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とある国のとある街の国際空港。
たった今到着した飛行機から不思議な雰囲気の3人組が降りてきた。
一人は緑髪のおさげにサングラスをかけた背が高く体格の良い男性。
一人は金髪に黄色の仮面を付けた中肉中背の男性。
間に挟まれるように立つ、ピンクのお団子ヘアーに紙袋を被った女性。
その風貌から危ない人たちと判断されたのか、同じ便に乗っていた乗客たちはすぐにその場から離れたようで、3人の周りは閑散としていた。
そんな周りの雰囲気などお構いなしに、3人組はのんびりと会話を始めた。
「さて、到着したわけですけれども」
「…ここはさぁ、あれじゃない?『緊急で動画を回しているんですけど〜』じゃない?」
「おぉー!」
「…えぇ。なに、その無茶振り。あれこれから解放されて無敵になってない?」
「お母さん、見たいー!」
「ほら、可愛い娘もこう言っていることだし」
「もう何ぃ?また僕お母さんなの?それと言うだけ言って娘に隠れるのやめなさい?あと、あなたも乗っかるのやめて?」
「えぇー。お母さんやってくれないのぉ?」
「うわぁ、お母さんひどいねぇ」
「あー。うん。オッケ、オッケ。そういうノリね。うん。分かった分かった。やればいいんでしょ、もぅ〜。」
「家族」にお願いされたからか、お母さんと呼ばれた金髪の男性は咳払いを一つすると、スマホを取り出しカメラを向けた後、一息ににしゃべり始めた。
「はい!ただ今緊急で動画を回しているんですけども!僕たち3人!なんでも叶うと言われているロスサントスに移住してまいりました!今はまだ空港に到着したばかりですが、ここでは3人で中華料理屋さんを始めたいと思っています!早速ですが自己紹介いきましょう!まずはミンドリーから!」
「ぇぇ。俺もやるのぉ。んー。ミンドリーです。この街で家族でミンミンボウという中華料理店をやる予定です」
「僕に無茶振りしたくせに、自分に振られたら不本意な感じ出すのやめてー。まぁ、お店に関しては頼りにしていますからね。じゃ、次はさぶ郎!」
「あーい。さぶ郎でーす。お父さんとお母さんと一緒に中華料理屋さんやりまーす。」
「さぶ郎、ちゃんと誰がお父さんで誰がお母さんなのか言わないと」
「え、その話いる?」
「あーい。さぶ郎のお父さんがミンドリーさんで、お母さんがぺいんさんでーす!家族水入らず?でいっしょにたくさん遊んで思い出作りたいでーす!」
「んじゃ次はぺいん君ね」
「もぅ、なんなん。んんっ。では改めまして、伊藤ぺいんです!ミンドリーのやる中華料理屋さんで働く予定です。んん。あとはさぶ郎のお母さんです。なんでか。えと、この街ではね、ちょっと前の街でやっていた事から離れてね、リフレッシュと言いますか、今まであまり時間が取れなかった家族の時間というかね、お店やったり、街を巡ったり、遊んだりね、楽しんでいこうと思っています!よろしくお願いします!」
まずは移動しようということになり、外まで出てきたところでぺいんが口を開いた。
「んで、とりあえずここからどうするよ?」
「んとねー。移住の手続きの関係で、店と店の裏に自宅は確保してある。で、店の方も商品やメニューも準備済みだから、やろうと思えばすぐに開けられる。あと、乗り物関係も前の街からある程度持ってきているからガレージに入っているはずだよ」
「ライセンス関係は?免許センターと警察署行かないとダメ?」
「そこも移住の手続きの時に話を通しておいたから、市役所でIDカードの発行だけで大丈夫だよ」
「なるほどねえ。じゃあ、店まで行って店と引越しが終わっているかの確認と、ガレージの確認して、それが終わったら皆で市役所かな。店まではどうやって行く?」
「そこはねぇ、知り合い呼んだ」
「え、いつの間に」
「さっき、ぺいん君が動画回していた時」
「そうですかぁ」
ぺいんは少し肩を落とした。
程なく3人の前に1台のパトカーが停まり、中からは3人にとっては見覚えのある警官が降りてきた。
「どうも。ドリーさん。お疲れ様です。」
「まるん君、ありがとねえ」
「まるんさんだぁ!」
「まるんじゃん、何やってんの?」
「昨日からですが、2週間ほどここの警察に出張でして」
「おー!一人でも知り合いがいるとなんだか安心するよー!なぁ、さぶ郎?」
「あい」
「まぁ、前の街とはいえ上官のドリーさんの頼みですからね。ミンミンボウまでお送りします」
3人はそのままパトカーに乗り込み、ミンミンボウがある場所まで短めのドライブとなった。
「まるん、ありがとう!仕事の方は大丈夫なの?」
「全く無いわけではないですが、これも市民対応ですからね」
「さすが南署副署長」
「まぁ、ここでは出張扱いなのでランク3ですけどね。ところでこの街では何をする予定で?」
「………。簡単に言うと家族団欒だね。あっちでは忙しすぎてさぶ郎とミンドリーとなかなか時間が取れなかったから。ミンミンボウやりながらゆるく過ごすよ」
「………。そうですか。まぁ犯罪して捕まらないようにはしてください。元の街で同僚だったとバレたら出張中の僕の評価に繋がるんで」
「はっ。そんなことしないよぉ。まるんには迷惑かけないって。ただ困ったことあったら連絡するかもだから、よろしくな」
「頼みますよ、ほんと。さて、着きましたよ」
「おおー、サンキューなー」
「あざましたぁ」
「まるん君、ありがとね。まぁ、なんかあったら連絡するね」
「はい。それでは楽しいロスサントスライフを」
ミンミンボウ前にて走り去るパトカーを見送る。振り返ると見慣れた外観の店があった。
「さぁて、やりますかぁ」
次の日、移住してきた家族による中華料理店がオープンした。
大々的な宣伝はなかったが、街になかった中華料理店なこと、店主・店員がちょっと不思議な家族であるが人柄がいいことから、評判が口コミで広まり徐々に人気店となっていった。
ただし、ここはロスサントス。
白市民だけではなく半グレ、ギャングも立ち寄るようになり、それにともない家族の思惑とは別に、色々と巻き込まれるようになるのは、また別のお話で。