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めんたいこ
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#BL
潮田ゆうた
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「実は、彼女が出来ました。」
普段は俺に対して敬語なんて絶対使わないのに、変だな、と思った。
ふーんと適当に返事して、後から品川の放った言葉の意味が脳に届いた。
は、彼女??
品川は冗談が好きなやつだったし、たまに碌でもない冗談も言うから、これも冗談なんじゃないかと疑った。
その可能性を思い付いた後すぐ、冗談だったらこんなに居心地が悪そうに言わないだろ、とも思って、ことの重大さを改めて実感した。
変なところから汗が出てきた。気持ちが悪い。
俺と品川は大学で知り合って、「年齢=彼女いない歴同盟」を組んでいた。
彼女の有無関係無しに品川とは相性がよく、お互いに一番仲の良い友人の枠だと思っている(…はずだ)。
もし一生恋人が出来なかったとしても、品川が居ればそれでいいと思える程だった。
だったのだが。
なんなんだよ突然。「彼女が出来た」って。ありえねえだろ。ふざけんなよ、品川!
いやまあ、いつかはこうなるんだろうなと思ってはいたけど。
だって品川、いいヤツだし。コミュ力高ぇし、顔も整ってる方だし、明るいし。
ちょっと腹立つけど、基本いいヤツだもんな。
それでも、俺は素直に応援する気になれなかった。
めちゃ仲良しな友達に初彼女が出来たんだから応援してやれよ、と言う輩もいると思う。が、こちらにも言い分はある。
前々から「好きな人が出来た」とか「最近仲がいい女子がいる」って言われてたら、俺だって心の準備が出来たし、楽しくもあったと思う。
突然だぞ。馬鹿な同盟組んでて信頼してた友達から、突然「彼女が出来た」だぞ。お前らも応援できないだろ。
後、なんで品川だけっていう気持ちもある。
バ先も大学も同じで、出会いの場はほとんど同じなのに、不公平ではないだろうか。
まあ、俺と品川を並べて、「どちらを彼氏にしたいですか?」と町で聞き回ったら10人中9人が品川を選ぶんだろうなと思いはするけど。
「…どんな人?」
恐る恐る尋ねてみた。
笑顔を意識したが、多分とんでもない顔だったんだろうな、というのは品川の俺の顔を見つめる表情を見たら大体わかった。
「ちょー可愛いの。まじで。本当に天使。」
語彙力がまるでなくなっている。別に元から知性溢れたことを言うようなヤツじゃなかったけど。これは流石に、である。
やっぱ人って恋すると変わるんだな…。怖ぇ。
「どこで知り合ったんだ?どっちから告ったんだ?名前は?」
知らない方がいいとわかっているのに、墓穴を堀った。
俺が尋ねると品川は、まってましたと言わんばかりの表情を見せた。
「お前がシフト代わって欲しいっつって変わった日、あるだろ?」
ある。先週の木曜は風邪気味で、品川にだけシフトを代わってもらえないか頼んだ。
その日なのかよ。鼻水垂らしながらでもレジ打ちすればよかった。
「その日の帰り道、十一時過ぎだったかな。に、電柱の下に白いワンピース着た女の人がいたんだよ。」
品川は楽しそうに話す。好きなゲームの話してるときよりも楽しそうだった。
浮かれんな、と思いながら品川を睨んだ。
それにしても、十一時過ぎに電柱の下にいる白いワンピースの女か。あんまり運命の出会いだとかは思えない状況だな。
「こんな時間に何してんだろ、にしてもすげー美人だな、とか思いながらチラチラそっち見てたら、目があってさ。」
通報されてしまえばよかったのに、と心の中で毒を吐いた。
美人は自分に対して自身があるから、ジロジロ見てきただけで犯罪者だと思うんじゃねえの。よく通報されなかったな。と思ったが、これは偏見か。
「そんで、向こうから…声をかけてきてよ」
まさかの向こうからなのかよ。
まあ、品川は一人でいる美人に声をかけられる程肝がある男じゃないけど。
「『わたし、綺麗?』…つって。」
「口裂け女じゃねえか」
間髪いれずに突っ込んだ。
これこそ冗談だと思ったのに。
なんか知らねえけど、品川は頬を赤らめて照れてた。
その言葉を口説きかなんかだとでも思っている様子だった。
そんな品川を見て、俺も、変な口説き文句だなーとしか思えなくなった。
「んで、俺が言ったの。『今まで見てきたどの女性よりもお綺麗です。』って」
すごいな。俺だったら真夜中に「わたし綺麗?」と問われてそんな百点満点の回答を出来るだろうか、と想像した。無理だろう。百パーセント。
「そしたら、彼女、めっちゃ照れてさ。見知らぬ男に「綺麗?」なんて聞く子だから、やり手なのかなとか思ってたから、なんかこう、心臓がぐーってなって。」
知らない感覚だ。心臓がぐーっと押されたみたいなって…病気なのでは?
「それで、ノリじゃないけどなんか、こうなんか連絡先交換して、今に至る。」
品川は満足そうに言いきった。
「ふーん、そんな出会いでから交際に発展することあんだな。」
途中、怖い話になるかと思ったのは、品川には言わないでおこう。
「えっと、告ったのは俺で、『好きです。一生君のとなりにいさせてください。』って言って…。」
品川は照れているのか、最後の方がデクレッシェンドになっていた。
重い。告白に「一生」は重い。
が、品川のそういうところが彼女さんにも刺さったんだろうな、とも思った。
「なるほどな。で、彼女さんの名前は?」
何がなるほどなのか自分でもわからないが、適当にわかってる風の相槌を打った。
彼女について話すのがよほど楽しいのだろう。品川は嬉しそうに口を開いた。
「繧翫°蟄?ちゃん!」
「え?」
聞き取れなくて、”え”と声が漏れ出た。品川は、もお、耳の穴かっぽじってちゃんと聞いとけよ、と言ってもう一度名前を言った。
「繧翫°蟄?。繧翫°蟄?ちゃんだから。覚えとけよ。」
前言撤回。聞き取れていないのではなかった。実際にそう言っていたのだった。
外国の方なのかな、と思ったがその可能性はすぐに否定された。
彼女さんの名前を口にしようとして、「繧翫°蟄?」が人間からは発声できる音じゃないことに気かづいた。
「…変なこと聞くけど、彼女さんって、その…人間だよね?」
「違うと思う。」
肯定して欲しくて言った言葉に、見事否定で返された。
「俺は、彼女を選ぶのに人間か否かはあまり気にしないタイプだから。一番大事なのって、価値観とか、相性とかだろ?」
「えぇ、でも…」
「今は多様性の時代だぜ。男女じゃなくても認められる時代なんだから、人間か人間じゃないかなんていうのも、あんまり気にしなくていいと思うんだよ。」
品川の言葉はめちゃくちゃだったが、無駄に説得力があって、確かに、と少し思ってしまった。
どうやら、俺の友達の彼女は、人間じゃないらしい。
コメント
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うわ、これ…めっちゃ好きなやつだ。 最初は「友達に彼女ができた」あるあるの嫉妬とモヤモヤかと思いきや、終盤でガラッと色が変わってゾクッとした。電柱の下で白ワンピ、真夜中に「わたし綺麗?」って…確かに口裂け女案件だよね(笑)。でも品川があまりにも幸せそうで、人間じゃなくても「多様性の時代だぜ」とか言い出しちゃうのが、逆に不気味で面白い。これは続きが気になる…!