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Ⅴ.好きやった
ある夜、侑は夢を見た。
高校時代の夢だった。
体育館に響くシューズの音。
ボールを打つ音。
治の声。
「ツム、トス低いねん!」
「お前が跳ばんからやろ!」
「誰が跳ばれへん言うた!」
くだらない喧嘩。
何もかもが当たり前だった日々。
夢の中の治は、いつも通り笑っていた。
侑も笑っていた。
病気もない。
痛みもない。
終わりなんて、どこにもなかった。
ずっとこのままでいられると思っていた。
目が覚めたら、病室は暗かった。
点滴の管が、腕につながっている。
身体は重く、息をするだけでも疲れた。
「……夢かあ」
侑は目を閉じた。
もう一度、あの頃に戻りたかった。
治と喧嘩して。
治に怒られて。
治と同じ布団で寝て。
明日も明後日も、当たり前に隣におる。
そんな日々に。
「……好きやったなあ」
小さく呟いた。
「……ほんまに、好きやった」
誰にも届かない告白だった。
治にだけは、聞かれたくなかった。
けれど、本当は。
一度でいいから。
治に、好きやと言ってほしかった。
たとえそれが、兄弟としての意味でも。
たとえ叶わない願いでも。
自分だけが特別なんやと、思いたかった。
「……サム」
声が震えた。
「俺、お前のこと……」
最後まで言えなかった。
言ってしまえば、もう戻れなくなる気がした。
侑は口元を手で覆った。
「……ごめんな」
謝ることなんて、何もないのに。
ただ、好きになってごめん。
言えなくてごめん。
先にいなくなって、ごめん。
そんな言葉ばかりが、頭の中を巡っていた。
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yuom ./ 引退
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コメント
1件
うわ……これ、読んでて胸がぎゅってなった。夢の中の日常が何気ないからこそ、醒めたときの落差がえぐいよ。終わりが近づく中で「好きやった」って過去形なのが切なすぎるし、治にだけは聞かれたくないって気持ちもよくわかる。最後の「ごめんな」、何も謝ることじゃないのにって侑自身が思ってるのがまた……(泣)残りが何話かわからんけど、この先どうなるんやろ。