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メリーティアが連れて来られたのは、牢獄でもなんでもなかった。
場所は皇宮内にある隠された離宮。
そこは皇帝宮を通らないと辿り着くことすら不可能な奥まった場所にあった。鬱蒼と茂った木々のトンネルを抜けた先、箱庭のような庭園に囲まれてぽつんと建っている。
建物自体はそれほど大きくはないが、調度品のひとつひとつにすらこだわりが窺える内装だ。
メイドたちに身体を磨かれて、到底外を出歩けないような下着同然の服を着せられた。寝室に放り込まれ、やっと状況を理解して戦慄する。
外に出ようとしても窓には鉄格子がはまっており、さらに部屋の外は近衛騎士が見張っている。
しばらく扉を叩いて叫んでいたが、もう体力の限界だった。
つらいことがたくさんあったのに、悲しむ暇さえ与えてもらえない。グウェンダルが処刑されたことさえ、まだ現実として受け止められていなかった。
静かに扉が開き、メリーティアは後ずさる。
部屋に入ってきたのは、皇帝――ケイリクス・ケイト・ヴェドニアであった。
「メリーティア」
愛おしげに名を呼ばれ、背筋を悪寒が走り抜ける。
ケイリクスは美しい男だった。
肩まで伸ばしたうねり気味のプラチナブロンドを、紫色のリボンで低い位置に結んでいる。垂れた目元は彼を柔和そうに見せ、その海のように色鮮やかな碧眼は人々を虜にした。背はすらりと高く、ほどよく鍛えられた細身はさながら彫刻のようだ。
成人間近の息子がふたりいるようには到底見えない。それもそのはず。ふたりの皇子は彼が若いときにできた子であり、ケイリクスはまだ三十四歳だ。
アンニュイな雰囲気で、いつもゆったりと微笑んでいる。けれど何に対しても興味がなさそうな不思議な人物だった。
そんな男がなぜか唯一興味を示すのが、メリーティアである。
ケイリクスが一歩近づくたびに二歩退いているうちに、ベッドに追い詰められて背中から倒れ込んだ。散らされていた真っ赤な薔薇の花弁が舞う。
慌てて身を起こそうとすると、ケイリクスが覆いかぶさってきた。
「メリーティア。ようやくそなたを余のものにできる」
「……っ、おやめください! わたしはとうに結婚した身です」
「だが夫は死んだ」
涼やかな声で現実を突きつけられ、メリーティアは目に涙を湛えてキッとにらむ。
「夫は無実です……っ」
「そんなことわかっている。皇后の仕業だろう」
「わかっていたならどうして夫を見捨てたのですか!」
「そなたが余のものにならないからだ」
ケイリクスの指がメリーティアの輪郭をすべる。うっとりと頬を赤らめて、胸元に口づけてきた。
「やはり美しいなメリーティア」
「……っ、おやめ、ください。わたしは、わたしはっ」
「余はじゅうぶんに待った。無理やりに手に入れることもできたが、そうはしなかっただろう。手紙を送り余の意思は示したというのにそれを無視したのはそなただ。余は、そなたから余のもとへ来てくれることを願っていたのに」
「へ、陛下には皇后陛下がいらっしゃるではございませんか」
「余が既婚者でなかったとしたらそなたは余を選んだか? 違うだろう? たとえ余が皇后を廃しそなたを皇后に迎えると言っても拒否しただろう? この世のすべてを与えようとも、そなたが余を選ぶことはない。グウェンダルがいる限り」
首筋や胸元にうっ血痕がつけられていく。その数と濃さはケイリクスの執着の深さを物語っていた。
「諦めろ。そなたは余のものになるさだめなのだ」
唇が触れそうな距離まで近づいて、ケイリクスは目を細める。
「愛しているよ、メリーティア」
キスをされる寸前で、メリーティアはケイリクスを突き飛ばした。
ふうふうと肩を上下させ威嚇しても、まるで借りてきた猫のようだと言わんばかりに微笑ましげにしながら足首を掴んでくる。
どうすればこの窮地から脱することができるか必死に考えた。
「……っわたしのおなかには、グウェンダルの子がいます」
「――――何?」
メリーティアの少し膨らんだおなかをまじまじと見つめてくる。
やがてケイリクスは浅くため息をつき、ベッドにぽふんと腰かけた。それからメリーティアの髪を一束すくいとり、毛先にキスをしてくる。
「産んでもいいよ」
「……え? 本当、ですか?」
妊娠のことを告げたのは、ほかの男の子どもを孕んだメリーティアに愛想を尽かしてくれるかもしれない、という目論みがあったからだ。
しかし当てが外れた。穏やかに受け入れられるのは想定の埒外だ。
ケイリクスは戸惑うメリーティアをベッドに寝かせ、布団をかぶせてポンポンと優しく叩いた。
「大事な身体だ。産まれるまでは手を出さないよ」
微笑むケイリクスは何を考えているかわからない。
けれど産んでいいと言われて、ほっとしてしまった。
都築七美
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柴田
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#一年で体重二倍
専業プウタ
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