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「お、朧舞(おぼろまい)だ…!!」
1人が口を開く。
「朧舞って、あの鬼舞の子とされる…ッ?」
桃太郎がざわつき始める。
視線を逸らす者もいれば、
闘争心に燃えている者もいる。
「何?俺有名になっちゃってるわけ…?」
笑みがこぼれるというより、
口元が自然に吊り上がっていた。
その気配を察知したのか、
一気に桃太郎が身構え出す。
「やる気あんじゃん…!」
パチン
と音が鳴ると同時に
一斉に桃太郎たちが飛びかかってくる。
―来た。桃太郎たちが飛びかかってくる。
「いいよ、全員まとめて相手してやる」
目の前の敵を見据え、心を落ち着ける。
体が自然に動く。刀が光を切る。
背後から知った声が響く。
「いいねいいね!それでこそ潔だ!」
記憶の封印が破れ、胸にざわつきが広がる。
「い…、ッ朧舞!!!」
「はっ…!」
黒名の声が俺の意識をハッキリさせる。
一瞬立ち止まったせいで
隙をつくり、相手に攻撃をさせてしまった。
腰からは赤黒い液体が
ダラダラと出ている。
「く……鯱影(しゃちがけ)っ!!
生きてる奴ら全員避難させろ!
そのあとはボスと逃げろ!」
「潔はどうする…ッ?」
その声は震えていた。
「こんなとこで死ぬ俺じゃねぇっての!」
そう言うと、黒名は安堵したような顔を
一瞬見せ、すぐに指示を出し始めた。
指示を出しつつ、戦いの中でも状況を見極める。
「……潔が、あいつと再会するなんて……最悪だ」
「さすが潔…っ!周り、よく見てるっ!」
「ねぇ潔。もう一回、2人でやり直さない?」
「あの頃みたいに、本気で殺し合って、
笑い合ってーー」
ウキウキしたような声で
俺に話しかけてくる。
心臓が跳ねた。あの時と同じ──嫌な感覚。
……だけど、今の俺は、逃げない。
「正義のヒーローはどうしたんだよ?」
「蜂楽廻」
蜂楽の顔が一気に曇りだした。
蜂楽と共鳴するように、風が一瞬、止んだ。
世界が息を潜める──。
「君が望んだ“正義のヒーロー”──
もういるんだよね、潔…♪」
目は笑っていないのに、
口角は天を向いている。
「ねぇ潔…、悪にはちゃんと染まれた?」
「あぁ…今は”朧舞”…だっけ?笑」
2人の間に沈黙が生まれる。
「やっぱお前最高…、ッ!」
2人の声が、共鳴した。
第4話 封印