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今日の午後は二限ぶち抜きでダンジョン学部の講義だ。今日のために、同じ時間に他の講義がある学生には後日補講を受けることで調整してもらったらしい。かなり苦労したのだろうが、それでも二限分確実に講義の予定を立てられたのは間違いない。
来年、再来年はもっとスマートな講義コマの取得ができるように努力するか、一年からゼミに入らなくてもいいように調整されるようになるのだろうな。そういう意味では俺たちの年代はまさにたたき台であり、実験動物のようなものだ。
さて、ぶち抜きでわざわざ講義を用意したのにはもちろん理由があり、ダンジョン実地演習になる。前回もやったが、あれをまたやることになった。もちろん、前回は1限を使った範囲の非常に狭い範囲での探索になったが、今回は2限ぶち抜きでどこまでできるか、ということを確かめるための講義である。
本格的にダンジョン探索を講義として取り入れるなら、どのぐらいのコマ数が必要になるのかというのを確認しなくてはいけないし、昼を挟んで弁当を持ち込んで……というところまで踏み込んでダンジョン探索が必要なのかを見定めるためにも、今回は昼の後から2限続けて探索……という形になったのだろう。
もしもこれ以上長い時間の講義が必要になるんだとしたら3限……つまり昼休憩明けから5限の授業が終わる五時間ほどをまとめて使ってどこまでのことができるのか、というのを確かめる講義になる可能性が高い。そして、今回は朝日奈とも組むのだが、朝日奈は昼食時の俺の会話をしっかり聞いていたらしく、朝日奈以外にも二名ほど連れてきてくれていた。
今更だが、三人から五人でパーティーを組むのが一般的なところ、前回経験者二人を組み込んで朝日奈のキャリーに付き合ったため、三人で組むことになったので今回は補充要員二名、ということになる。
「清水です、よろしくお願いします。本条君は目立つからいろいろうわさは聞いてるよ。よろしく」
「えっと、その……大川です。よろしくおねがいしまひゅっ」
あっ、噛んだ。男のほうが清水君で、女性のほうが大川さん、ということらしい。少なくともうちのゼミ生ではないのでよそのゼミには所属していることにはなっているはずだな。どこのゼミ生だろう。
「とりあえず一回だけ組んでみて、って感じだったんだけれど、一緒に組んでいた人はあっちはあっちでより仲良くなったパーティーメンバーと一緒に組み込まれていっちゃったらしくて。僕ら二人とも初心者だから心細くて、その辺を朝日奈君に相談したら……という理由なんだ。申し訳ないが、肩を貸してもらえないだろうか」
「なるほど。そういう理由なら私は歓迎するわよ。幹也は……人慣れしてないから反応が薄いと思うけど、基本的に悪い子じゃないから安心して。ただ、こういう時どういう反応をすればいいか困ってるだけだから」
「あーうー。オレ、ホンジョウ、ミキヤ。コンゴトモヨロシク」
「よ、よろしくな。なんか評判と違っておとなしい生き物なんだな。もっとアグレッシブな奴だと思っていたよ」
「よろしくおねがいしまひゅっ」
あ、また噛んでる。とりあえず五人体制になったパーティーだが、やることはそれほど変わらない。朝日奈は前回と同じく薙刀を借りてきているらしい、そして、清水君は盾、大川さんは一応短剣を持たされている。大川さんはひょろっとしていて背丈は結構あるが、猫背気味である分だけ背が低く見えるな。その大川さんと同じぐらいであろう背丈の清水君が……よし、そろそろ大丈夫だな。
「……ぴぴー……がたん。よし、再起動した。清水君に盾役をやらせるような形になるけど大丈夫か? モンスターが怖ければ慣れるまでは俺が回避タンクをしながら動くので合わせて攻撃してもらうような形になるが」
「ああ、構わない。2限ぶち抜き講義だからと言って、二人が先導してずんずん奥まで行く……みたいなことはしないだろう? 」
「ついてくるも何も、俺と彩花はもうすでに十層まで潜ってしまっているからな。行くならワープポータルで一足に飛んでしまうことになる。それを考えたらいきなり新人二人を十層まで送り届けるのは無理があることぐらいは承知している。せいぜい潜れても三層ぐらいまでだろう。とりあえず、二人の目標を聞いておこうかな。朝日奈は最悪休みの暇な日に自主練と称して無理やり潜らせることもできるが、このメンバーでそろって潜る、みたいなことは難しいだろうからな」
「お、おう。本条はダンジョンのことになると饒舌になるな。俺はとりあえず三層のウルフマンだったか? そいつと戦ってみたいところまでが目標だな。大川はどのあたりを目標としているんだ? 」
「わ、私はついてくだけで、精一杯なので……でも、今のところは、慣れなきゃいけないんだよね。だからゴブリンでも、盾持ちや剣持ちでも、後れを取らないように……根性をつけるのが目標かな……えへへ」
大川さんは研究をしたくてダンジョン学部に入ったクチかな。ダンジョン探索がメインじゃないことに安心して入ってみたら、ダンジョンの実地作業が入って困っている、といった様子だ。
「大川さん、後ろには攻撃を通させるつもりはないし、攻撃するチャンスも合図も送るから、安心して俺たちについてきてほしい」
「は、はいっ、こ、こちらこそ、足手まといに、ならないように、がんばりましゅっ」
「まだ硬いな。とりあえず始まる前に学部長から一言あるそうだから、それを聞いたら出発かな」
全員でダンジョン入り口の学部長がいるあたりに集まっていく。遅れて近づいていく朝日奈に一言声をかける。
「朝日奈、ありがとうな」
「なに、前回の恩はこれで少しは返せたかなって。君が対人関係スキルはポンコツだっていうことは徐々に広めていかないといけないからね」
「なんだそりゃ。まあいいや、これで知り合いが二人増えた。あとは徐々に仲良くなるか、二人を中心に増えていってくれるかにかかってるな」
「本条君はいつも通りにしてればいいと思うよ。あとは自然にいろいろ広まると思うからさ」
「自然に……よくわからんが、いつも通りに配慮する。あと、朝日奈は前回からランクアップしてるからちょっときつめのモンスターにも当たってもらおうかな」
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#学園
大正
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「それはまた手厳しいな。遅れがないように努力するよ」
並んで学部長の到着を待っていると、渡辺学部長がダンジョン入り口に現れ、全員に訓示ではないが、講義の前の諸注意と講義の目的を伝える。
「あー、今日はぶち抜き講義に参加してくれてありがとう。参加しただけでも偉いが、みんなやる気が伝わってくるそれぞれいろんな装備をしてきてくれていて助かる。場合によっては自前だったり探索者サークルからの借り物だったり中古ショップで安く仕入れてあるものだったり、それからダンジョン学部からの貸し出しだったりするんだろうが、とにかく人数分揃っていてくれて助かる。もし個人の持ち物だった場合、ダンジョン学部としては貸し出し用の装備として保管しておくので、中古ショップへ流すつもりがないならぜひとも寄付を受け付けている。そのあたりはよろしく頼むが、寄付の金額で単位が決まったりはしないのでそこには期待しないでほしい」
軽く笑いが起きる。ほとんどの反応を見ると、探索者サークルか、探索者仲間から借りてきているものがほとんどで、俺や彩花みたいに自前で調達してきているのはごく一部の様子だ。
「本日は2限ぶち抜きの講義ということで、前回の1限だけの講義に比べておよそ一時間半分、長く深く探索して帰ってくることができる。そこで、具体的に指定はしないが、ダンジョンにまつわるものを何かしら手に入れてきてほしい。もちろん魔石でもいいし、モンスターのドロップ品でも、運が良ければスキルスクロールでもいい。なにかしらパーティーで成果を持ち帰ってきてほしい。もちろん、スライムのドロップを一つだけ拾ってあとは適当にダンジョンの中を探索して、詳しく生態調査なんかをやってみるのでもいいし、ひたすら戦い続けて時給でいくらほど稼ぐことができるのか、というのをレポートにまとめて提出してくれるでもいい。君らの感性でどのような結果が返ってくるのかに対して期待をするものとする。では、さっそく向かってくれ。地図は全員……持ってなかったらギルドの換金所で500円で販売しているからそこから買っていくように。くれぐれも迷子にならないようにしてくれ」
それだけ言い終わると、拡声器をほかの教員に渡して、自分は準備運動を始めた。もしかして、学部長も潜るのか……?
「と、とりあえず行きませんか」
大川さんがビビり散らしながらもとりあえずダンジョンの奥へ行きましょうと促してくる。
「そうだな、今日のところはウルフマンに出会えるところまで行けたら充分かな。無理に戦えとは言わないので、日帰り……というか授業帰りで通える範囲に出てくるモンスターでは一番出会う回数が多いだろうし、そこに慣れておければその後も案外何とかなるもんだと思う。まずは道中のゴブリンやスライムを倒しながら、前回の復習講義から始めようか」
烏丸を腰にさしたまま歩き出す。この辺のモンスターならわざわざ腰のものを使うまでもない。【威圧】を使えば圧壊しそうなぐらいのスライムと、【威圧】を使ってる間は怖くて前に出てこれないゴブリンが相手になるだけだが、今回はそれでは何の学習にもならないので、緊急時以外【威圧】は基本使わないことにしておこう。
「そういえば本条君、武器替えたんだね」
目ざとい朝日奈が前回からの違いを指摘する。
「ああ、前はモンスタードロップを……ああ、あの武器をダンジョン学部に寄付する、という方法もあったわけか。もう少し早ければ朝日奈にも大きさがそこそこあって取り回しのいい武器を都合してやれたかもしれないな」
「えー、僕はこっちのほうがいいかな。射程があるってことは相手を近寄らせないってことだよ。リーチの長さはそれだけで立派な武器だと思うけどなあ」
なるほど、槍か薙刀か、青龍偃月刀かってところか。実際にはあの時代に青龍偃月刀はまだ存在してなかったらしいが、朝日奈の武器の好みはつかんだ。四層でリザードマンが槍でもくれたら朝日奈専用に渡してみて、使うかどうかを確認してもらうのも悪くないかもしれないな。
さて、さっそくスライム退治に向かうか。特に清水君と大川さんはどこまでの腕があるかはわからないんだ、初パーティーにはそれなりの実力確認が必要だ。
コメント
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おつかれさま〜!!第273話読了したよ📖✨ 今回は新しいメンバー・清水くんと大川さんが加わって、パーティーが5人体制になったんだね!大川さんが緊張して噛んじゃうとことか、「足手まといにならないように頑張りましゅっ」ってところがめっちゃ可愛くて、思わず「大丈夫だよ〜!」って応援したくなった🥺💕 朝日奈が前回の恩返しとか言ってメンバー連れてきてくれたの、めっちゃ良い関係性だな〜って思ったよ!学部長のゆる〜い訓示も笑えた😆 主人公の「いつも通り」で広がる人間関係、これからどうなるか楽しみすぎる!次回も待ってるね🌟