テラーノベル
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授業が終わり、イソトマは教室に戻った。
リリーの靴を履いて戻ったイソトマの姿を見た生徒たちが、ざわついた。
騒然とする生徒を横目に、リリーに近付く。
「イソトマ様、本当に見付けてくださったのですね。でも、僕の靴……」
「ねぇ、リリー。この靴、僕にくれない?」
「え? それは、どういう……」
リリーが困惑の表情をしている。
「僕の靴と交換しよう」
リリーが、息を飲んだ。
周囲の生徒たちも、同じような表情をしている。
「僕が履いた靴なんて、もう履きたくないですか?」
リリーが靴を脱ごうとする。
イソトマは慌てて止めた。
「そうじゃないよ。僕が疑われて、騒ぎが大きくなっちゃったから。お詫び……になるか、わからないけど。履き心地が悪くないなら、そのままもらってよ」
「履き心地が悪いなんて、ありえません。けど、申し訳なくて」
「リリーが申し訳ないなんて、思う必要ないよ」
ニコリと笑いかけたら、怯えた顔をされた。
さすが、悪役令息の笑顔は違う意味で破壊力があるらしい。
「イソトマ、それでは自分が隠したと自白しているようなものだよ」
後ろからかかった声に、振り返った。
アスランズ王国第一王子ルシアン=アルヴェルトが立っていた。
眉を下げたルシアンは、怒るというより困ったような顔をしている。
(ゲームのルシアンは、婚約者がいながらリリーに惹かれる自分に罪悪感を持っていたっけ)
公の場では堂々と振舞っているが、普段は穏やかで大人しい人だ。
悪い言い方をするなら、気が小さい。弟のノアルのサポートで体裁を保っている部分は否めない。
「ルシアン、僕は誓ってリリーの靴を隠したりしてない。けれど、疑われる立場なのもわかってる。だから、言い訳はしないよ」
イソトマは胸に手を当て、小さく頭を下げた。
「だから、お詫びに靴を交換すると?」
「足りなければ、新調しよう。僕なりのリリーへのお詫びだよ」
ルシアンの視線が、リリーに向いた。
「あっ……有難く、この靴を頂戴いたします」
言い淀んだリリーの背中を、ルシアンが摩った。
(推しカプの生ツーショだぁ!)
はしゃぎそうになる気持ちを必死に抑える。
この瞬間を瞳に刻みつけておきたい。
リリーの不安そうな目に気が付いて、イソトマは咳払いした。
「僕もリリーの靴を大切に履くね。もらってくれて、ありがとう」
リリーとルシアンの表情は曇ったままだ。
それはそうだろうと思う。
かんな
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寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
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「さすが、イソトマ様。婚約者の余裕かしら」
「けど、目の前であんなにイチャつかれたら、ちょっとな」
「しっ、聞こえちゃうよ」
生徒たちの声が、この場の空気の総てを物語っている。
ルシアンの婚約者イソトマと恋人的立場のリリー、三人が居合わせているんだから、気まずくないはずがない。
(僕が一番、気まずい。早く去りたい)
イソトマは踵を返した。
「僕は次の授業、移動教室だから。ごきげんよう」
出来るだけ優雅に、その場を去った。
こういうところは、侯爵家子息としての自分の教養に感謝したい。
イソトマは逃げるように教室を飛び出した。
走り去った廊下で、立ち止まる。
足元の靴を見詰めた。
(ごめんね、リリー。少し、調べさせてもらうよ)
漠然とした違和感を纏った靴で、イソトマは歩き出した。
コメント
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# 感想 イソトマの「推しカプの生ツーショだぁ!」って心の叫び、めっちゃわかります(笑)悪役令息の立場を保ちつつ、内心ではリリーとルシアンを応援してるギャップが可愛い。靴を交換するシーンも、単なる親切じゃなくて「少し調べさせてもらうよ」という伏線が光ってますね。リリーが怯えた顔をするあたり、イソトマの悪役演技がちゃんと機能してる証拠でニヤリとしました。次が気になる!