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ものの数分で現場へ到着したDyticaは、目の前の景色に驚愕する。
「おい、なんだあれ…」
カゲツが小さく呟く。同時に、全員も同じことを思う。KOZAKA-Cは2本の丸っこい角を生やした、黒くて小さい敵のはずだ。だが、あれは人型だ。黒髪でオールバックの、背の高い男だ。ぴっちりとしたインナーを着ていて、体つきの良さが目立つ。彼を囲んで半径5メートルくらいのところに、倒れた10人ほどの国民が円を描いて並んでいる。吹き飛ばされたのだろうか。意識を失っているだけで、死んではいなさそうだ。初めて見る得体のしれない敵に少し足がすくむが先陣を切るのは俺、ロウの役目だ。
「ライ、普段通りアシスト頼むぞ。」
「おっけぇぃ!」
小柳は刀を構え、敵に向かって走り出す。そのすぐ後ろを、自分の体よりも大きなハンマーを掲げたライも追う。あの男は瞳がどうにも不思議な感じだ。宇宙の無限大の広さを感じるような、深い漆黒だ。その瞳と一瞬目が合った。悲しそうな、しかしどこか嬉しそうな表情で。
「抜刀」
青白く光る刃先を敵の首元に滑らせる。ロウの刀は綺麗に敵の首を床に転がした。…はずだった。
斬った首が何事もなかったかのように繋がっている。
「どういうことだ…?」
まずい、この位置では反撃をもろに食らってしまう。ライと位置を交代して攻撃を…
「…は?」
後ろを振り返ると、ライが遠くの建物の壁に打ち付けられて地面に座り込み、目の光を失っている。後衛で待機中だった2人もだ。ショウは自分のタコの触手で体を覆って攻撃を防ごうとしたのか、その触手ごと吹き飛ばされて血だらけだ。カゲツも折れたクナイを両手に持ったまま吐血して横たわっている。この一瞬で何があったんだ…。見えなかった。小柳はもう一度地面を強く蹴って敵の首へと刀を当てがう。今度は斬る前に素手で防がれた。素手で止めるとかバケモンすぎるだろ。その瞬間、敵から衝撃波のようなものを食らう。ライたちもこの攻撃を受けていたのだ。
「ゴフッ…」
口から血を吐き出す。いてぇな…この攻撃。しかもノータイムノーモーションだ。いつあの攻撃が飛んでくるか予想もできない。
このまま俺一人で戦い続けるのは危険だ。Oriensに応援を頼んでそれまで耐えるしか…!
…いや、もう、無理か。Oriensを呼んでもみんなまた同じようにやられてしまうかもしれない。俺はみんなを守れなかった。力不足だ。いっそこのままみんなと共に死んでしまったほうが楽なのかもしれない。そうだ、きっとそうだ…。小柳は諦めて敵の前に膝立ちで座り、刀を鞘に納める。殺してくれと言わんばかりに敵の深い漆黒の瞳を見つめる。
「くん、…ロウくん…!」
どこかで聞いたことのある声だ。
「っっ…!!」
小柳は勢いよく飛び起きると、さっきまでの状況とは全く違う状況が繰り広がっていることに言葉を失う。
「なんでお前ら…生きて…」
「よかったぁ、ロウくんやっと目覚ました…!」「イッテツ…!?マナも、」
「ロウ、心配させんなよ。一生目覚めない思たわ」
「マナ、あいつら、一回死んだはずじゃ…」
佐伯に支えられながら姿勢を起こして、周りのKOZAKA-Cの雑魚たちをレイピアで殲滅して俺を守ってくれている緋八に問う。
「やっぱり幻覚見てたか、ロウ。ライの推測は正しかったみたいだな。」
幻覚…?にしてもいつから…。
「ロウが先陣切ったあと、急にロウが地べたに崩れ落ちたらしいねん」
[数十分前]
「抜刀」
いつも通りロウが敵へと斬り掛かっていく。大体この一発で勝負つくからオレ仕事ないんだよなー!そう思いながらロウの後ろに付いていく伊波。すると、刀を構える小柳がいきなり空中から崩れ落ちて、攻撃を止めた。
「っ?!ちょ、ロウ?!」
まずい、敵の攻撃が飛んでくる。オレは意識を失っているらしいロウを抱えてるべたちの所へ前線を下げる。
「小柳くんどうしたんですか?!」
「わかんない、急に倒れた」
カゲツも静かに座り込む小柳を心配そうに見つめる。するとその時小柳の目から涙が零れる。手を前に差し出し、何かを掴みそこねたようにゆっくりと手を握る。
「なにしてん、小柳…」
カゲツの言葉で3人がお互いに目を合わせる。
「何か幻覚見てるんじゃない、?催眠とか」
「かもしれないですね。だとしたら催眠にかかる条件は何でしょうね…」
「普通に目合わせるとかじゃね?忍者は戦闘で目合わせちゃ行けないって言うし。なんかそういうのとつながりありそうだけどな。」
絶対それだ。伊波は確信した。確かにロウは斬りかかるとき相手の動きを予測するために目を見る癖がある。オレはロウの動きに合わせて動くために敵と目を合わせていない。そうだとしたら辻褄が合う。
「とりあえずロウをここにおいて、3人で戦おう。絶対目はみるなよ!」
その言葉で3人は一瞬で敵の元へと距離を詰める。だが、奴に攻撃を届ける前に、それぞれが何かに攻撃を阻まれる。
「敵が増えた…?!」