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「……でも、キスだけならええよ」
「……ほんまに? ……じゃあ、たくさんさせて」
こんなに重い人を繋ぎ止めておくためには、触れ合いは必要。この人が又暴走してしまわんように、最低限の鎖をつけておく。
これからの約束を誓い合うように、深く、深く、幾度も唇を重ねる。
互いの体温を、呼気を、存在を確かめ合うたび、心にこびりついていた冷たい孤独が溶けていくのが分かった。ふと視線が重なると、どちらからともなく自然に笑顔がこぼれた。
「……夢みたいや」
「ん?」
「今日は振られる覚悟で来たから」
「……俺も。まさか、こんな風になるとは思わんかった」
少し眠たそうに目を細める新先生の頬を、指先でそっとなぞる。
「ゆっくり寝ていいよ。俺が側におるから」
吸い寄せられるように、二人でベッドに横たわった。
見つめ合う距離。混ざり合う吐息。
「……これが『ソフレ』の安心感か」
新先生は冗談めいて呟くと小さく笑い、それからすぐに、スースーと穏やかな寝息を立て始めた。
新先生、ずっとまともに眠れていなかったんやろな。俺がこの人の安らぎになれたのなら、それはきっと、悪いことじゃない。
これから先、どうなるかは分からない。
けれど、新先生のことなら、いつか心から愛していけるような気がする。
その時には、子供の遊びじゃない、本当の「お付き合い」ができたらいい。
俺のことやから、いつかはこの深い愛で、新先生のことすら食い尽くしてしまうかもしれないけど。
そうならないために。
隣で眠るこの人を、そして、誰よりも大切で眩しい「もとちゃん」を壊してしまわないために。
俺は自分の心に嘘をつかず、二人と向き合っていかなきゃいけない。
気持ちの分散は、今の俺には必要な儀式や。
俺のためにも、そして、俺が愛する人たちの未来のためにも。
窓には昼間なのに分厚く重いカーテンが降りている。
独りきりじゃない暗闇は、もう、少しも怖くはなかった。
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#先生と生徒