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aohana
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寺町朱穂
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第39話「班分け」、読了しました! このメンバー、確かに「濃い」って表現がぴったりですね。乃亜くんの「期待していなかった」と呟いた後に、花宮がすかさず軽く乗ってくるところ、少しホッとしました。理央の気まずそうな態度や、透花のガッツポーズの意味が気になります。 放課後の打ち合わせ、この空気のままだとどう転ぶんだろう。面倒だけど、少しだけ面白くなりそうな予感もしてます。続きが気になるエピソードでした🖤
翌日のホームルームは、いつもより少しだけ落ち着きがなかった。
教室のあちこちで、班分けの話が続いている。
誰と組みたいだの、あいつとは嫌だの、実習そのものよりそちらの方が重要らしい。
俺は机に肘をつき、前方の黒板を眺めていた。
興味がないわけではない。ただ、期待はしていなかった。
だって、こういう場では、大抵ろくなことにならないだろう?
そもそも、俺となんて組む相手なんて居るわけがない。
「ふぁあ……」
元々は期待していなかったので、思わず欠伸をしてしまった。
すると、担任が出席簿を机へ置き、気怠そうに言った。
「昨日伝えたダンジョン実習の班分けを発表する。文句は聞くが、基本は変更なしだと思ってくれ」
すぐに教室の空気が張る。
担任はそんな生徒たちの反応を気にも留めず、プリントをめくった。
「一班――」
順に名前が呼ばれていく。
教室のあちこちで、小さな安堵や不満の声が上がる。
そして。
「四班。久城乃亜、榊原理央、三枝透花、花宮澪」
「……ん?」
一瞬、何も音がなくなった気がした。
次いで、近くの席から「えっ」とか「うわ」とか、そんな小さな声がいくつも漏れる。
俺は目を閉じたくなる――面倒だなと思ってしまった。
そう思いながら横を見ると、少し離れた席の榊原理央が明らかに顔をしかめていた。
声には出していないが、口元がそう言っている。
――よりによって、そんな顔だ。
透花は目を見開いたまま固まった後、何故かガッツポーズをしていた。
驚いた後、何かを決意したかのような顔をしていた。何故だ?
花宮は花宮で、プリントと俺たちの顔を見比べながら、小さく肩を揺らした。
「うわ、濃い……」
あいつだけは、ほとんどそのまま口に出した。
担任がそれを無視して続ける。
「以上だ。班ごとに実習前の簡単な打ち合わせをしておけ。危険時の役割確認、記録端末の担当、基本の連携くらいは決めておけよ」
そのように言いながらホームルームは終わった。
だが、教室の空気は終わらない。
多分、俺たちの班の方が浮いているのかもしれないと感じてしまった。
まず、俺が問題児扱いされていること。
そして久城乃亜は、理央と透花が幼馴染であること。
花宮がこういう面倒事の中心に巻き込まれやすいこと。
多分、全部まとめて“濃い”のだろう。
「……最悪だな」
誰にも聞こえないくらい小さく呟くと、後ろから声が飛んだ。
「いやほんとそれね」
振り返ると、花宮がいつの間にか机の横に来ていた。
「久城くん、今ぜったい面倒って思ったでしょ」
「ああ、思った」
「否定しないんだ」
「間違いなく、事実だからな」
そう返すと、花宮は妙に面白そうに笑った。
「まあ、あたしも思ったけど」
「だろうな」
「でも、逆にちょっと楽しそうじゃない?」
楽しそう、ね。
俺はその問いに答えなかった。
花宮のこういう軽さは、時々ありがたいが、信用できるものではない。
その時、理央が椅子を引く音がした。
振り向くと、あいつは露骨に気まずそうな顔のまま、こちらへ歩いてくるところだった。
短い髪。鍛えた身体つき――いかにも前へ出るタイプの人間だが、今はそれ以上にどう声をかけるべきか分からない顔をしている。
「の……久城」
「何だ」
「いや、その……実習のこと」
言葉が続かない。
理央は昔から、不器用なところのあるやつだった。
だが、今の詰まり方には別のものも混ざっている。
気まずさ。
後ろめたさ。
それでも話さなければならないという、妙な責任感。
「班、一緒になったし」
「そうだな、一緒になったな」
「そういうことじゃなくてだな……」
理央が眉を寄せる。
その横へ、透花がそっと近づいてきた。
「り、理央くん、いきなりそういう言い方だと」
「いや、俺だって分かってるけど」
「でも」
「でもじゃないだろ」
そこで花宮が割って入る。
「はいはい、いったん落ち着こ。まだ実習始まってもないのに空気最悪なんだけど」
「お前な……」
「だってそうでしょ?今のままじゃ班行動どころじゃないって」
花宮は軽い調子のまま言うが、間違ったことは言っていない。
理央は少しだけ息を吐いて、頭を掻いた。
「……悪い」
「別に構わない。俺は俺でやっていくから気にするな」
「よくないけどね、班になっちゃったんだから協力しないといけないよ、久城くん!」
花宮が呆れたように言う。
透花も小さく頷いていた。
俺は三人を順番に見る。
榊原理央。
昔を知っている幼馴染。放っておけないくせに、近づき方が分からない男だと認識している。
しかし、信用できない。
何せ、この男も奴らと同じだからだ。
乃亜の事を助ける事をせず、疎遠にしていたのだから。
俺は静かに息を吐く。
花宮の言う通り、実習で行動を共にする以上、完全に無視はできない。
「で」
花宮が手を叩く。
「放課後、軽く打ち合わせしない?このまま本番突っ込むのはさすがにやばいでしょ」
「それは必要だな」
理央が即座に頷く。
透花も「そうだね」と小さく同意した。
視線がこちらへ向く。
「久城くんは?」
花宮の問いは軽い。
だが、俺が拒否する可能性も考えている目だった。
「いやだけど、やっておいた方がいいからな。参加する」
めんどくさそうに答える俺に、理央が微かに反応する。
すると花宮は「お、ちゃんと乗った」と言って、少しだけ笑った。
透花も目に見えて緊張を緩める。
その反応が、少しだけ妙だった。
俺がそこまで拒絶的に見えているのか、それともこの三人が必要以上にこっちを気にしているのか。
どちらでも、大差はない。
前方では、瑠亜が取り巻きたちに囲まれていた。
優等生の顔を崩さないまま、だがこちらをちらりと見たのは見逃さなかった。
あいつにとっても、この班分けは面白くないのだろう。
俺が自分の管理の外にある人間たちと組む。
それも、幼馴染や花宮のような、少しずつ空気のズレに気づき始めている連中と。
知ったことではないがな。
チャイムが鳴り、次の授業の準備が始まる。
俺は教科書を机へ出しながら、小さく息を吐いた。
放課後、打ち合わせ――実習そのものより、その時間の方が面倒になりそうだなと感じた。