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絨毯屋が軒を連ねる道に、バックパッカーが目に付く。中には若い女性もちらほら見かける。
「そういう名前って、今でもたくさんあんの?」と旅人は言った「アリストテレスっての」
「この街には、ギリシャ人自体が少ないからね」
青年は船着場のスタンドで買ったトルココーヒーをすすった。歩く振動で上手く飲めない。
「でも、君の国籍はトルコなわけでしょ?」と旅人は言った。
「パスポート上の話なら、クルド人だってトルコ人だよ」と青年は言った。
「でもそういう名前付けるってことは、親はよっぽど期待したんだろな。きっと、僕もそうだったんだろうけど」
「俺の場合、ただの偶然だよ」青年は、オリーブ商をやっていた祖父の名前を継いだだけだと話した「それより、見てみろ。トルコ人はイスラム教徒に手を出せないもんだから」若い地元の男が、民芸品屋から出てきた女性旅行者に声をかけている「でも、あの様子じゃ断られるな」
絨毯屋の道を抜けると、再び海峡沿いに出た。青年は岸辺の段を降りる。
「さ、ギリシャコーヒーその辺にでも置いて」旅人は笑った。
「ギリシャ人はみんな、そう呼ぶね」