テラーノベル
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スタンリーは濡れた髪を軽く払って、扉を閉めた。
そしてゼノは机の椅子を引き、向かいを示す。
「座ろう。走ってきたんだろう?」
「……まぁ」
スタンリーは腰を下ろし、深く息を吐いた。
胸の上下が、少しずつ落ち着いていく。
窓の外では、雨が一定のリズムで降り続いている。
「……それにしても、俺が来なかったかもしんねぇのによく待っててくれたよな」
スタンリーがぽつりと言う。
ゼノは少し考えてから、正直に答えた。
「それもそうだね。でも、君は人の傘を泥棒するような悪い人間ではないだろう?」
「この前知り合ったばっかなのによく言えんね」
スタンリーは鼻で小さく笑った。
ゼノは微笑んだあと、本棚から一冊取り出す。
本をもって座ると、ゼノがふと思い出したように言う。
「そういえば傘のことだが…」
スタンリーは 、足元の傘を手に取る。
「ちゃんとあんよ」
「返さなくていい」
「は?」
「その傘を持っていれば、君は傘を返しにまたここに来るだろう?」
スタンリーは一瞬黙ってから言葉の意図を理解する。
「……あんたってロマンチストだな」
「おぉ、科学者は皆そうだよ」
そうジョークをいいながらも、またあの微笑みを見せる。
冗談のはずなのに、どこか本気にも聞こえる。
スタンリーは笑うと、視線を窓の外へ向けた。
雨はまだ、同じ調子で降り続いている。
「……雨、長引きそうだな」
「そうだね。今日は簡単には止まなさそうだ」
ゼノはそう言って、机に肘をつき、顎に手を添える。
「でも、その方がいい」
「なんで? 」
「理由がないと、君と長居できないだろう?」
スタンリーは一瞬言葉に詰まり、それから小さく笑った。
「……確かにな」
二人の間に、静かな沈黙が落ちる。
さっきまで気にならなかった雨音が、今は心地よかった。
少しして、スタンリーが口を開く。
「……なぁ、ゼノ」
「うん?」
「……雨の日以外も来ていい?」
ゼノはその言葉を聞くと、小さく笑った。
「ここが気に入ったかい?」
「いや、」
否定すると、スタンリーはゼノの目をまっすぐ見る。
「ゼノに会いたいから」
ゼノはその嘘偽りのない言葉を聞くと、驚いて少し目を見開き、小さく笑う。
「実にエレガントな理由だね。」
そう言うとゼノは続けて言った。
「君が僕に会いたくなったらいつでもここに来てくれ。」
その言葉は、約束のように聞こえた。
コメント
15件
うわぁああ🥹尊いいいい⁉️ほんと好きです神
はい神まって尊いんだが?続きありがとうまじ感謝😭