目が覚め、一人白い部屋で寝ている私、まだ眠いと思っても、今日は学校だ。まだぬくぬくしていたいのにな。
そして寝返りを打ち全身全霊で力を込めて立ち上がった。カーテンを開けて、天気を確認するが、日光が反射して目が痛くて仕方がない。日光なんてなければ良いのにそう思った。
今日は休日が終わって、高校生活二週間目に突入している。
私は一人でぽつんとベッドで体育座りをしていた。部屋に置いてあるのは何もなくて、ただあるのは小さい頃にもらった信号機のストラップだ。
そして私は膝に顔を埋めた。
もう、こんな人生を壊してしまいたい。
私はもう消えたい。
どうしてそう思うか。
私はもうこの人生に疲れてしまったからだ。
親も、私の人生の為にって、いつも『勉強しろ』って電話が掛かってくるし、楽しい事なんて何一つもない。
そんな人生を送る必要なんてないのではないかそう思ってしまうことが、一回、十回、何十回もあった、数えられないほどの苦労をしてきた。
なのに私はなぜか死ねないのだ。何でだろうか。今だって銃で撃たれても構わないのに。
何でか…今は死にたくない。多分、私が消えない理由。
私は一人の女の子に恋をしてしまったからだ。
その子の名前は、花咲 彩晴だ。
私は彼女に恋をしたのだ。
彼女は可愛らしい丸い目をしてて、ビー玉のようなきれいな目、真っ直ぐに伸びるきれいなロングヘアをしている。
高校生活の初日、私はいろんな人から、『男の子だよね』、『これで明日翔(アスト)って読むの?』、『えぇ!女に全然見えないね』などと散々男子に間違えられた。まぁ私は馴れてるから全然良いんだけどね!
てか、初対面で男子と判断するのは失礼だぞって凄く言いたくなる。
出席番号で女子に挟まれてるんだったら女に違いないって思うはずなのになっとため息をついたほどだ。
でも彼女は違った。
私は初日のホームルームが終わって誰一人も友達が居ないので一人で家に帰らないといけない。みんなスマホを持ってLINEを交換したりしている。私は早く離れたい為、急いで支度をし、教室を出ようとした。
その時だった。
誰かが私の袖を引っ張った。とても弱い力でグッと私の袖を下に引っ張っている。
後ろを振り返ると可愛らしいリュックを持ちながら上目遣いをする花咲 彩晴がいた。
私と花咲さんは身長差が大きい。私は最近測って居ないが180近くはいっているだろう。一方で花咲さんは150センチ近くで守りたくなるような身長の高さをしているだから、約30センチ差あるってことになる。てか、皆からの視線が痛い。絶対誰か花咲さんの事を狙っているのだろう。
『あのさ、一緒に帰ろう…?』
と、笑顔で言ってきた。
その笑顔を見て少し鼓動が速まった。
彼女の笑顔は誰にも負けないような笑顔だった。
私は少ししゃがんで
『いいよ、一緒に帰ろうか。』
彼女は花が開くかのようににっこり笑顔を作った。
彼女の笑顔がとても羨ましいなと思いながら私も少し心が温かく和らいだような気がした。
一緒に帰るのはいいものの、話題がなくて困っている。
何を話したらいい?好きな食べ物?趣味?それとも好きな人の話とか?
そんな事をずっと考えながら歩いているが、彼女がいないということに気が付いた。後ろを振り返ったら彼女は口をへの字にしながら悩んでいた。
悩んでいる姿が愛しくてずっと見ていたいくらいだ。
『あれ…?私そんなに遅く歩いてた?ごめんね!』
彼女は走ってきて、ローファの音が道路に響き渡る。
『あ、いや、平気だよ。私が速かっただけだと思うから。』
彼女と私だったら、歩幅も違うだろう。30センチも差が有るのだから。
少しは気遣いが出来るようにしなくてはと、私は心の中で決心した。
『えっと、君の名前は?』
彼女は首を傾げた。
そういえば、名前言ってなかったな。
『私は、終夜 明日翔だよ。』
私はいつもこんな風に自己紹介すると、いつも皆から『えっ、女だったの?男だと思ってた。』って言われるのが、自分の伝統になっている。彼女はなんて返答するだろうか。皆と同じく言うだろうか。
『明日翔ちゃんか~、可愛らしい名前だね。』
『…えっ?』
想定外だった。
いつも皆は私の事を男だと見間違えるのに、どうして、この子は私の事を女だと、判断したのだろうか。
『あのさ、どうして私を男の子だって思わなかったの?』
彼女は迷わずに言った。
『だって、明日翔ちゃんの内面を見たらさ、とても女の子ぽい性格だなって思ったからさ、こんな性格の男の子がいたら私付き合っちゃうよ。』
彼女は照れ臭そうに言った。
また自分の鼓動が速まっているのが分かる。
私は嬉しくて泣きそうになったが、それを我慢して
『…有り難う』
と笑顔で返した。
はっきりとわかった。
私はこの子に恋に落ちたのかもしれない。
今すぐに手を繋ぎたい。
今でも抱き締めたいと思うくらいだ。
き
っ
と
手
を
繋
ぐ
だ
け
で
ぞ
っ
と
さ
れ
て
し
ま
う
の
だ
ろ
う
。
そんな風に思えてしまう、彼女はとても太陽なような人間だから。
こんな私が今日、彩晴に手を繋いだり、抱いたりしたら、彼女は私にもう近寄らなくなってしまう。
そして私も女の子だ。そして私はそのような事が好きではないと彼女も分かっているはずだ。
私の事など好きにはならないに決まっているから。
そして、男子からも付き合ってくれと告白されることも多いだろう…
そんな平凡な私が彼女を好きになって良いのだろうか?
こんないらない人生を長い時間生きて良いのだろうか?
でも、私はこの夢は叶わない。
だってもう決まっているから。
一般の人達は女の子は男の子を好きになること、男の子は女の子を好きになることが当たり前なのに。
なのに、私は同性を好きになって良いのだろうか。
私は当たり前を壊している。
当たり前じゃないことをしている。
同
性
を
好
き
に
な
っ
て
し
ま
え
ば
通
報
さ
れ
て
し
ま
う
の
で
は
な
い
か
。
馬鹿げた競争=同性を好きになるということだ。そんな事をしたら私は彼女や他の皆から通報されてしまう。
同性を好きになることはこの世で当たり前じゃない。
私がしていることは違犯にあたる事だろう。
でも私はそれを違犯したい。
彼女が好きなのだから、愛情を捧げたいから。
彼女の可愛らしい笑顔を側でずっと見ていたいから。
大人になっても、おばあちゃんになっても永遠と君を守ってあげたい。
でも一つだけある。
どうしてこの世の中には
男
の
子
と
女
の
子
と
性
別
が
別
れ
て
し
ま
っ
て
い
る
の
だ
ろ
う
。
別に男の子と女の子どうして区別があるのだろうと思っている。
男の子が男の子と付き合ったって、女の子が女の子と付き合ったって別に良いだろう。
この世の中にオメガバースのような事は出来ないのだろうか。
現実にあったら、私は即効告白していたのにな。
今でもこの思いを抱えてばっかだろう。
そうしたら番にも、馴れていたのにな。
そんな風に思っている自分が馬鹿馬鹿しい。
『明日翔ちゃん?』
私はずっと考え込んだまま、呼ばれていることに気付いた。
『ん?どうした?』
彼女は上目遣いでこっちを見てきて。
私とは、断然違うな。
私が多分男子に間違えられる理由は沢山あるが、まずは外見だろう。
私は身長が高いプラスバストもないからだろう。永遠のゼロと言ってもいいくらいの貧乳だ。それにこの髪もだろう。私は赤毛で産まれて来たからだ。本当は皆と一緒が良かったのに、入学式に地毛なのかどうか、めっちゃ聞かれて最悪だった。
あと、この声もだ。
私は、良くストレス発散でカラオケにいくのだが、声が低いからか、今流行っている、音楽だって、女の子が歌っているトーンは男性のトーンに合わせないと歌えないくらいだ。本当にこの声が嫌いになりそうだ。
『あのさ、明日翔ちゃんって良く、男子と間違えられる?』
『あ~まぁ、良く有ることだからもう慣れてるんだけどね』
『そっか…それは嫌かもね。』
『まぁ、馴れてるから、平気だよ。』
『だけど、明日翔ちゃんは、明日翔ちゃんの良いところがあるから大丈夫だよ。だから、明日翔ちゃんは明日翔ちゃんが思うように生きて良いんだよ。』
私はびっくりした、こんな風に言ってくれる人がいるなんて…本当に泣きそうになったくらいだ。
いつも私には良いところなどないと思っていた。
何もないただの凡人ですと、そう思っていた。
なのに、本当に消えなくなってしまったのは彼女がいたからだろう。やっぱり、まだ生きていたいな。
学校が終わって、彩晴と一緒に帰っている。
私の歩幅と彼女の歩幅が違うので、少しゆっくりのペースで歩いている。少しずつだけど、気遣いができているので良かったと思っている。
彼女はルンルンと楽しくこの歩道を歩いている。まるで幼稚園の子のように。
彼女の楽しいところが見られるとこっちも嬉しくなるので、本当に良かった。
少し狭い歩道を歩いていると反対側からコショコショ話が聞こえる。
そんな声もうとっくにわかってるんだよ。
私の悪口だって。
私の髪の毛が赤いから、確実に私を不良だと感じていたのだと思う。
だから皆、私の事を避けていたのだと思う。
私の高校は地元から少し離れた場所の高校だから、中学校で一緒の人はいない。
そして彩晴は隣の中学校に通っていたので、ここら辺の近くだ。
だから登校や下校も一緒にしている。
私は耳が良い、教室で人の悪口をコショコショ話で話している時にも、その声は、私の耳に入ってくる。
べき論者様気取りかよ。
なら、
べ
き
論
者
様
言
う
べ
き
事
は
絶
対
な
の
だ
ろ
う
か
?
今だって、上の人達は下の人達に指示を下し、下の人達を見下ろす。
そんな時が多くある。
いわゆる、上下関係だ。
子供は親に逆らえない。
生徒は先生に逆らえない。
社員は社長に逆らえない。
本当にそんなような人生は消えて欲しい。
決
め
つ
け
る
人
々
な
ん
て
こ
の
世
か
ら
い
な
く
な
れ
ば
い
い
の
に
。
べき論者様がいなくなれば、この世界は自由なのに、そのコショコショ話をしている人からは『あの子に悪影響を与えないかしら』や『あの子が可哀想など』言ってきた。
だから、本当は言われるのが辛い…苦しい。
その瞬間耳に暖かい小さい手が触れた、多分、彩晴の手だろうか。
彼女は反対側のべき論者様を見て睨んでいた。
私を悪くない人だって行っているのだろう。
べき論者様は本当にいい人達なのだろうか?それとも悪い人達なのだろうか?
べき論者様は何なのだろうか?
理想を実現させなくてはいけない。なら、彼女達は上の立場に立っているのか?何も偉くない癖に?
なら、
べ
き
論
者
は
沢
山
い
る
の
だ
ろ
う
か
。
そ
の
人
た
ち
は
私
に
善
悪
を
強
く
持
っ
て
い
る
の
だ
ろ
う
か
?
私
が
彼
女
を
好
き
に
な
っ
て
し
ま
っ
た
ら
彼
女
に
悪
影
響
を
与
え
る
と
言
い
ふ
ら
し
て
い
る
。
だから、べき論者様は嫌いだ。
そして彼女は私を連れて、さっきの道とは少し離れた場所に私を連れていった。
『大丈夫だよ。全然気にしてないからね。』
彼女は不安そうな目をしていた。
『本当に…?』
『本当だよ。』
『そう、なら良いんだけど…。』
『うん、有り難うね。』
私は彼女を心配させないため笑顔で返した。
彼女は不安そうな顔をしていたが、彼女も笑顔を作った。
『じゃあ、私はこれで』
私は彼女に手を振って彼女とは違う方向に帰った。
私は、さっきの人に言わなければいけないことがある。
私はさっきの道とは遠回りに走った。
彩晴はいないのだろうか。
すぐに周りを見渡して見るが、彼女は居ない。
そしてさっきの人達がいた。
私はべき論者様達を睨んだ。
さっき、べき論者様は『あの子が可哀想よ』、『あの子から離れなさい』などと、小声で命令してきた。
本当にうざい、命令すんな。
勝
手
に
私
た
ち
の
邪
魔
を
す
る
な
。
そして私は普通の声よりも低い声で
『あの子を好きになってどこが悪いんですか。彼女が幸せなら、私は良いと思っています。私と彼女を知らない癖に。これから、私達の邪魔や、彼女の好き勝手にやらせないのなら。
誰
で
も
排
除
し
ま
す
か
ら
。』
そしてべき論者様は腰を抜かした。
私は笑顔でべき論者様に背を向けて去っていた。
…この世の中が彩晴見たいな人ばっかだったら良いのにな。
私は心の中で思いながら暖かい風が吹いて、綺麗な桜が舞い落ちている。