テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
人の手を一切加えられて居ない神秘の森は、夜だと錯覚するほど薄暗く、
蛍のようなぼんやりとした光がそこら中に漂っていた。
「……」
ごくりと息を飲み、後ろを振り向くと
…やっぱりな。
森へ入る為の道が消えている。
街へと繋がっていたはずの道は、今や大きな木々で覆われている。
きっと、妖精どもの仕業だ。
イタズラ好きな彼らは、よくこうやって森への侵入者をおもちゃにして遊ぶのだ。
なんて性格の悪い…そんな文句にさえ、彼らは聞く耳を持たない。
夏にうるさい羽虫のように、邪魔でならない存在なのだ。それと同時に、“神秘の森”にとってなくてはならない存在だった。
苛立ちに任せ、手で潰そうものなら、
森の神とやらによって、死よりも重い刑罰が下ることだろう…
もちろん、これは実体験ではなくただの噂話、おとぎ話にすぎない。
しかし、この森を生きて出た者が少ないという事実から。油断してはいけないのは確かである。
「何?何かいるの?」
「…妖精」
嗚呼、もっと早く気づくべきだった。
周りを漂うのは蛍なんかじゃない…
妖精だ。
「嘘…これ全部…?」
「……逃げた方がよさそうだ」
「何でよ?ただの妖精じゃない」
「……いいから走るぞ」
ナリアの手を掴み、全速力で走った。
横から聞こえる笑い声には気を取られないように、目の前に現れる道を進む。
そんなことを繰り返して、しばらくした頃、目の前に道ではなく、大きな沼が現れた。先ほどとは比べ物にならない程の妖精の数、そして沼を囲むのは精霊とエルフ達だった。
重警備にも程がある。一体この沼に何が…いや、この沼自体が神聖な物なのかもしれない。
さっきからずっと感じる、この嫌な予感は一体…
いかにも厳かなこの雰囲気に圧倒される。ナリアも息を切らしながらその沼を眺めた。
「何これ…一体なんだって言うのよ、」
「…ちょっと黙ってな」
「…はぁ?」
「…知り合いかもしれない、話をつけてくる」
そう言って恐る恐る沼に近づくと、警備をする精霊たちの視線が俺に集まった。
「…大丈夫、何もしねぇって…ただ、こいつと話をしたいだけ」
“こいつ”と言う単語に反応して、目の前のエルフが顔を顰めた。
「…無礼者め」
綺麗なルビー色の瞳が、俺を睨んできた。
「あー、あー、せっかくの整った顔が台無しだぞ?ハクア…だっけか」
「な…何故私の…」
「もう忘れたのかよ。俺だよ、ハクア」
そっと顔に被ったフードを下ろすと、周りがざわついた。
「…フリード」
「お、御名答」
「ようやくツケを返しにきたか」
ハクアよりもワントーン低い声が響く。
ハクアより少し背の高い緑色の目をしたエルフ、ルリハも詰め寄ってきた。
全く、人気者は困るぜ
「いいや?取引しにきた」
「…残念だがフリード。ルリハ達はあなたの力になれない。あの方に会うには、森のの許可がいる」
「…おぉ、あいつまだ生きてたのな。死んだのかと思った」
「お前は一体…どれだけ無礼を重ねれば!」
俺に向かってルリハが振り上げた剣をハクアが止める。
「姉様、いけません。」
「……」
「おー、ありがとなー…命拾いしたぜ」
そう言いながら彼女に近づくと、
ハクアによって再び刃が向けられる。
鋭い目つきで睨みながら、ハクアは言った。
#学園
「……何を勘違いしているの。
ハクアが貴方を生かしたのは、ツケを払ってもらうためよ」
「うへぇ」
どうやら歓迎はされないらしい。
訳あって、俺はこいつらとかなりの付き合いなのだ。
もちろん、「あの方」と呼ばれる者にも会ったことがある。
せっかく旧友が会いにきてやったのに、この対応とは…
「あのねぇ、貴方達。」
後ろから怒気を孕んだ声が聞こえる。
「私の“ボディーガード”に何の用かしら?」
「「「ボディーガード?」」」
3人揃って、頭に疑問符を浮かべた。
するとナリアはキッと俺の方を睨む。
どうやら“話を合わせろ”ということらしい。
「あ、あぁ…そうだな、ボディーガード…ボディーガード…」
するとナリアは大きくため息を吐いて、続けた。
「…私達、人探しをしてるのよ。
とーっても大事な仕事なの。だから、ここを通してくれる?」
腕を組んで、エルフ達を睨んだ。
その顔は自信に満ち溢れていて、崩れる気配はない。
「…あのね、お嬢さん。知らないでしょうが、ここはルリハ達…いいえ、精霊たちの領域よ。」
ルリハは酷く冷淡な態度で、言葉を返す。!
「……私が貴方達と交流のあるグラスレット、だとしたら?それでも案内してくれないと言うの?」
「グラスレット…」
彼女の家の名前を聞いた途端、ルリハが引き下がる。
「わかりました、御案内しましょう。“あの方”の元へ。」
ハクアがナリアの元へ跪き、奥へと案内した。
「えぇ、頼んだわ。ほら、いらっしゃい?“ボディーガード”さん?」
「……」
どういう事かわからないが、うまく事が進んでいるらしい。
当の本人はとても楽しそうだ。
もう一度言おう、とても楽しそうだ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!