独身欲
文化祭前日。教室は装飾や出し物の準備でごった返していた。
こさめのクラスは「メイド喫茶」。
男子からのリクエストで、可愛い見た目のこさめは当然メイド役。
「こさめちゃん、スカートもう少し短くしたらもっと似合うんじゃない?」
「ねえ、こさめちゃん当日写真撮ってもいい?」
「あとさ、メニュー渡すとき『ご主人さま♡』って言ってくれる?絶対破壊力あるから!」
——わいわいと盛り上がる男子たち。
こさめは笑いながらも、時々目線を教室の隅に向けていた。
その先には、ただ無言でこちらを見ているなつの姿があった。
無表情。でも、目だけが鋭く光っている。
そして——
「……こさめ、来い」
なつが立ち上がり、男子たちの輪からこさめの腕を取って教室の外へ連れ出した。
「え? な、なつくん……?」
なつは何も言わず、静かな廊下を歩き続ける。
どこへ向かうのか分からないまま、こさめはその手に引かれていった。
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