「敵が増えた…?!」
伊波が驚く。3人で攻撃を仕掛けると、3人の複製がそれぞれの前に立ち塞がったのだ。これでは攻撃が本体に与えられない。しかも複製だとしてもなかなかの強さだ。油断はできない。
『Oriens現着。今の状況は?』
「ウェン…!!」
無線でその言葉を聞き、一気に戦況がひっくり返ることを確信した3人。
『現在3体の複製と戦闘中!ロウは敵の催眠で前線離脱!』
『複製は何体まで出るかわかるか?』
『わかんない…!この人septemって書いたアクセサリー着けてるけど関係あるかな?!』
『7体までかもしれないな、了解、ありがとう』
ウェンとの無線を終え、後ろに置いてきたロウが無事かどうか振り返って確認すると、マナとテツが先に着いてロウを守ってくれているようだ。
「ほんと…頼りになるなぁヒーローは…!」
伊波はロウを2人に任せて目の前の戦いに集中する。
マナの説明を聞いている小柳の上空を、2つの光が通り過ぎて行く。
「すまーん!!ちょい遅れたわぁー!!」
声のでかいこの男は宇佐美だ。ウェンと共に前線へ上がっていく。マナとイッテツに加えて、淡い緑色の稲妻を纏う筋肉と、大剣を振るうギャルも駆けつけてくれた。もう負けはない。
「ロウ、今目覚めたところ悪いんやけど、どうやらあいつ7体まで複製するらしいんよ。DyticaもOriensも、総出動せなあいつの本体に攻撃できひん。動けるか?」
小柳は、さっきのトラウマ的な映像を思い出す。血だらけで倒れる仲間たちと、本当の、絶望。現実ではこんなことは起こらないと分かっていても、刀を持とうとする手が震えてしまう。
「ロウくん、大丈夫だよ。俺らがいる!」
イッテツの言葉に、胸が温かくなる。仲間がこいつらでよかった。小柳はふっと微笑む。
「ああ。いける。」
「最後の一撃は頼むで!!」
そうして、MECHATU-A全員が戦場に揃う。
予想通り、複製はマナとイッテツの分の2体が増えるのを最後にして止まる。この戦いは、小柳の華麗な刀さばきにより、幕を閉じた。
「いやぁ、こんな強い敵久々やったわぁ」
本社までの帰り道、カゲツが満足そうに言う。
「僕もう疲れましたよ…」
それな〜と伊波とウェンが口を揃える。
「お前らが同期で…ほんとによかった」
「?!」
普段そんなことを言わない小柳に全員驚き、小柳を見て目をパチクリさせる。
「なんや〜??ロウ、俺のこと好きになったんか!!」
「ちげえよ」
緋八の一言でわっと8人に笑いが起こる。平和って、このことなんだなと小柳は改めて思う。
「大丈夫だぞ、俺らはそう簡単には死なねぇから。」
「そうよ〜、一人にはさせないよロウキュン♡」
宇佐美とウェンが続いてそう言う。
「Oriensあったけぇ…。俺DyticaやめてOriens入るわ。あとロウキュンって呼ぶな。」
「ちょっとロウ!!聞き捨てならんぞ!」
伊波とカゲツが頬を膨らませてロウを小突く。
星導も微笑んで後ろから仲の良い彼らを見守る。
オレンジ色の夕空を背に、8人の影が遠ざかっていく。今日もこの国はとても平和だ。
〜Fin〜
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