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9 - 【最終話】 アイのカタチ

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2025年09月20日

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Prologue8「 アイのカタチ 」


私に向かって突進してくる男と、焦った顔で手を此方へ伸ばす中也。

相手の手には刃物が握られており、それ には、変な汚れが付着している。

その汚れの周辺には錆。きっと血液だろう。


「(じゃあ此奴は人殺し…)」


すっと目を細めて、さらに新しい情報を探る。相手はきっと、私を殺すつもりではないだろう。

きっと人質にして連れ去る。だから私が刃物を避けても意味はない。

だって彼は私の背後に回って刃物を首筋に当てるのが目的なのだから。


「(かと言って投げ飛ばすのも違う…)」


中也ほどではないが、元ポートマフィア幹部兼探偵社員であればそこそこの体術はできる。

相手が筋肉を沢山付着しているゴリラでなければ、地面に叩きつけることぐらいはできる……筈。


「…そうか、中也…」


思わずぽつりと呟く。

その途端に男が急に速くなったように見える。無論、男が走る速度を速めたわけではない。

ただ単純に、私が0.1秒の僅かな間に、爆速で思考を回していただけだ。

そんなことは置いておいて、私は行動をとらなければならない。

私の命に関わる行動。これに少しでも見当違いが生じれば、私はとんでもない面倒事に巻き込まれることになる。最悪の場合、羞恥も晒される可能性すらある。気持ち悪くて言葉にはできないが。


「シネエエエエエエエ!!」


一心不乱に刃物を握って此方へ向かう男。

私はそれをしっかりと瞳に捉えて、足を一歩前へ下ろす。


「ッ?」


それに動揺したのは中也だった。

まぁそれもそのはず、私は動かずにじっとしていれば、中也は重力操作で彼奴を潰すことができたのだ。ただ、相手に気づかれて対処されてしまっては私が危険に晒されるだけのため、ギリギリまで粘る必要があったのだが。


「だざっ」

「大丈夫だよ」


身体に重力を乗せ、吠えながら此方へと向かおうとする中也を制止する。

しぃっ…、と唇に当てた人差し指をゆっくりとおろして、もう目前まで迫った男を再度見直す。

そして先程の観察とは違った意味合いで、目の力を抜いて、すっと細めた。


「…できるものならやってみたまえよ」

「ひゅ_」


相手が声にならない悲鳴をあげ、刃物を地面にカランと落とす。

まぁ、一般人には重すぎたかな。気絶してないだけマシだね。


「ぁ…ぁ…」

「ねぇ君…、先程散々好き勝手してくれたね…。」


私が今、男に向けている視線を、相手側からの視点で描写すると「闇のように低迷し、無を思わせる奥のない瞳」だと思う。本人はそんなことを考える暇はないと思うのだけれどね。


「君は情報不足すぎた。知らなかったのでしょう?

中也はポートマフィアの幹部であることや私が武装探偵社員であること。」

「ぶそう、たんていしゃ…?かんぶ…?」


可哀想に、自分の選択を後悔しても、目の前の現実は変わらないのだよ。


「それと、私が元ポートマフィア歴代最年少幹部であることも。」


相手が怯える元凶を隠すべく、瞼を閉じてニコリと微笑む。


「さぁ、特別に君の拷問は、私がやってあげてもいいのだよ?」

「それはやめてあげろ。」


いつの間にか中也は駆けつけてきており、半分気を失いかけの男を拘束していた。


「…手前、自分を囮にするなンてこと、今だにやってんだな。」

「…いまだに?」


過去にやったことあったっけ、と首を傾げると、中也は呆れたようにため息を吐いた。


「毎回俺と一緒の任務の時、死にたいからって、よく囮になってただろ」


アドリブでな、と付け加えて中也は怪訝な視線を送る。


「嗚呼あれは、中也に怪我して欲しくなかったからだよ。」

「……は、?」

「君は羊の時からもそうだったけど、自己犠牲主義だからね。はじめは君の真似をしてみたら、君が自己犠牲をする理由がわかると思ったのだけど…。」


成果は君を護れるってだけだったよ、と残念そうな表情でいう。


「…俺を、護るために…?なんで、」

「そりゃあ好きだったからだよ。 」


中也が話に夢中にになってしまい、男を拘束する 縄が緩くなってきている。

仕方ないなぁ…、とギチギチに結び直しながらした告白。とてつもなくときめかないことだろう。


「それ以外何があると思ったの?」


追い討ちでニコリと笑いかけると、気まずそうに目を逸らされた。

……まぁ。そんなもんだよね。


「じゃあ、私もう平気だから帰っていいよ。」

「はぁ?何処にだよ。」


惚けちゃって。私に態々言われたいのかなぁ…莫迦狗は。


「勿論、彼女のもとへだよ。」

「…そんなのいねぇ。」

「は?」

「は?」


あれは彼女じゃなかったの? じゃあ…


「…セフレ?」

「違ェわ。」

「…???」


ど、どういうこと…?


「…あれは任務だ。」

「う、嘘だぁ…。」

「嘘じゃねェよ!」


中也の強い語気と、必死な表情で真実が明かされていることがわかってきた。


「…じゃ、じゃあ、なんでホテルの方向行ったの…?」

「…俺ン家で情報聞き出そうと思ってたら、手前がきて…、色々複雑なって方向転換したンだよ。」

「は、はぁ…?幾ら任務でも私と君の家に女の子呼ぶ気だったの?さいてー」

「あ“⁉︎手前だって恋人が他の女連れてたら少しくらい嫉妬しろよ‼︎それに此奴にだってベタベタくっつかれてたじゃねェか‼︎ 」


反論するように拘束した男(此奴)そっちのけで突っかかってくる中也。


「ち、違うもん‼︎嫉妬してたし‼︎そのせいで此奴に絡まれてたんでしょ⁉︎そ、それに、中也が助けに来てくれて嬉しかったけど、でもてっきり…。」

「……てっきりなンだよ?」

「………てっきり、長年のよしみでの情けとかで、助けにきてくれたのかと思った…。中也、優しいから…。」


気まずくなって思わず顔を逸らす。


「…莫ァ迦。恋人の手前をほったらかす訳ねェだろ?」


中也に優しい声色に乗せられて、恐る恐る顔を見ると、暖かく微笑んでいる中也がいた。その微笑みは、愛しい人に向けるようなもので、思わず胸が高鳴った。


「で、でも、私は…事実上、浮気しちゃってたじゃん。」

「もうこの際、痴話喧嘩しちまおうってか?…まぁそりゃ手前は浮気したけどよ、俺も悪いところが少なからずあったろ。」

「…まぁ、うん。」

「否定しねェのな…。」

「…だって、私、中也が帰ってくるのずっと待ってたのに、中也ってば連絡もせずに勝手に泊まり込んで徹夜したりするんだもん…。」

「うっ…それはすまねェ…。」

「…私が構ってって言っても仕事優先だったし。だから少しでも興味引いてもらうために浮気したけど、それも許しちゃうじゃん。」

「許すッつうか…、そりゃあン時は許しちゃったが、内心手前をぶち犯したかったンだぞ。」

「…許して欲しくなかった…。」

「……そうか。」

「中也に怒って欲しかったんだもん。叱ってくれたら、私のこと見てるんだなぁって実感できたのに。」

「…そっか。」


中也はフッと笑って、此方に手を伸ばしてきた。


「な、なにっ?今更怒っても私は」


ぎゅうっと目を瞑りながら反抗しようとするも、唇に柔らかいものがあたり、黙らされた。


「ちょ、ちゅ…や…」

「だざぃ…」


随分と長い間、ただ触れるだけのキスを続けた。

中也の顔が離れたとき、なんだか気まずくなってふいっと顔を逸らした。

そして気づけば、いつの間にか壁に追い込まれており、逃げ場がなくなっている。

加えて、久しぶりの中也とのキスで、不覚にも腰が抜けてしまい、へたりと座り込む。


「寂しい思いさせてごめんな…?」


今にもがっついてきそうな体勢で、私の目を見ながら嘆く彼に、良心が揺れた。


「手前とやっと恋人になれて、怖かったンだ…。」

「…ぇ?」


意外な告白だった。


「手前に嫌われたくなかった…。嫌な思いさせたくなかったンだ… 」


そこまで言って項垂れると、ぎゅっと抱きしめてきた。


「ちゅ…や…。」

「正直俺、手前が浮気してても良いと思ったンだ。手前が俺の傍にいるだけで嬉しかったし、俺の恋人だって肩書きがあれば“浮気”で済む…。」

「……」


何も言えなかった。いつも頼りある背中が、妙に縮こまっていて、弱くて。

縋るように袖を掴んで呻く中也が、とても愛おしくて、抱きしめ返すことしかできなかった。


「重いって思われるかもしれねェけど、俺には手前しかいねェんだ…。

手前がポートマフィアを抜けたときみたいに、4年も会えなくなったら…。

もうきっと、耐えられねェ…。依存しちまったンだ…。」

「…中也も、寂しかったの?」


ゆっくりと宥めるように頭を撫でて問う。中也は、目を赤くして私の顔をしっかりと捉えた。


「どうだろうな…、でも多分、俺らは不器用なンだろうな?」


鼻をずび、と啜って、顔を逸らしながら言う彼は、本当に強がりだ。


「歪み合いはできるのに、素直になれないなンて、不器用以外の何があるのさ。」

「ふっ…それもそうだなァ?」


中也はもうすっかり元気になって、ケラケラと笑いながら背中をバシバシと叩いてきた。


「莫迦力いた~い」

「うっせぇ、もっと食べろ」


お互いそう言い合って、ふふッと笑うと、頭上からもう一つの声が聞こえてきた。


「そうだねぇ、太宰くんはもう少し食べたほうが良いし、中也くんは力加減を習わないとね。」

「「え」」


私と中也は声を揃えて、目線を声の主に滑らせた。


「うっわ森さん…最悪」

「ぼ、首領⁉︎」


にこりと微笑で応答して手を振った森さんを見て、中也は慌てて立ち上がる。


「い、いつからここに…?」

「君らが見事に制圧するところからだよ?いやぁ双黒もまだまだ現役だねぇ。」

「け、結構初めっからじゃないですか…。」

「ちょっと中也‼︎なんで私をほっといて森さんと話すの?寂しい‼︎」


中也は敬愛なる森サンの前であるからなのか、少し迷ったように目を泳がせる。

やっぱりやだ!!!社畜!!!!!


「すまねェな、太宰…。」


ふん、とそっぽを向こうと頬を膨らませたとき、中也が手を差し伸べてきた。

……まぁ、許してあげるけど……。

心の中でツンツンを吐きながら手を取って立つ。


「ところで君たち、いつから交際していたんだい?」

「森さんには関係な~い。と言うか、娘に彼氏ができた時のおぢさんみたいな反応やめてくれない?鳥肌立つのだけど。」

「太宰く~ん、私、一応が14の時から見てるのだよ~~?」

「えっと…。」

「ちょっと中也、言ったら許さないからね‼︎」

「…首領申し訳御座いませんが、この場でそれは応えかねます。」

「う~ん、それもそうだねぇ…。まぁところでもう一つ質問。 」

「……なに?」

「君たちは何故私がここにいるのか問わないのかい?」


森さんの質問に、中也と顔を見合わせる。


「…そりゃあ、この男がポートマフィアがおってた事件と関係あるんでしょ?

あらかた中也からは、此奴と出会った時点で報告がきていて、ちょうどエリス嬢のドレスを買いに近場へ寄っていた森さんが、面白い匂いがするなぁ~、と駆けつけた。多分中也のことだから一般人の被害が減るように出来るだけ正確に状況を伝えたんだろうね。私がいる、とも。」

「…その通りだねぇ。」

「というか本当は私たちが付き合ってること知ってたんじゃないの?」


ほんっとうに気持ち悪い…、と嫌悪の目を向ける。


「……確かに知ってたけど…!!」

「知ってたンですか!?」

「やっぱり…このロリコン…。」

「幼女趣味なだけであってロリコンってわけでは…いや同じ意味か」

「ねぇ惚けるのやめてよ気持ち悪い…、ロリコンは後始末お願いね。」

「そんなぁ…。」


とほほ…、とがっくり肩を落とす森さん。態とらしくて反吐が出る。もう一度「きもい」というと中也が苦笑しながら止めに入った。


「すみません、首領。態々出向いて下さったのに…。」

「いやぁ、いいよ。首を突っ込んだ私が悪いからね。」


太宰くんを頼んだよ、と色々な意味を含めていう森さんに、中也は、はい、とだけ返す。

不純にも、その光景が結婚とかの取り付けみたいで、仄かに心臓が高鳴った。

家までちゃんと送ってね、とかの意味だってことは知ってるけど‼︎‼︎‼︎


「…は、はやく行くよ…中也//」

「おう。じゃあお先に失礼します。」

「うん、じゃあねぇ~。」


森さんに別れを告げたあと、中也の腕を引きながら歩く。

歩きにくいと文句を言われたが、越されてしまっては情けなく火照った顔が見えてしまう為、無視して先へ引っ張って行った。


「なぁ…太宰」

「…ん?」

「…彼奴になんかされたか?」

「えっ?」


後ろから聞こえる、子供のように拗ねた声がとても可愛らしい。それと同時に、繋いでいる手をぎゅっと握り返されたので、色々な意味でドキッとする。


「…いや、何もされてないならいいンだ…。」

「まぁ…何もされてない、よ。」


口付けはされたけど…。そう思い返して唇に触れる。

決してあの時の不愉快極まりない行為を思い出している訳じゃない。

ただ、はじめは否定したものの、もし「された」と言い直せば

中也は上書きしてくれるのだろうか?

そんな淡い考えに馳せていたのだ。


「…太宰?」

「…された。」

「…え?」


振り返って、微かに顔を顰めている中也を見つめてからもう一度。


「されたよ。接吻。」


中也は悔しそうに唇を噛んだあと、頬を膨らませて埋めいた。


「…俺の太宰に手ェ出しやがってたのか…」


俺の太宰、という言葉にきゅんとして、頭の中で何度もリピートする。


「…どこまでかによる…、そうだ、どこまでやれれた⁉︎」

「え、え~と、そりゃもう…?」


え、今すぐ上書きしてくれないの⁉︎


「ぶち殺す…今すぐ戻って捻り潰す…」


中也は、くるりと向きを帰ると、もときた道に歩を進め出した。


「ちょ、ちょ、中也⁉︎」

「ンだよ、俺は彼奴を許さねェって決めたンだ…」


ゴゴゴ…、と今にも地盤を割ってしまいそうな殺気を放つ中也に、少し焦る。

ここで暴れないでくれ給えよ⁉︎


「…う、上書きすれば良いじゃん…」

「……ほぇ…?」


ゆっくりと振り向いた中也は瞳を潤ませている。


「大の大人が、それくらいで泣かないでよ…。」


ばか…、と付け加えて、気まずさに耐えきれず外方を向いてしまう。

それでも気になって、チラリと横目で見ると、決心が付かずにいるのかあたふたしている。

そんな彼も可愛いな、と親莫迦ならぬ恋人莫迦ながらに思っては、ゆっくりと近寄る。

そして、唇をふにっ、と柔らかいものに当てた。


「ッッッ//⁉︎」

「もう、本当情けないよね‼︎」


ふん、と鼻を鳴らして紅く熱ってしまった顔を隠さず見せる。

ほら、君のこと、ちゃんと意識してるんだよ。


「太宰…好きだ…」

「…うん。私も。」

「…嫌いとか思ったことねェ。」

「…知ってる。」

「…もう俺以外のやつと関わらないで欲しい…。」

「…ふふっ、ヤンデレかい?」

「ち、ちがっ⁉︎関わらないでッつうのはその、浮気?みてェなことであって‼︎」

「わかっているよ、もちろん。」


慌てて否定する彼が愛おしくて、頬が緩む。彼の瞳に映っている私は、とても幸せそうに笑っている。


「もちろん。もう君からは離れないから。」


ふわりとはにかむ彼は、やっぱり愛おしく見える。無邪気なところ、真面目なところ、人一倍優しくてお人好しなところ。全てが愛らしい。中也が私を「愛してる」ってきちんと言うまでは、私も其れは言ってやらない。

でも、それ以外のことにはもう、意地は張らない。


「んふふ、中也、私ご飯作ったのだよ~?」

「まじかよ?キッチンは無事か?」

「酷いなぁ、中也のワインをふんだんに使った…なんだっけ、料理名忘れた。」

「手前の頭脳で忘れたはないだろ」

「まぁまぁ早く帰って温め直さないと、美味しくなくなっちゃうよ‼︎」



-これは、とある素直に慣れない恋人が、仲良くなるまでの 過程を綴った、とある日記である。-




終わり‼︎最終回でした‼︎雑かな…?不安だけど最終回です( )

リクエストやアイデアがあればその後、とか描くかもです。


ついでに新連載の告知‼︎

新連載は教祖の🤕と神(?)の🎩の物語‼︎多分太中です👀

恋愛というかシリアスなので、公開するまでに少し時間かかるかも。

以上、告知でした。


改めて、ここまで読んで下さり、誠に有難う御座いました🙇


きっと明日には仲良く

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コメント

2

ユーザー

神作品をありがとうございます!!! その後…2人で太宰さんが作った料理食べてるところとか…見てみたいです…ふふふ()

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