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「かんちゃんほんとに何も買わなくていいの?」
「うん、ちょっと金欠…でさ」
「あれ、そうなの?まぁかんちゃん金遣い荒いもんね〜」
「はは…」
緊張して食欲がないとか絶対に言えねぇ…
「ん〜!美味しいー!」
唯は呑気にりんご飴を頬張る。美味しそうに食べるなぁ…。りんご飴を頬張る姿も可愛い。
「は〜、美味しかった!」
「美味しかったならなによりだ」
「花火始まるまでまだ時間あるし、もうちょっと屋台見て回ろうよ!」
「おう、そうしよう」
唯と並んで歩く。いつ告ろうかな、なんて考えていると不意に後ろから声がした。
「お!お前ら今日もイチャイチャデートしてんのか〜!」
振り返ると、いつも茶化してくるクラスメイト男子2人組がいた。
「仲がよろしいことで!」
「あはは…」
あいつら…!いつもの事だけどまたいい加減なこと言いやがって!
何も言わず黙って2人を睨んでいると2人がにやにやしながら俺の肩をポンポン、と叩いた。
「そんなに怒んなって!2人の貴重なデートの時間を邪魔して悪かったな!」
「ラブラブデート、楽しんでな!」
「っ!お前らなぁっ!」
「うわー、寛太が怒った!」
「逃げろー!」
ワーワー言いながら2人が走って逃げていった。
「あいつら、覚えとけよ…」
「まぁまぁ、それより見て!金魚すくいだって!私あれやりたい!」
唯はそう言って金魚すくいがある屋台を指さす。
「行こ?」
「おう」
唯、気を使ってくれたんだな、そういう所もやっぱ好きだ。
金魚すくいは2人とも下手くそで、俺が一匹取れたので、唯にあげた。
金魚をあげた時の唯は「え?くれるの?!やったぁ! 」と喜んでくれていた。
「そろそろ花火始まるね!」
「あぁ、もうそんな時間か」
「どこで花火見る?座って見える場所がいいよね〜」
「あ、じゃああそこの神社いかねぇ?あそこちょっと遠いけど穴場らしいぜ」
「え…?そうなの!?じ、じゃあ行こう!」
「おう」
長い階段を少し早めに登る。俺も唯も体力がある方だが、少し疲れた。
「唯、大丈夫か?」
「全然大丈夫!けど歩きずらいかな」
「あぁ、浴衣だもんな」
「そうそう」
そんな会話をしていると1番上にたどり着いた。
「「は〜疲れた」」と同時に言った途端───
と大きな音が後ろで鳴った。振り返ると少し離れたところで花火が咲いていた。
唯は「うわぁ〜!綺麗!」と呟いていた。
次々に花のように咲いていく花火にしばらく見とれていた。
「ここ、ほんとに穴場スポットだね!花火がすごく綺麗に見える!」
「だろ?昔よくここでじいちゃんと見てたんだ」
「そうなんだ!昔いつも最後の方になるといなくなってたのはここに来てたからだったんだね 」
「うん、そういうこと」
花火を眺めている唯に俺は目を向けた。花火色に照らされた顔がますます綺麗で、目が離せなかった。
気づけば俺は口に出して言っていた。
「…好きだ」
唯は大きな瞳で俺を見た。そして──
「今何か言った?ごめん、花火の音で聞こえなくて…」
申し訳なさそうな顔で俺を見た。なんだか急に恥ずかしくなった俺は誤魔化した。
「あっ、いやっ、その…い、従兄弟!最後の方は従兄弟と見るって言ってなかったか?」
「…あっ、それなんだけど」
唯が何か口にした時、どこからか着信音が鳴った。どうやら唯のスマホらしい。
「あ、ごめん!ちょっと出てくる!」
そう言って唯は少し離れたところで電話をし始めた。
俺はため息をついた。
「あ〜…、何やってんだろ、俺。何であん時誤魔化したんだろ」
しばらくして唯が戻ってきた。そして
「ごめん、従兄弟のところ行かないと行けなくて…」
「おう、わかった。途中まで一緒に行こうぜ。俺もう帰るし」
「うん!」
2人でまた長い階段を降りていった。
唯と別れた俺は1人で自分の家に向かって歩いていた。まだ花火は続いているが、一人で見るのも虚しいだけなので帰ることにした。