テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
トワノに手を引かれて道路へ出ると、グレーのミニバンがエンジンがかかった状態で停まっていた。
運転席にウルハ、助手席にヒミコが乗り込み、トワノは後部のハッチバックドアを開いて、手元のタブレット端末を操作していた。
夜空から縦横10センチ足らずの、4個のローターが付いた機械が次々と舞い降りて来て、トワノがそれらを手早く車の後部に仕舞う。
6個目のドローンを仕舞うとトワノはハッチバックのドアを閉めて、まだ呆然とした表情で突っ立っているトモエを後部座席に押し込んだ。
トモエとトワノは後部の二つ並んだ座席に座った。真ん中の列の座席は空いていて、シートが3つ横に並んでいる。
ウルハが車を発進させ、数分走った所で停車させる。左右両方の後部ドアがスライドして開き、トモエがまだ会った事のない二人の若い女が中央の列のシートに滑り込んで来た。
一人は中学生かと勘違いするような小柄な女。もう一人はスポーツウェアを着こんだ、女性としてはやや長身の女。
ヒミコが後ろを振り返ってウルハに言う。
「揃ったようやな。ほな、家に帰りましょか」
ウルハが戸惑った表情で訊く。
「あれ? マユキはどうした?」
ヒミコが答える。
「あの子にはちょっとした後始末頼んであるんや。後でアジトに帰って来る」
ウルハがうなずいてアクセルを踏んだ。走り出した車の後方、さっきの騒ぎがあった倉庫のあたりから爆発音と鋭い閃光が見えた。
それに驚いたトモエが叫んだ。
「何? 何が起きたんですか?」
ヒミコが日本刀を仕舞った円筒形のケースを前に抱えて言った。
「ちょっとしたカムフラージュや。音と光は派手やが、オモチャの花火みたいなもんやから心配は要らん」
それから車は灯りの多い市街地へ向かって走った。中央の列のシートに座った二人が上半身を後ろにねじってトモエに話しかけた。
小柄な女が言う。体だけでなく顔も幼い感じを残している。だがセミロングの髪の下からのぞく目は鋭い眼光をたたえた大人のそれだった。
「ふうん、あなたがアネキの言ってた子ね。あたしは紫香楽(しがらき)ナミネ。よろしくね」
もう一人は栗色のショートカットの髪、小麦色の肌、彫りの深いやや日本人離れした顔立ちだった。
「ボクは阿留多伎(あるたき)イオン。仲良くしようね」
トモエは次から次へと目の前で展開された、想定外の出来事に頭がついて行けず、ただ反射的に「はあ、はい」と繰り返すだけだった。
もう少しで幹線道路に出る辺りで、パトカーのサイレンが聞こえて来た。トモエははっとして窓ガラスに頬を押し付けた。
さっきの現場の爆発音の通報でやって来たパトカーなら、自分が乗っている車に停車を命じるのではないか、と考えた。そうなったら一緒に居る女たちはその場で逮捕されるのだろうか?
ヒミコがトワノに声をかけた。
「トワノ、あれの出番や」
「はい、おねえさま」
トワノが繋ぎの作業服のポケットから小さなリモコンのような物を取り出し、スイッチを入れた。
やがて点滅するパトカーの非常灯が見えて来た。ドキドキして身構えるトモエの予想に反して、パトカーは彼女たちの車に全く注意を払う事もなくすれ違って行った。
やがて交通量の多い広い道路に出た。トモエが外をのぞくと、通行人やすれ違う車のドライバーが妙にこっちの車に視線を向けているように感じた。
やはり怪しまれているに違いない。そう確信したトモエは、意を決して車の中の女たちに声を張り上げた。
「み、みなさん! お話があります!」
トワノが横から訊く。
「トモエちゃん、どうかした?」
トモエは大きく深呼吸して、言葉を続けた。
「自首して下さい!」
一瞬車の中が静まり返った。トモエはブルブルと震える声でさらに声を張り上げる。
「今は逃げられても、捕まるのは時間の問題だと思います。自首すれば少しは罪が軽くなるかと……」
次の瞬間、ヒミコ以外の全員がドッと吹き出して笑い声を上げた。トモエはむっとしてまた叫んだ。
「な、何がおかしいんですか? あたしは真面目に」
ハンドルを握っているウルハが隣のヒミコに言った。
「だとさ、アネゴ。どうする?」
全く笑っていないヒミコは、かと言って深刻な口調でもなく、淡々と答えた。
「へえへえ。ま、トモエはんがそう言うなら考えときますわ。けど今夜はもう遅い。自首すんのは、明日の朝になってからでも遅くはないですやろ」
トワノがまだ半笑いの顔で横のトモエに言った。
「ま、今のところは事務所に帰ってゆっくり寝ようよ。上の階にはみんなの部屋もあるんだ。トモエちゃんには空いてる部屋を使ってもらえるから」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!