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驚いた事に、スキルや魔法を教えている教室や道場的ものは、なかなか見つからない。
個人の家とかで教えているんだろうか…?もしかして、学校で授業に組み込まれてるとか。
まさかギルドで教えあうのだけとは思えない。なんせ、冒険者だけは豊富な街だしな…。
ゼロとそんな事を話しながら歩いていると、道の先に異常な人だかりを発見した。
近付くにつれ、きゃあきゃあと、シルキー達をいっせいに相手にした時のような、可愛いくも手に負えない感じの高い声が、でかくなってくる。
人だかりはほぼ女性で構成されていた。その中心に頭ひとつふたつ高い、2人の人影。
「カエン!?」
「アライン様!?」
俺とゼロが思わず声をあげたのは、ほとんど同時だったと思う。
しかし王子様、自分で言うだけあって、マジで女に人気あるんだな。
ちょっとヒクくらいの人だかりだぞ?
「おー、ゼロ、ハク。どうしたんだぁ?こんなとこに来るとは珍しいなぁ?」
カエンが気付いて、声をかけてくれる。
その声に、女の子達がいっせいに振り返る。
ぐっ…めっちゃ視線を感じる!
怯んだら負けだ。
女の子達ににっこりと微笑むと、きゃあっという悲鳴と共に、女の子達が両脇に除けていき、カエン達までの道ができる。
こうなると挨拶だけでは済まない。
まぁ、うっかり叫んだの俺達だしな。
俺達は観念して、カエン達に近付いた。
当然のごとく、女の子達がきゃあきゃあとざわめく。
「誰?見た事ないわね」
「誰でもいい!イケメン増えた♪」
「銀髪の人、かっこいい!」
久しぶりにかっこいい、って言われたなぁ。ありがとうお嬢さん。自分がイケメンだって忘れそうだった。
もっと言って欲しいもんだ。
「後ろの人、服の裾引っ張ってるぅ」
え?あ、ほんとだ。
ゼロは俺の服の裾を掴んで、泣きそうな顔でついて来ていた。可哀想なくらい、おどおどしている。
ヘタレにはこのシチュエーションは厳しかったか。女の子に囲まれる経験は少なそうだもんな。
ゼロは落ち着くまでにしばらくかかりそうだ。仕方なく、話を進める事にした。とりあえず、営業スマイルで王子様にご挨拶だ。
「あー…アライン様、昨日はおいでいただきありがとうございました。不備な点を調整し、新たなコースもご用意しておりますので、ぜひまたおいでください」
「こっちこそ、世話になったな。それにしてもゼロは…今日はなんでそんなに挙動不審なんだ?」
「あまりにたくさん、可愛らしいお嬢さん達がいらっしゃるので、緊張しているようです。我が主は恥ずかしがり屋なので」
王子様は、ははっ、と笑ってこう言った。
「ユリウスみたいなヤツだな!主導権握っといて、都合のいい時だけ我が主とか言ってそう!胡散臭い!」
「ひどっ!」
はっ…つい地がでてしまった。
「あははっ!まだユリウスほどじゃないか。ま、そう堅苦しく話さなくていいから。ゼロもな」
王子様は楽しそうだ。
カエンは俺と王子様のやり取りを苦笑しながら見ている。
思い出したように、もう一度聞き直された。
「で?結局何しに来てるんだぁ?お前達が街に出てんの、珍しいだろ?」
「ああ、昨日クリアのご褒美に、兵士達にスキルを教えてたんだけど、継続して習いたいから、スキル教室開いてくれないか?って頼まれて…」
へぇ、やる気あるじゃねぇか、とカエンは驚いた顔だ。
「冒険者が多い街だから、そんなの他にも結構あるんじゃねぇかと思って見に来たんだけどな…意外とねぇのな」
ああ…と、二人は納得顔だ。
「魔法学校と剣・槍の指南所は王都にデカイのがあるけどな。あとは個人やギルドが主体だろうな」
「あ…あの、僕達が…スキル教室造っても…問題はないですか?」
ゼロが復活してきたらしく、会話に入ってきた。王子様は「もちろん!」とにっこり笑う。カエンも真面目な顔で「そいつは助かるなぁ」と言ってくれた。
この二人のお墨付きがあれば、怖いものはない。
俺達は礼を言うと、その場を後にした。…ゼロの顔の赤さ、尋常じゃないしな。
ルリ達との待ち合わせの時間までは、あともうちょっとだけ時間がある。
俺達はカフェを眺め、武器屋と防具屋をハシゴし…、動かなくなってきた足を引きずりながら、待ち合わせ場所まで戻ってきた。
当然ルリもマーリンもいない。
買い物中の女が時間を忘れる事くらい、折り込み済みだ。
ゼロと、街を歩く人たちを眺めながら、造る事になったスキル教室について話しあう。
「問題はさ、講師が沢山要るって事だよね」
「あの6人じゃダメなのか?」
「う~ん…ご褒美の家庭教師サービスはそのまま続けるつもりだから…。どっちもやるとしても、時間、足りなくない?」
「もしかして、ダンジョンクリアしてないヤツらにも、教えるつもりか?」
ゼロは嬉しそうに笑った。
「うん!よく考えたら、初心者に必要なのって、ほんとはこういうスキル教室みたいなものだよね。あの時はダンジョンを使って…って思ってたから、気付かなかったけど…」
よっぽど、へっぽこ冒険者達をなんとかしてやりたいらしい。
しかし、講師か…。
「う~ん…最初からいっぱい用意するより、ちょっとやってみて、要望があれば増やしていくとかじゃダメか?」
「え?なんで?ハクだったらその方が嬉しい?」
「選択肢多過ぎると迷うかも知れないけど…どっちかっつーと、あんま最初から色々やり過ぎると、自分らが訳わかんなくなりそうだから」
たった6日で仲間も増え過ぎだ。
物覚えは別に悪くないと思うが、そろそろ顔と名前の一致がヤバい。
「お・待・た・せ!」
「うわ!?」
突然ルリが目の前に現れた。
…めっちゃビックリしたし!
「お待たせしちゃって、すみませんでしたぁ」
遅れてマーリンが、小走りで近寄ってくる。白いチュチュが跳ねて…うん、いい眺めだ!
「あの後ね、アライン王子に会ったの!今日も可愛かったわ♪」
「なんだか分からないんですけどぉ、これ、買って頂きましたぁ」
「昨日のお礼だって!うふふ、得しちゃった!」
二人の髪には、可愛らしい髪飾り。
何、その差!
俺達何も貰ってねぇし。
マーリンなんか、昨日会ってもないだろ。理不尽だ。
…いや、待てよ?そういやカエンが、女子供には優しい、完璧王子だって言ってたか…。
ちっ…しょうがないか、こればっかりは。
はしゃぐ女性陣を連れて、ダンジョンに戻る。
ダンジョンは………凄い事になっていた。
主に、錬金部屋が。