桃赤
愛の重さ
桃side
今日も親友の青と、喫茶店に来ていた。
青と喫茶店で日頃のことを話すのは、そう珍しくはなかった。
「でさ!めっちゃ僕ムカついちゃってさ!!」
「まじかよwww」
基本的には、青が喋って、俺はたくさん聞く。
俺の話はあまりしなかった。
そんなある日。
青が突然、真剣な顔をして俺の方を見てきた。
「……どうした?なんかあったか、?」
いつも明るく笑顔を絶やさない彼をずっとみてきたから、
俺もいつの間にか真剣な顔になっていたことだろう。
「……僕、桃くんに聞きたいことがあってさ」
「………なに?」
「…………」
青から言ってきたことなのに、何故か無言になり、しまいには俯いてしまった。
「どしたんだよ…」
「無理に言わなくていいから……な?」
「言いたくなった時に言えよ?」
そう言うと、顔を上げ、左右に顔を振った。
「いや、言う。」
「桃くんってさ、……」
「赤くんとッ……付き合ってたんだよねッ?」
「……今更なんだよッ………w」
「付き合ってたろ……w青もその事は十分知ってるだろッ?」
この重たい雰囲気をなんとか変えようと、俺は笑顔を見せたが、
青が笑顔になることはなかった。
「……いやッ…あのね、?」
「すごくいいにくいんだけど……」
「桃くんと赤くんが別れたの、3年生になる前じゃん?」
「僕いま赤くんと同じクラスでさ、仲良くなって……」
「そしたらさ、……赤くん、桃くんと付き合ったことなんかないって……」
「それに、桃くんのこと、知らなかったよ……?」
青の言葉に、俺は一瞬にして頭の中が真っ白になった。
赤が、俺を知らない……?
たとえ嘘だとしても、何故そんなことを言うのか意味がわからない
「………ごめんねッ……?」
「………やっぱこの話撤回!!!」
「いや、撤回を撤回する」
「どういうことなんだ?」
「それは僕も知りたいよ………」
なんてこの日は考えてみたものの、何も思いつかなかった。
家に帰り、俺はベッドに思いっきり飛び込み、考えた。
俺と赤は、決して悪い別れ方をしてはいない。
浮気したから別れたとか、束縛が激しかったから別れたとか、そんなのでは無い。
ただ、怖かったからだ。
お互いが、お互いに依存してしまうのが。
俺は赤の連絡先をまだ残していたため、赤にメッセージを送った。
『久しぶり。明日の放課後、屋上に来て欲しい。』
いつも既読が早かった赤。
でも、どれだけ時間が経っても、いっこうに既読になる気配がない。
ブロック……されてるな。
分かりきっていたことなのに、やっぱり悲しくて。
まるでもう赤の他人みたいで。
俺はいつの間にか涙が溢れていた。
「…俺ッ……まだ赤に依存してるかもなッ……w」
あの時、より依存してしまうのが怖いという理由だけで、別れるんじゃなかった。
もっと赤の近くにいたかった。
赤の隣で笑っていたかった。
赤と楽しい日々を過ごしていたかった。
今更後悔だけが溢れてくる。
その日は食欲が湧かず、何も食べなかった。
朝、いつもより目覚めがよかった。
「桃!!」
「昨日ご飯食べてないでしょ!!朝ごはん食べなさい!」
「……自分でするから……」
その日はクロワッサンひとつを食べて、学校へ向かった。
いつもよりずっと早く登校した。
いつもはたくさん人が通ってる道。
今は、全然人がいなかった。
いるのは、俺と小さい小柄の男の子。
………あれ、赤…?
身長だけで決めつけるのは良くないが、赤だと思えば、赤としか思えてこない。
俺は、考えるよりも先に動いてしまった。
「……赤ッ?」
小柄な男の子の肩を掴み、赤かまだ分からないのに、赤の名前を言ってしまう。
「……はい?」
そう言って振り返った人は
やっぱり赤だった。
当分見ていなかった彼の姿。
身長は以前と全然変わっておらず、
でも、以前より可愛く、かっこよくなっているような気がした。
赤は一瞬驚いたような表情をしたが、笑顔になり、
「………どうかしましたか?」
と、俺に愛想笑いを見せる。
まるで、話したこともない、他人のように。
「……どういうつもりだよッ……」
「俺、ッ何か嫌なことでもしたかッ……?」
「ッ………」
赤は俯き、拳をぎゅっと握りしめていた。
「……何かしたのなら、俺ッ…謝る…から……」
やっぱりまだ好きなんだな、と感じた。
これほどまでに、好きだったんだな、って。
「……勝手に…決めんなよッ………」
赤の突然の言葉に俺はすぐ赤の方を向いた。
「勝手に別れようとか、ッ……言ってんじゃねーよッ……!」
「お互いが依存しあっちゃうから別れようッ………?」
「意味…わかんねーしッ……!」
「だいたい、!俺は今もあんたが好きなの!!」
「それなのに、勝手に別れさせてッ!!」
「桃くんもまだ俺の事好きなんじゃんッ!!」
俺は、涙を我慢しながら赤をそっと抱きしめる。
「……離せッ………バカッ…」
彼の目には、涙が溢れていた。
「離さない。」
「……ほんとに……ごめんッ」
「まじでッ……自分勝手だった。」
赤に依存しすぎて、赤を怖がらせないか、
赤の楽しいを奪ってしまわないか、
赤に束縛をしてしまうんじゃないか、
不安で不安でしょうがなくて。
赤の話も聞かず、別れてしまった。
考えてみれば、全部俺が悪い。
最悪な別れ方をしてしまっていた。
「………こんなバカな俺だけど、」
「………良かったら、ッまた付き合って欲しい。」
「今度は絶対悲しませない。」
赤は俺の背中に手をまわし、上目遣いで俺の方をむく。
「……俺ッまた桃くんに依存しちゃうかもしれないよッ…?」
「大丈夫。俺も赤に依存するから。」
「わがままな彼女になるかもよ……?」
「そしたら俺はもっとわがままな彼氏になるよ。」
「赤、束縛しちゃうかもしれないよッ?」
「そしたら、俺は精一杯の愛でそれを受け止めるよ。」
「……こんなバカで、間抜けで、可愛くもない彼女でもいいのッ………?」
「俺はそんな赤を好きになったんだよ。」
「赤も、こんなバカで、わがままで、自分勝手な俺を愛してくれたじゃん。」
「俺も赤を愛してるよ。」
「赤が重いって思う以上に、俺は赤を愛すよ。」
「……じゃあ、ッ」
「死ぬまで、一緒に居てくれるッ?」
「……もちろん。」
そして、俺らは唇を重ねた。
お互いの愛を、お互いが超え続ける毎日を過ごそうよ。
end
最後はちょっぴりヤンデレ入っちゃったかもですが……。
お互いの愛が重い話、私大好きなんですよ!
なんか話がおかしくなっちゃったかもですが、申し訳ないです😭😭
最後までご覧いただきありがとうございました!
コメント
16件
まーじでほんとにがちめに 表現の仕方好きすぎます🙌🏻.. 語彙力の神だっっ
最初からミステリーというかサスペンス感があって最高だったのに、最後の方に共依存的なの入れてきてもっと最高になりました🥲✨ ほんとに紅の杏さんの作品全て大好きです︎🫶🏻💞