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※本作は、前垢にて投稿していた《拝啓、本当の幸せを求める君へ_。》という作品を元に作成しています。(こちらはリメイク版です。)
↑リメイク前を観たい方は、こちらの方を検索してご覧ください。
(小説の中で、暴言等の要素を含みます。しかし 、作者はこれらを肯定したり、助長したりなどの意図は一切ございません。)
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「……えっ…?噂の連中…それってどんな連中なんだ?」
今まで一度も喋らなかった羽衣が、話しだしたことに内心びっくりしていたランダだが、次第に真剣に耳を傾け始めた。
「…詳細は分からない。東の街を中心に目撃情報も多数ある。お前の街はその連中に狙われたに違いない。」
そう言って、羽衣は近くにあった新聞の一部を指さす。確かに、東にある別の街が、数日前に襲撃されていたことが載っていた。ランダはうーんと腕を組む。
「でも、俺の街、東じゃないぞ?しかもその連中、街を破壊してんだろ?姉さんを誘拐する必要は………。」
「…もしかしたら、もしかしたらですよ?リヨさんは人質として捕らえられたんじゃないですかね。その連中の本来の目的はランダさんかも……」
「えっ?俺………?」
話せば話すほど、真相は深まるばかり。
その時、重い空気が乱れた。羽衣が、ランダに真っ直ぐな眼差しで問う。
「…お前、本当に、どうしても絶対、絶対姉さんを助けたいんだな?」
「……もちろん助けたいよ、絶対に!」
羽衣は少し考えてから、隣にいたキュウメイにこう言った。
「……師匠、お願いです。こいつの旅に同行させてください。お願いします。こいつは悪い奴じゃなかった。むしろ、自身の姉を助けようと必死です。俺はそんな奴が…こいつが放っておけません」
羽衣が並べた決意の言葉に、ランダは目を見開いた。自分に同行するなんて言うと思わなかったのだ。
そう。羽衣は、最初は数週間前にこの神社が被害にあった賽銭泥棒じゃないかと敵視していた。しかし、ランダの話を聞いていて、賽銭泥棒でないことも分かった。むしろ姉を助けたいと必死である姿勢に感心し、そんなお前になら協力したい、ついていきたいと思ったのだ。
彼の目に迷いはなく、本気だということを証明する目つきをしていた。
「……羽衣がそう言うなら…でも、ついて行かせて良いのかい?ランダさん」
これは自分自身の旅。
優しいランダは自分が巻き起こしたかもしれない事故に、他人を巻き込みたくは無かった。でも、人が多い方が頼りになるし、旅も楽しくなる。
ランダは悩み、考え抜いた末に、キュウメイを見てこう答えた。
「……決めました。彼がいた方が旅も楽しくなるだろうし、頼りになるから……彼がいいと言うならば、ついてきちゃっても大丈夫です。迷惑じゃないです。」
「……!…本当かい?それじゃあ、羽衣を頼むよ。羽衣も、ランダさんを困らせないようにね。」
「あっ……そのさ…そう言ってくれて嬉しいし…しかも頼み込んでおいてあれだけど……本当に良いのかランダ…?俺、そんなに力になれないかもだし、料理と武術しか取り柄ないぞ?」
「ううん、良いんだよ!俺はついて行かせてって言ってもらっただけで嬉しいからさ!それに、料理も武術も取り柄あるんじゃん!羨ましいし、絶対頼りになるに決まってるよ、きっと!」
そう言ってランダは微笑んだ。その笑顔はまるで、明るい太陽の様だった。
「…絹綿?」
羽衣はボソッと呟いた。
ランダの笑顔は、まるで自身の亡き親友とそっくりだったのだ。
羽衣はしばらく固まった後に優しく微笑んだ。ランダは意味が分からなかったが、きっと彼も嬉しかったのだろうと勝手に解釈し、羽衣の両手を握った。
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そうして、ランダ達はキュウメイに別れを告げて神社を出た。しかし、神社を出たときにはすでに日が暮れかけていた。
「………その…ランダ」
「?なぁに?」
「…さっきはすまんかった。ほら、その…」
そう言って、羽衣はランダの怪我をした頬を指さす。ランダは「あぁ…」と言うと、すぐ笑顔になった。
「この傷? 気にしないで!すぐ治るから!」
「……そっか…。そうだ、自己紹介まだだったな。改めて、俺は羽重羽衣だ。変わらず羽衣って呼んでくれ。」
「そうだ、俺も自己紹介忘れてた…俺はランダ!これから宜しくな羽衣!」
「………おう!」
二人はその場で笑い合った。暗闇の中、二人の周りだけが照らされているようだ。
「……そういえば、次に行く場所決めてんのか?」
「うん!とりあえず向こうの街に行こうかなって」
「あぁ、カルメシル街の事か。あの街沢山資材あるから、たくさん道具とか食料とか買えるぞ」
「マジか! よし、じゃあ早速明日行ってみようぜ!」
「……ならランダ、街の近くの洞窟まで競争な、今日は野宿」
「えっ?あー!!ちょっと待ってよー!」
ランダは新たな仲間、羽衣と共に、目的地《カルメシル街》へと走り出したのだった。
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→次回
《恵まれない才能》