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###番犬くんと優等生###
<第一章> 運命の目撃者
“出会い”
放課後の喧騒が遠のき、人気のない校舎裏には、乾いたアスファルトと、生い茂る雑草の匂いが満ちていた。そこに、決して馴染むことのない不協和音が響き渡る。
「おい、テメェら、舐めた真似してんじゃねぇぞ」
低い声が、苛立ちを隠さずに唸る。声の主は、この学校で知らない者はいない不良”春夜”だった。制服は乱れ、詰襟の下から覗く白いシャツには、すでに血の滲みが広がっている。彼を取り囲む数人の他校生は、みな顔に恐怖と焦りを浮かべ、へたり込む者もいた。春夜の拳が唸りを上げ、鈍い音と共に相手の一人が倒れる。その圧倒的な強さは、まさに覇者と呼ぶにふさわしかった。
春夜は、倒れた相手を一瞥すると、乱れた前髪を無造作にかき上げた。その瞬間、彼の頬を伝う血が、傷口から新たな血を広げる。その痛みに、春夜の唇の端が微かに歪んだ。しかし、それは苦痛の表情ではなかった。むしろ、張り詰めた糸が切れたような、抑えきれない悦びの気配が、彼の瞳の奥に一瞬宿るのを、偶然その場を通りかかったもう一人の生徒”龍崎”は、見逃さなかった。
龍崎は、いつも通り優等生の仮面を被り、参考書を片手に人気のない近道を歩いていた。喧嘩の様子に気づき、足を止めかけたその時、春夜の顔に浮かんだその「一瞬」を見て、彼の思考は凍り付いた。強さと暴力の中に垣間見えた、矛盾した恍惚。それは、他人に決して知られてはならない秘密の匂いを孕んでいた。
春夜はすぐにその表情を消し、冷徹なヤンキーの顔に戻っていた。彼の鋭い視線が龍崎を捉える。
「……何見てんだ、優等生」
獲物を射抜くような春夜の眼差しに、普通の生徒なら竦み上がるところだ。だが、龍崎は動じなかった。春夜が隠したはずの秘密の片鱗を暴いたことで、すでに彼の意識は、春夜という存在の深淵に引き寄せられていたからだ。龍崎は静かに目を伏せると、何事もなかったかのようにその場を立ち去った。しかし、彼の心臓は、見たばかりの衝撃的な光景と、そこから導き出される可能性に、静かな興奮を覚えていた。
翌日、春夜は龍崎の教室に現れた。彼の鋭い眼光は、放課後の空き教室に呼び出すと告げていた。春夜にとって、龍崎は単なる目撃者ではない。彼が最も隠したいはずの「弱さ」を、強烈な形で暴いた、”運命の目撃者”だったのだから。
どうでしたか?こんな感じでヤンキー×優等生の小説を書いていこうと思います。
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