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無性 (完結)
「琳琅、桜こそ咲けれ」
「いまだうつろひたらざりもこそ」
うつろひきと思ひたれどいまだ桜の清げなる有様に咲けり。嬉しくなりて琳琅にまづ伝へき。琳琅は何かを心得しやのごとく我が方見口を開きき
「徒弟、私が師兄と何時殻分かっていた?」
「……出会った時から分かっていました」
汪渕は優しく微笑めり
「師兄より上にめでたき人は居ず。やがて師兄と僕はおどろきき」
「さりか」と琳琅は微笑みき。かくて汪渕の元へと近寄り尋ねき
「出掛けむと思ふ。」
「何処になりや」
心もとなからむとし_汪渕@ワンエン_は問ひ掛けき。琳琅はやはらいらへき
「いづら、遠き所。誰も訪れぬに一生を終ふ
かれずとぞ契りし」
「えい、もろともに行かむ。」
私は先の見えぬ物畏し。何故人は先の見えぬ物に積極やうに取り組まむとするや分からず。私は誰の言ふ通りわぶらむ。其にてもありぬべき恋しき人のがりいれば其にてありぬべし。宇伟、君は今何し居るや生きたるや分からず。いかで彼に夢を見せきや。ただ一つ、忘れで欲しかりきや。
「師兄、恋し。地獄にも何処にももろともに行くと誓ふ。僕をぐしゆきたまへ」
「仰せのままに」
身支度し汪渕と琳琅は旅へと出掛けき
「宇伟、なんぢ好き勝手やりて、」
「何なり、腰安穏なりやよ」
いつものごとくケラケラ笑ふ宇伟が其処にはありき。此の良き、此の恋しきなり。俺はこの褻がきと恋しかりけり
「なんぢ……いづら行くやよ」
俺がさ聞くと宇伟は小さき声に「まぁな」といらへき。宇伟に男のごとからずと始め思ひき。さうざうしがれりや。其ならば取りおきの物をやらむ。俺は花をあまた摘みて花束にし宇伟に見せき
「斤…これは」
「花なり」
さ言ふと腹を抱へそめき。俺も思はず宇伟と笑ひ合ひき。をこがましと思ふべき際果報なるかなと実感せらる。(嗚呼、楽し)ただひとへにさる事を思へり
「恋しきかたきには花ほど捧げまほしくなる。花には足らぬほどにぞ!」
笑ひつつ宇伟を見詰めき。宇伟は少し涙を浮かべつつ我見詰め「嗚呼」と声を上げき。
のちのよには幸せになるようにと心より祈れり