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かんな
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寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
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中庭に出る。元々、人が少ない場所だが、授業が始まりそうな時間だから、誰もいない。
「念のため、誰も来ない場所に行こう」
昼休憩中、小説を読み耽っていたベンチに向かう。
「ここなら、誰も来ないはず」
「どうして靴を履いていないんだ、イソトマ」
後ろから声を掛けられて、死ぬほどビックリした。
「うわぁ! ディルク、何でここにいるの?」
イソトマの質問には答えずに、ディルクが足元を見詰めた。
徐に手を伸ばすと、イソトマを抱き上げた。
「え? えぇ!」
ひたすら驚くイソトマを尻目に、ディルクは淡々としている。
「どうせ、濡れ衣でも着せられたんだろう」
「うっ……バレてる」
前世を思い出す前のイソトマも、今日のようなことは多かった。
その度に自分ではないと証明しようとするのだが、何故か裏目に出る。
だから、イソトマは弁解しなくなった。
(今回だって、見つけても結局、僕のせいにされそう)
隠した本人だから見付けられた、とか言われそうだ。
「リリーの靴がなくなっちゃったんだって。見付けても僕のせいにされるだろうけど、探さないとリリーがずっと裸足になっちゃうからね」
「まさか、自分の靴をリリーに貸したのか?」
「うん、そう。だって、靴がないと困るでしょ?」
ディルクが、イソトマを見詰めた。その視線が足に向く。
「自分は、困らないのか?」
「僕はいいの! 今は、ほら。ディルクが抱えてくれてるし」
「そうだな。抱えているうちに、さっさと探せ」
思えばこれまでも、ディルクはイソトマが濡れ衣を着せられるたび、助けてくれてた。
(護衛の仕事の一環なんだろうな。申し訳ないけど、心強い)
たった一人でも支えてくれる人がいるのは、気持ちが違う。
それがたとえ義務でも、仕事であっても。
(この世界のディルクは、イソトマにちょっと優しい。仕事熱心だ)
ゲームのディルクは攻略対象で、リリー以外に心を開かなかった。イソトマのことなんて、むしろ嫌っていた。
だから、イソトマにちょっと優しいディルクは、かなり不思議な感覚だ。
「今日はね、ちゃんと素材を取ってきたんだよ」
掌の上に、リリーの肩から採取した髪の毛を乗せる。
「珍しいな。いつも適当に済ませるのに。犯人探しか」
感心するディルクに、胸を張る。
「僕だって、成長するんだから。まぁ、見ていてよ」
杖を取り出し、魔力を籠める。
「リリーの靴が迷子なんだ。在処を教えて」
イソトマの魔力が髪の毛を飲み込む。光の玉が、掌から飛んで行った。
「ディルク、追いかけて」
「わかった」
走り出したディルクが、すぐに足を止めた。
「わわ!」
前のめりになったイソトマの体をディルクの手が支える。
「どうしたの?」
「そこの木だ」
「え?」
イソトマは、目の前の木に目を向けた。イソトマが投げた魔法の玉が、茂る葉の中で光っている。
「まさか、あの中に靴があるの?」
ディルクがイソトマを降ろした。
何も言わずに木に登ると、あっという間に靴を取ってきた。
その靴を、イソトマに差し出した。
「リリーの靴だ。リリーの気配の残滓が残ってる」
思ったよりずっと近くにあった。ちょっとびっくりだ。
(僕は昼休憩中、近くのベンチで小説を読んでいたのに。全然気が付かなかった)
好きなことに没頭すると、途端に周りが見えなくなる。
イソトマの悪い癖だ。
今後はもう少し注意力をつけようと思った。
「それにしても、うーん」
イソトマは靴を眺めながら、首を傾げた。
「どうした?」
「リリーの残滓以外、感じないなと思って」
「その靴からか?」
「うん。普通は隠した人の魔力の残滓が残るはずなんだけどなぁ」
靴を隠した時に犯人は必ず靴に触れる。その時、思念や魔力の残滓が残る。
だが、この靴からはリリーの気配しか感じない。
(考えられる可能性は……)
靴を見詰めていたイソトマは、一つ、頷いた。
自分でその靴を履いた。
「そのまま戻るのか?」
「うん、そうする」
「ならば、授業が終わったらまた来る」
去ろうとするディルクの袖を引いた。
「待ってよ、ディルク。探すの手伝ってくれたお礼に、ドリンクでも御馳走するよ」
「……は? イソトマが、俺に?」
化け物でも見るような目で凝視された。
「だって、来てくれたの、嬉しかったし……」
そこまで言って、気が付いた。
(そうだよね! イソトマがそんなこと、するわけないよね! ディルクの反応は普通!)
アタアタと慌てた挙句、イソトマはびしっとディルクを指さした。
「僕が飲みたいから! もう授業、始まってるし、終わるまで付き合って!」
精一杯、我儘っぽい言い方をしてみた。
イソトマを眺めていたディルクが、吹き出した。
「あぁ、付き合おう」
その笑みに、今度はイソトマが見惚れた。
(ディルクって淡々としていて、寡黙な感じで、表情とかあんまりないのに。笑顔の破壊力……! 推しの笑顔、最高か)
イソトマは、秘かに拳を握り締めた。
(ドリンク御馳走するって、言って良かった)
スチルばりの笑顔を拝めた今に感謝した。
「最近のイソトマは、あの頃みたいだな」
ディルクが、ぽそりと零した。
「え? 何? あの頃?」
「いや、何でもない」
ディルクに、ポンポンと頭を撫でられた。
最近のディルクは事あるごとにイソトマの頭を撫でる。
嫌ではないが、子供扱いされているようで、ちょっとだけ不服だ。
(そりゃ、ディルクに比べたら子供だけどさ)
十七歳のイソトマは、二十二歳のディルクからしたら子供に見えることだろう。
(前世の年齢なら、同い年なんだけどな)
そんなことを考えつつ、イソトマはディルクと共に学園内のカフェに向かった。
コメント
1件
第7話、めっちゃ良かったです…! ディルクがイソトマを抱き上げて「さっさと探せ」って淡々と言うのに、ちゃんと靴を探してくれるの、尊すぎました🥺 あとイソトマが「リリーの残滓しか感じない」って気付いたところ、伏線っぽくてドキドキしました…! ディルクの「あの頃みたいだな」も気になる…! ドリンク奢るって言ったイソトマ、可愛かったです🌙