テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
【fjsw視点】
若井と出演したバラエティ収録終わり、帰る準備をしていると
「涼ちゃん、どっかでご飯食べていかない?」
「いいよー。」
「阿部さんは大丈夫?」
「亮平君も今日メンバーと食事してくるって朝言ってたから大丈夫。」
「そっか。でも一応阿部さんに”若井とご飯食べてくる”ってメッセージ送っておいてね。」
「はーい。」
「涼ちゃん何か食べたいとかある?」
「んー特にないかなぁ。若井は?」
「こんな時こそ辛い鍋。」
「えぇ?!このくっそ暑いのに?!」
「すっきりするよ?でも辛さは2か3で。」
「全然辛くないじゃん(笑)」
「ご飯は美味しく食べたいんだよ。」
「間違いないね。」
楽屋を出て出口に向かう途中、トイレの前に差し掛かった。
「あ、ちょっとトイレ。」
若井はトイレに入って行った。目の前で待っとくのもなんだったので、少し行ったところにあるベンチで待ってようと歩いて行くと、曲がり角のところで知った声が聞こえてきた。
「お、阿部ちゃんじゃん。」
思わず足が止まってしまう。この声、菊池さんだ。その菊池さんが”阿部ちゃん”っていうことは…
「おひさ~♪元気?阿部ちゃん。」
「風磨。久しぶり。」
角からそっと覗けば、菊池さんと亮平君がいた。「久しぶり」って言ってたし、声かけない方がいいよね。
「そう言えば阿部ちゃん、Mrs.の藤澤さんと仲良かったよね。」
「まぁ…。」
「あれでしょ?大将倒すなら馬を射る的なことわざ。」
「…『将を射んと欲すればまず馬を射よ』ね。」
「そのやり方で今まで大御所さんいくつかと繋がり作ってきたじゃん。今回は元貴君と繋がったの?」
「いや、別に大森さんとは…。」
「飛ぶ鳥を落とす勢いのMrs.のメイン元貴君と繋がればスノにもいい影響があるよね。実際俺のところも同世代ってことで、あちらさんのファンがこっちに興味持ってくれたり、こっちのファンがあっちに興味持ったりでお互いにいい影響あったみたい。」
「そう…。」
「藤澤さん元貴君まで繋げてくれない感じ?」
「いや…。」
「なんなら俺が紹介しようか?」
「別に…。」
「どうしたのあべべ。元貴君狙いで藤澤さんに近づいたんでしょ?」
「そんなこと…。」
「いきなり主砲は警戒されるからって周りから崩しにかかる阿部ちゃんの頭脳プレー俺は好きよ?」
「風磨、お前さぁ…。」
目の前が真っ暗になるとはこのことかもしれない。血の気が引いて真夏なのに震える様に寒く感じる。
「お待たせ。ん?どうしたの?涼ちゃん。」
戻って来た若井が肩を叩いたことで我に返った。すると、若井の声が向こうにも聞こえたようで
「え?涼架君?!」
亮平君がこちらに気づいた。
「若井、行こう。」
「え?」
歩き出す僕の腕を亮平君が掴んで引き留めた。
「涼架君!待って!!」
顔を見たくなくて、見られたくなくて、俯きながら絞り出すように声を出す。
「離して…。」
「違うんだよ!」
「やめて…。」
「涼架君…。」
流石に異変に気付いたのだろう。若井がやんわり亮平君の手を僕から外して前に立った。
「阿部さん。藤澤疲れてるみたいなので今日は…。」
「若井さん、涼架君と話をさせてくださいっ。」
若井がこちらを見る気配がしたので、僕は俯いたまま小さく首を横に振った。
「すみません、失礼します。」
若井は僕の手を引いて歩き出し、振り切るようにエレベーターに乗った。
#ご本人様とは一切関係ありません
「涼架君…。」
扉が閉まる際、遠くに亮平君が立ち尽くしているのが見えた。
【wki視点】
地下駐車場に着き、マネージャーが運転する車に乗り込む。
「なにがあったの?涼ちゃん。」
「…..。」
「落ち着いたら話してね。」
「若井…。」
「うん…。」
「亮平君、元貴と知り合いたかったみたい…。」
「元貴と?」
「元貴と繋がればあっちのチームにもプラスに働くだろうからって…。」
「どういうこと?」
「菊池さんが言ってた。元貴と共演してMrs.のファンがtimeleszに興味持ったり、timeleszファンがこっちに興味もったりでお互いにいい影響あったって…。」
「なるほど…。」
「いきなり元貴とコンタクト取れないから僕と仲良くなったみたい…。」
視線を感じてちらりとルームミラーを見れば、運転している涼ちゃんのマネージャーと目が合った。
「発言の許可をいただけますでしょうか?」
恭しすぎるからたまに怖いが、元貴の指示で涼ちゃんのマネージャーをやってるので一応信頼はできる。
「どうしたの?」
「先ほどおっしゃっていた相乗効果を実際数値化することは難しいですが、大森さんと菊池さんが映画で共演した後、こちら側のファンのアカウントが菊池さんが出るバラエティを見て投稿したり、音楽番組で共演した際あちら側のファンのアカウントがこちらのことを投稿したりといったことは一時的に増えました。」
「そうなんだ…。」
マネージャーってそういうチェックもしなきゃいけないの?!大変だ…。
「でも、阿部さんは…。」
涼ちゃんと阿部さんが同居していることは、上層部とマネージャー陣は知っている。なんせ超有名事務所所属の今を時めくアイドルと同居だ。何かあっては個人レベルでは済まされない。ただ、そこに恋愛感情が絡んでいるということまでは流石に俺と元貴と涼ちゃんの3人に留めている。留めているが、多分バレてると思うんだよなぁ。涼ちゃん分かりやすいし。
「花吐き病治ったわけだし阿部さんの今の気持ちは本物でしょ?」
こそっと言うと、涼ちゃんは頷いた。
「分かってる…。分かってるけど、心が追い付かない…。」
「…俺も元貴も涼ちゃんの味方だからね。阿部さんに会いたくないなら会わなきゃいい。阿部さんとの家には帰りたくないだろうし、倉庫にしてる元の家には阿部さん張ってるかもしれないし、しばらくは俺か元貴の家に居ればいいよ。」
「ありがとう、若井…。」
「というわけで藻部さん(涼ちゃんマネ)、行き先を元貴の家に変更で。」
「御意!」
元貴の家に着き、俺は涼ちゃんから聞いたことと見た状況を全て元貴に話した。
「お礼参り案件かな。」
笑顔だけど目が笑っていなかった。その時、ぼーっとソファーに座っていた涼ちゃんが静かに喋りだした。
「…もしかしたら、元貴と若井が前言ってた仮説当たってたのかも…。」
「「仮説?」」
「”やや強めの矢印がお互いに向いてたらいい”みたいなやつ…。」
そう言えば俺と元貴の花吐き病が治った時、涼ちゃんにそんなこと言った気がする。
『情ってか友愛?みたいな感じで普通よりやや強めの矢印がお互いに向いてたらいいみたい。俺と若井、一旦拗らせた片思いを忘れて『お互い好きになろう!』って決めたら治ったんだよ』
「そんなわけなかったのは涼ちゃんが一番知ってんじゃん。俺と若井のことポンコツって言ったくせに。」
「そうだね…。」
「入り口が打算的であったとしても、今阿部さんが涼ちゃんのことを本気で好きなのは事実だから。それだけは忘れないであげなよ。」
「うん…。」
力なく微笑む涼ちゃんはそのまま消えてしまうんじゃないかと思う程儚げだった。
【ab視点】
昔からたまにやっていることがあった。
『ふっか。』
『なに?阿部ちゃん。』
『今飛ぶ鳥落とす勢いのチームってどこだと思う?』
『俺ら☆』
『そういうのはいいから。』
『timeleszとか?』
『うちの事務所以外で』
『んー…Mrs.さんじゃない?フェーズ2になってから一皮むけたっていうかさ、人気爆発したよね。』
『そうだよね…。』
『また主軸以外のところを狙って相手チーム落とすやつやるの?』
『俺らのチームにプラスになるならね。』
たまにやってること。
それは、人気あるチームのあえてメインじゃないところと仲良くなり、最終的にメインと繋げてもらってうちのチームにプラスになるように操作をすること。
いきなりメインに行くとがっつき過ぎてと思われたり、あからさま過ぎて拒絶されたりする可能性があるので、あえて脇を狙う。そしてこちらから紹介して欲しい雰囲気を出さずに好青年を演じ、良い噂を相手チームに充満させる。そうすると自ずと本丸が姿を現す。
そこまでいったら俺の勝ち。
『誰行くの?』
『キーボードの人。下の名前涼架っていうみたい。』
『男だよね?』
『男だね。”りょう”繋がりで話しかけようと思ってる。』
『まーそうじゃなくても入り口はキーボードの人がよさそうだね。人当たり良さそうだし。』
『進展あったらまた話すわ。』
『他の奴には?』
『言わないでよ。舘さんや照はこういうやり方嫌いだろうし、翔太に話したら舘さんにバレそうだし、佐久間に話したら止められるだろうし、康二・めめ・ラウは影の部分なんか知らなくていい。あいつらは光だけ浴びてればいいんだよ。』
『過保護だねぇ。』
『ふっかがそれ言う?』
涼架君と仲良くなったのは今を時めくMrs.と仲良くなるため
向こうもうちと仲良くなっておけば相乗効果が得られるはずだ
イメージ戦略がうまい大森さんなら密かに俺の意図をくみ取ってくれるはず
うちのチームはまだまだ大きくなる
そのためにはなんだって利用してやる
「どうしたのあべべ。元貴君狙いで藤澤さんに近づいたんでしょ?」
「そんなこと…。」
「いきなり主砲は警戒されるからって周りから崩しにかかる阿部ちゃんの頭脳プレー俺は好きよ?」
「風磨、お前さぁ…。」
TV局内で不用意な発言する風磨に釘を刺そうとした時
「お待たせ。ん?どうしたの?涼ちゃん。」
廊下の先から知った声が聞こえてきた。これ、若井さん?ってことは…
「え?涼架君?!」
角を曲がったすぐに涼架君と若井さんがいた。
最悪だ。今の絶対聞かれた…。
「若井、行こう。」
涼架君が歩き出したので慌てて腕を掴む。
「涼架君!待って!!」
「離して…。」
「違うんだよ!」
何を言っても言い訳にしかならない。けど、言い訳をさせて欲しい。
「やめて…。」
「涼架君…。」
当たり前だが、涼架君は俺と目を合わせたくないようで俯いている。怒って当然だ…。しかし、未練がましく涼架君から手を離せずにいると、若井さんが俺の手を強く握ってきた。痛さに思わず手を放すと、俺から涼架君を隠す様に若井さんは立ちはだかった。
「阿部さん。藤澤疲れてるみたいなので今日は…。」
「若井さん、涼架君と話をさせてくださいっ。」
若井さんはちらりと涼架君を見る。涼架君は俯いたまま小さく首を横に振った。
「すみません、失礼します。」
若井さんは涼架君の手を引いて歩き出し、そのままエレベーターに乗った。扉が閉まる際に顔を上げた涼架君と目が合った。今にも泣きだしそうな傷ついた表情をしていた。
「涼架君…。」
扉が完全に締まり、エレベーターは地下へと降りていた。
「あーらら。こりゃ阿部ちゃん大変だねぇ。」
後ろからのんびりとした声が聞こえてきた。
「風磨、お前わざとだろ…。」
「なんの事?」
「しらばっくれるなよ。お前こそ大森さん利用して涼架君に近づこうとしてたの知ってるからな。」
風磨は苦笑した。
「元貴君が目を光らせてたから変な虫寄り付かなかったのに、阿部ちゃんすり抜けちゃうんだもん。ズルいよね。」
「ずるくねぇよ。正攻法だし。」
「結果的にそうなっただけで、入りは違かったじゃん。」
「あー…もう…。」
頭をガシガシと掻くと、風磨は楽しそうに笑った。
「愛の力が試される時だよ☆」
「うぜー…。」
世界線:『花吐き病【緑のラナンキュラス】』(mga短編集内)
コメント
13件
最初から見返したけどやっぱりこの作品最高ですね😊
すれ違ってます😭💚💛 💜くんも悪いですね😂💦 💚さんの策略家的なとこ、好きです👍