕と一緒に来て欲しい』


あの後、テオドールからそう言われた。ヴィオラは、正直悩んだ。テオドールは、クラウゼヴィッツ国という大国の王子らしい。故に自分などが付いて行くなど、おこがましい気がした。


だが、この国に留まった所で、ヴィオラに帰る場所などはない。レナードには、あんな風に大口を叩いたが、実際は1人では何も出来ない無力な自分がいる。情けない……。


悩んだ結果、結局ヴィオラはテオドールの手を取った。



「座りっぱなしだから、お尻痛くなっちゃったかな」


「へ」


ヴィオラが、ぼうっと考え込んでいると、急にテオドールから話しかけられ、驚きの余り横に飛び退く。


「テオドール様、起きてらっしゃったんですか⁈」


「今、起きたんだよ」


テオドールは、少し意地悪そうに笑う。絶対嘘だ……。


「おいで」


少し低く優しい声色で、不意にそう言われた。

テオドールから手を差し出されるが、ヴィオラはどうしたら良いか分からずに、戸惑ってしまう。


「きゃっ」


いきなりテオドールに、ヒョイと持ち上げられたかと思ったら、膝の上に座らせられた。


「て、テオドール様?」


「これで、痛くないかな」


別にお尻が痛い訳では無かったが、ヴィオラは、テオドールからの好意を無下にも出来ないので、素直に頷いておく。


「は、はい」


何だか気恥ずかしくなりヴィオラは、頬を染め俯いた。その様子に、満足そうにテオドールは、笑う。


暫く無言のまま、2人は馬車に揺られていた。テオドールは、ヴィオラを後ろから確りと抱き締めると、肩に顎を乗せていた。近過ぎる……。








「……レナード様は、処刑されてしまうのでしょうか……」


不意に、ヴィオラが、独り言の様にそう呟いた。


『赦す事は、出来ません。でも、命を奪われたから、奪うのは違うと、思います……処刑されたからといって、罪は消えません……だから、レナード様を……殺さないで下さい……』


リュシドール国を出国する前に、国王にヴィオラが言った言葉だ。ヴィオラが、一体どんな気持ちで言ったのかは、テオドールには分からない。


「アレでも王太子だからね……どうかな。でも、リュシドール国王は、当事者である君の意見を、尊重してくれると、僕は思うよ」


ヴィオラは、その言葉に何も答えずに、ただ頷いた。







深窓の令嬢は、王太子殿下に持ち運ばれる

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