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Prologue7 「 愛されたいのは 」
「っ……」
行ってしまう。中也が、行ってしまう。
「(駄目だ…引き止めないと…わかってるのにっ…)」
もうこれでいいんじゃないかと思う自分が居た。
このまま中也はあの人と人生を共にして、笑い合っていく。
中也がちゃんと、私のものだと言う肩書きを消してくれたら、楽になれると思った。
「…ちゅうやが…、悪いンだもん…。」
目頭が熱くなって、泣く事を予兆する。
嫌だなぁ…、と思い乍ら道端にしゃがみ込み、膝を抱えた腕に顔を埋める 。
幸い、人通りの少ない道だから 邪魔になることはない。
「…ちゅうやの恋人に、なるんじゃなかった…。」
思わず口から溢れた言葉。やってしまった、と口をつぐむも遅い。
嗚呼、私って、中也のことが好きじゃなかったんだ。
すび、と鼻を啜ると、頭上から声がした。
「あれ、こんな所にうずくまるなんて体調でも悪いのかな~」
低い声。男か。多分、40過ぎくらい。
中也じゃない。私は中也に心配されたいのに。中也に迎えにきて欲しいのに。
膝を抱える腕の力をぎゅうっと強める。
「ねぇねぇ君、もしかして失恋?」
さらりと隣に座って髪に触れられる。耳が少し涼しくなったことから、顔を拝もうと
髪を耳にかけたことがわかった。
「…うるさい。」
耳障りな声。中也の心地よく響く低音とは違う。
「お、喋ってくれた。顔も綺麗だし、声も可愛いなぁ。」
横目でちらりと顔を見る。涙で霞んで見えなかったが、にやにやと獲物を見る目で見ている。
…気色悪い。
「ねぇ彼氏さんに捨てられたの?もしかして浮気?」
「……。」
「答えないってことは図星かなぁ?だったら君も浮気しちゃえば?」
そう言って気安く目元にふれ、涙を拭い取ったその手を払った。
「…そうするべきかもね。もう疲れたし。」
ズボンを叩いて立ちあがろうとすると、腕を掴まれて無理矢理座らせられた。
「じゃあ俺とかどう?セックスも上手いし、泣かせないよ?」
…此奴、本気で言ってるの?
「ほら、どうせ、彼氏くんは自信なくなっちゃって浮気したんじゃない?君すっごく綺麗だし。」
中也のこと知らない奴が、何言ってるの?
「釣り合わない、とか思っちゃったんじゃない?俺ならそう思っても捨てないな。」
中也と釣り合わないのは私の方だ。中也みたいに真面目じゃないし潔白じゃない。
「だからさ、お試しでもいいよ、ホテル行かない?」
いけると思っているのか、肩に手を回して抱き寄せてきた。
「…は?」
気色悪い、気色悪い…、
「ここら辺ホテル近いの、知ってるでしょ?」
人の温もりがこんなに気持ち悪いなんて。中也の体温は好きなのに。
うっ、と吐き気を堪えるも、相手は構わず耳元で囁く。
「最低な彼氏くんのことなんて、もう考えなくてもいいよ。」
うるさいなぁっ…。
「うるさいっ!」
我慢ができなくなって、怒鳴ってしまう。
「中也のことわからない癖に喋らないでよ!最低なのは君の方だよ気色悪い!!」
頭に血が上っているのか息が切れてしまって、俯き、肩を震わせる。
「……。」
無言になったから、もう追い払えたのかと思っていた。
しかし逆効果だったようで、相手は笑みを溢していた。
「うるさいのは君の方じゃない?ちょっとくらい良いじゃん。減るものでもないし、気持ち良いだけだよ?ずっとそうやって面倒くさい思考してるから、彼氏にも逃げられるンだろ?」
反論しようと顔を上げ、口を開いた瞬間、唇に何かが触れた。
「ッ_?」
そして、そのまま其の何かは密着して、ぬるっとしたものが唇を濡らした。
わたし、きす、してる…?
密着した何かの正体に気づき、目を見開く。
「や、だっ…」
離れさせようと肩を掴んでも、手首を掬い取られて固定される。
そのまま壁に縫い付けられて、口内を犯された。
相手は興奮できたようで、硬くなったモノを押し付けながら、必死に貪っている。
気持ち良いのかわからない。ただ頭が白くなって、クラクラしてきて、抵抗ができなくなった。
「ぅっ…ん“っ… 」
生理現象だ。
窒息からなる苦しさも、身体が快感と捉えてしまって腰がぴくんと跳ねて声が漏れる。
それを見ると相手は嬉々として腰に腕を回してきた。がっちりホールドされてしまって、今では
暴れることも逃げることもできない。
…もう…いいかな…。
頭が回らなくなっていく中、諦めが浮かんだ。
この男の言う通り、私が面倒臭くて中也は飽きたのかもしれない。呆れて、捨てたのかもしれない。
だったらしがみつくのは間違ってる。中也を不幸にしてしまうから。
中也じゃなくても、私を愛してくれる人はいる。
でも、私が愛されたいのは中也だ。
嗚呼…頭が回らなくなってきた…、どうなんだろう…。
私は、どうするべきなのかなぁ…。
「ほら、気持ちよくなってるじゃん。」
考えるのを放棄して、ただ貪られた数分間
相手は満足そうに私の頬を撫でて再度口に接吻をした。
「いいよね?もう接吻しちゃったんだし、はやくヤりたい。」
さも恋人のように、私の首筋に顔を埋めて抱きつく。
ぼうっと見つめる先に、明るい色が見えた。
瞬きを一回すれば、どんどん距離が近くなっている。
「ッッ…太宰‼︎‼︎」
ちゅう、や……?
瞬きを2回、3回。ひゅっと呼吸を吸えば、はっきりと見えてきた其の姿。
間違いない。中也だ。数百mにある繁華街から、人混みに揉まれながらこっちへ走ってきている。
「…なんで…。」
渇いた声が漏れる。
「?」
それに呼応するように男は私から離れて辺りを見回した。
「どうしたの?はやく行こうよ。」
そう言って中也が走ってくる方向に向かって、此方を振り返りながら足を運んだ。
中也、中也。
遠くから息を白くして走ってくる愛しい人に向かって、足を進む。
「嬉しいなぁ、やっと行く気になってくれたんだ。」
目の前から中也が見えなくなった。視界を遮るように、男が立ったのだ。
少し、躊躇った。
「…やだ。」
「…はぁ?」
矢ッ張り、中也がいい…。
男は顔を顰めて無理矢理私の手を握る。
「やだって言ってンの‼︎離してよ‼︎」
「ッてめ!!」
手を振り上げられ、殴られる、と目を瞑る。
しかしいつまで立っても顔に痛みは感じない。恐る恐る目を開けると、目の前には獅子色の髪が見えた。
「…ちゅ、や…?」
「…太宰すまねェ。」
「は、はぁ?誰だよお前!」
中也は私を庇うようにたち、相手に殺気を放っている。
「(中也、怒ってる…?)」
これはどっちに対してだろうか。期待でこくり、と唾を飲み込む。
「俺の太宰に手出すンじゃねェ。」
「ふざけんな!!ちゃんと彼奴は合意してたぞ!」
中也が確認するように私の目を見る。違う、そう反論しようとして口を開くが中也によって阻止された。
「…言わなくていい。」
「…う、うん…。」
多分後で聞く、と言うことなんだろう。中也は男を捉え直して目を細めた。
「取り敢えず手前は逃げろ。」
「は、はぁ?何言ってンだよ手前!!」
中也に唾を飛ばすような勢いで喋る男。中也の綺麗な顔についたらどうするんだ、と場違いにも顔を顰めた。
「あーあー、五月蝿ェな。」
中也はため息をついて手をひらひら回し、相手の目を見つめ直す。
「こちとら手前の安全の考慮して、だな。」
「それはどっちだろうなぁ?俺には裏に友達が沢山いるんだぜ?」
男は何故か私をみながらそう言った。だから来いって言うこと?正直悪い男って肩書きで堕ちるほどちょろくないし、中也の方が一枚…いや何億枚も上手だよ。
「性懲りもなく軟派かァ?まぁいいわ。手前の裏の友達とやらに会ってみてェなァ?」
中也が外套のポケットから何か用紙を取り出して相手に掲げてみせる。
「この中に、そのお友達サンとやらはいるかァ?」
「は、はぁ?いる訳…。」
そう言いながら用紙を覗き込んだ男は、一瞬にして驚愕の表情を浮かべ、後ろに一歩下がる。
「な、なんでいンだよ…!?」
「あ~、矢ッ張りここら辺か…。」
中也が男に見せた紙をヒラヒラと揺らしながら首の後ろに手を当てる。
「まァいいわ。早く逃げろよ、此奴らが何してるか、手前ならわかンだろ?」
「っ…くそっ、」
男はキッと中也を睨みつけて足に力を込めた。
てっきり逃げるのかと思ったが、何やらブツブツ唱えている。
「そうだなァ…せめて此奴だけでもッ!!」
男はそういうと中也に向かって突進した。
「ッ!?」
訳ではなかった。
「太宰ッ!!!」
「……ぇ?」
狂気的な表情で私に向かって走ってくる男。
その瞳は今でも尚、獲物を狩るかのようにギラギラとしていた。
ここで出会うのはお久しぶりです~~‼︎久しぶりに見たら完結できそうなアイデアが浮かんだので書きました。編集後記は9月内に書いておりますが、物語自体は夏休み中に書いておりますので浮上しているよ、の生存証明って訳ではないです。
そしてあと一話で完結です~~~~!連載2個くらいにした方が楽しいのでネタ探さなきゃ( )
(ネタ募集したいですけどネタがどれほど良くても私の創作力&想像力が追いつけない場合が御座いますのでできないのが辛み。)
ヘタリア見始めたんですけどイタリア可愛い…、ドイツが国木田サンっぽくてヒャッホイなんだ(((
コメント
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読むの遅くなっちゃった💦💦 今回も神すぎるよ〜ッ‼️💖💖💖 もう大好きなんだけど‼️💕💕💕
好きです!!!!!